初めて自覚した件について(仮)
「どうだい?」
「丘は崩せたぞ」
良太郎の問いに、かおるが答える。
今、かおるは、壁の向こう側に目を凝らしている。
普段の目なら絶対にその先を見ることはできない。だが、今かおるは目に黒雷の力を溜めることで、電磁気の動きを見ることができる。それで、人間から出ている電磁気を感知して、壁の外側の様子を見ることができている。
これが忍の仕業であると気が付いたのは、かおるだ。
かおるは外の景色が目に飛び込んできた瞬間、その可能性にたどり着いた。なので、かおるはすぐに竹市に結界を張るように指示して、自分は、その目で外の様子を確認した。
すると、忍が目の前にある丘に潜伏しているを発見した。
今、それを破壊したのである。
「忍が数人近づいてきてる。結界があるから大丈夫だろうけど、どうする?」
「とりあえず放って置こう。まずは状況を整理したいね」
良太郎が言う。
3人は、トシコが寝ているベッドの近くに集まる。
「まず。現状でわかることは、なんらかの方法で、ある森か、山に病室ごと転移された。そして、今俺達は襲われている。おそらく、忍関連の人間で、篠原家の人間だと思われる。って感じだね」
良太郎の言葉に2人が頷く。
「だから、今最優先しなければいけないのは彼女の安全だね」
良太郎の視線がトシコに移る。それに伴い、二人の視線も移る。
「とりあえず、ここを、俺達の拠点にして、助けを求めるか、それとも・・・、相手を殲滅するかだね」
「俺が行ってくる」
かおるが背伸びをする。
「忍の連中と戦った経験から、あいつらは俺に本格的に対抗する手段はないと思う。もしかしたら、何か策を練っているかもしれないけど、俺も成長してるからな。まあ、大丈夫だろう」
「傷は大丈夫なのかい?」
「ああ、大丈夫だ。新しい力もあるからな」
かおるは、皆に自分の力の特性について説明をしていた。
かおるは扉に向かう。
「2人はここで、トシコを守ってくれ、もし、俺がやられたら、ここで篭城して救出を待ってくれ」
「わかった。気をつけてね」
「ここの守護は任せて置け」
2人の言葉に後ろ手に手を振りながら、外に出て行く。
かおるが外に出ると、かおるにクナイや手裏剣の嵐が飛んでくる。
だが、そのすべてが、かおるの体に触れる前にすべて焼き尽くされる。もちろん、これはかおるが黒炎のバリアを体に纏っているためである。
「されと・・・、どうしたものか・・・」
かおるが丘の崩れた場所に少し近づくと、クナイと手裏剣の嵐が止む。
「?!」
嵐が止むと、かおるの周りに四人の忍びが集まる。
「あんた達は、トシコを狙っているんだろう?」
「・・・・・・」
かおるの声には誰も答えない。
(今回のやつらは、この前のとは少し違うな)
今回、かおるの周りにいる忍の格好は、ザ・忍者、といった格好をしていた。夜中にあったトシコの父親や、阿久津と名前を呼ばれていた人物の格好は、どちらかといえば忍者のコスプレに近いものだったが、今回は顔も目くらいしか出ていない。
「まあ、いいや。大分と、力の制御ができるようになったから、誰彼構わず焼き尽くすような真似はしないけど、重症くらいは負うかもしれないからな」
かおるが右腕に黒炎を纏う。それを、周囲の忍に、腕を振って小さな火種として飛ばす。その火種を忍がかわすが、一人の忍にはその火種が服の一部に着いた。
「うああああああああああ」
火種が服に触れた瞬間、その忍の全身が焼かれる。そして、その場に倒れた。
(気絶はしたか・・・・。よし、成功だな)
かおるが放った火種は、相手に触れた瞬間に相手を燃やす。その威力は、相手を死に至らしめるまでは行かないものだ。
かおるが今まで相手にしてきた相手は、どちらかといえば強者であり、現在のかおるが本気でやっても、相手が死ぬことはほとんどなく。かおるは、自分の力の強大さを意識しながら戦うことは少なかった。
だが、この前の戦闘から、かおるは、自分が相手を殺してしまうかもしれないことを、初めて明確に意識した。
なので、彼は、できるだけ相手にダメージを与えないで、無力化する方法を模索することにした。その第一弾が、今の黒炎の小さな火種だ。
「これなら、あまり気にしないでいけそうだな」
残りの忍が、煙幕を張ってくる。
かおるは、その煙幕を焼き尽くそうとして、黒炎を周囲に放とうとしたが、やめた。
かおるは目に力を込める。これにより、相手の動きは煙幕の視界不良など関係なく。視ることができる。
どうして、彼がこんなことをしたのかというと、経験を積みたいと思ったからだ。
先ほど、アリスから、もしかしたら狙われているのは、かおるかもしれないといわれて、彼の中の心境の変化があった。
今までは、どちらかといえば、あまり戦いには参加はしたくないというものだった。それは今でも変わらない。
だが、だからといって、自分が強くならないという選択肢を選択することは適切ではないと思った。
アウモデウスは、かおるではまだまだと言った。
ウリエルの炎で黒炎は防がれた。
ということは、今後、漆黒の力を以ってしても適わない敵があわられるかもしれない。そうなれば、友達がもっと危険に晒されるかもしれない。
しかし、本格的に、異能力の世界に飛び込むだけの決意はない。
それなら、できるだけ、経験くらいは積んでおこう。そう思った。
「まあ、経験は積んでおいたほうがいいけど、なんかねえ」
「な、なんだよ」
「まあ、いいんじゃないかな」
「言いたいことがあるなら言えよ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。