吹っ切れた件について(仮)
ドカドカドカドカドカ!!!!!!
かおるに、いくつもの砲弾が飛んでくる。
かおるは、自分の視界に移るその砲弾を見て思う。
正直、この攻撃をそのまま受けても自分にはおそらく傷一つつかない。黒炎の力がある限りだ。それでは、かおるの成長には繋がらない。
だが、黒炎を使わずして、いや、漆黒の力を使わずして、この攻撃を防ぐことは不可能だ。
というか、後々考えると、今までの自分の行動は無意味であったように、かおるは思う。
確かに、今までよりも黒炎を工夫して戦ってはいたが、ただそれだけで、根本は漆黒の力を中心としたものだ。
つまり、元々素人である彼が、小ざかしい努力を今頃したとしてもほとんど意味がない。結局は、漆黒の力があるから対抗できて、それがなければ対抗ができない。
ということは・・・・。
(漆黒の力を全面的に押し出したほうがいいんじゃないか?)
そうじゃないと、結局相手を倒せない。
今の状態は、つまりかおるが手を抜いているというだけだ。
その先に、成長とか退行とかがあるとは思えない。
本格的な問題としては、身体能力が異能力者に比べると、劣るというところだ。
しかし、それに関しても、ある程度改善できる目星が、かおるにはあった。
「もう、いいかあ」
かおるは、右腕に大きな黒炎を纏う。そして、それを砲弾に向かって、腕を払いながら放つ。
横長に放たれた黒炎が、砲弾を包み込み、一瞬にしてその存在を消す。
「ベルゴ、もういいや。本気で行くぞ」
《最初から、そうしていればいいものを、本当に面倒なことをしたものだ》
「だよなあ、なんか、そういうモードだったんだよ。戦闘モード的な? でも、よくよく考えれば、俺の力は例外にある存在だから、そんなこと気にしなくてよかったんだよな。アウモデウスに切れてから、変な感じになっちまった」
かおるは、一つため息を着く。
「だから、まあ、ベルゴ、お前もサポート頼むわ」
《はあ、わかった・・・》
かおるは、背伸びをしながら、砲弾が飛んできた方向に向かって歩き出す。
近づくたびに、飛んでくる砲弾の数が増えるが、そのすべてが、かおるの周りから発言する黒炎によって、消される。
ここは夜の森だ。だが、かおるにはクリアに見えている。もう手加減はしない。目にはもちろん黒雷を付加している。
その目から見える光景は、砲弾が、今かおるが進んでいる方向から突如として現れている。つまり、ワープしているのだ。
つまり、本来の砲台は別の場所にあるということだ。
「面倒だなあ」
そういった瞬間、ベルゴの怠惰が移ったのかなとかおるは思った。
ここが、別に森などではなく、平地などなら、黒炎を遠隔に広げれば早い話だが、森ではそうはいかない。かおるにも一応、環境問題を考える倫理観はもちろんある。
とりあえず、かおるは砲弾の方向へと進む。
見たところ、砲弾がワープしている場所は常に、ワープ場所が開いている様子だ。いちいちそんなものを使うわけだから、あそこの付近にも何か罠か、それに準ずるものがあるのだろう。
(常にワープをしているってことは・・・)
かおるは、黒炎を弱めたものを、纏う。そして、それをワープホールに向かって放つ。すると、それは、ワープホールの中に消えた。
ドカン
小さな音が、右斜め後ろから聞こえる。
かおるは、その方向へと目をやる。そして、目を集中する。
すると、今までよりもより遠いところまで見えるようになる。
「あそこか・・・」
- - - - -
「何が起きた!!」
敏夫が叫ぶ。
辺りは爆風や爆炎に包まれ、先ほどまで猛威を振るっていた砲台が木っ端微塵とかしていた。
「おそらく、漆黒の者の仕業であります!」
忍の一人が言う。
「あの力をワープから通したというのか、力を弱めて・・・、くそ! 被害は?!」
「砲台はもう機能しないかと!」
「くっ、時間は?!」
「後、数分であります!」
「あいつとの距離は?!」
「500です! 今、漆黒の者は、歩いてこちらに向かってきています」
「よし・・・、典夫君は無事か?!」
敏夫のその叫び声が、典夫の耳に届く。
「はい、なんとか!」
典夫は、自身の上に乗っている瓦礫をなんとか退けて、立ち上がる。
「よかった。後、もう少しだ。君も出撃してくれるか?」
(マジか・・・、篠原家には、何か秘策があるらしいが・・・)
典夫は、とりあえず時間稼ぎができれば勝てるとしか聞いていない。それを聞いて、典夫は、相手の力が切れるまで、攻撃を加え続けるのかと思ったが、どうやら、何かのタイムリミットがあるらしい。
(仕方がない。行くしかないか・・・)
「わかりました! おい、お前達もついて来い!」
典夫は、砲台部隊の、まだ意識があるものを連れて、出撃をする。
典夫たちはすぐに、かおるの近くまで移動した。そして、相手に気が付かれないように隠れる。
(正直、僕の力では、あの男に何かできるとは思えないが、時間稼ぎぐらいなら・・・)
「何、隠れてるんだよ」
そのとき、典夫達に、話しかける人物がいる。
その人物は、目の前の人間だ。
「残念だけど、見えてるぞ」
その人物は、典夫達の場所に黒炎を放ってくる。
典夫はそれをなんとかかわすが、部下は皆やられてしまった。
そして、その人物の前に、典夫は姿を現す。
「驚いたな。まさか、この暗闇で僕達が見えるなんて、忍に転職でしたらいいんじゃないかな」
典夫は、自分が少しテンパっているのを感じる。
見つかるとは思っていなかった。
「何をごちゃごちゃ考えてるのさ」
「いやあ、ね。そういうときもあるだろ?」
「これだから、かおるは・・・」
「な、なんだよ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。