実は自分ねらいだったかもしれない件について(仮)
「あなたは、おそらくある人間に、いや、組織からもしれないけれど、狙われているかもしれないわ」
予想外の言葉にかおるは言葉を失う。
「私が持っていたウリエルの炎あるでしょ?」
かおるが頷く。
「あれは、ある人から貰ったものなのよ。その人はあなたが漆黒の力を持っていると知っていた。そしてあなたのことをこう呼んでいたわ”暗黒廠雲皓”ってね」
「暗黒廠雲皓?」
「ええ、私もその名前に心当たりはなかったし、本来の目的はアウモデウスだったから、特に気にもしていなかったけど。今考えれば、変な話しよね。だから、一応知らせて置こうと思ってね。その忍の一族でも裏には、個人なのか、組織なのかはわからないけど、誰かいるかもしれない」
「わかった。気をつけておくよ。ありがとう」
「まあ、私の取り越し苦労かもしれないけどね。それじゃ、私は戻るわ」
アリスは、部屋を出て行った。
(暗黒廠雲皓、この名前に心当たりはあるか? ベルゴ・・・)
《・・・いや、ないな》
まさか、これまでの出来事が自分を狙ったものの可能性があるってことか・・・、だけど、かおるは直接狙われたことはない。どちらかといえば自分で巻き込まれに行っている感じだ。
だが、もし何かの目的のためにかおるに近づいているとしたら、それは何のために?
(一応、気を引き締めておくか・・・)
「!!」
かおるも自分の部屋に戻ろうとしたとき、いきなり部屋の電源が落ちる。
「なんだ!?」
かおるは急いで、廊下にでる。
廊下も同様に電気がついていなく。非常等だけが点灯しているだけだった。
かおるは、急いで、トシコの部屋に向かう。今、この状況で、こんなことを仕掛けてくるとしたら、忍の連中しかない。
自分の体にバリアを張り、完全な戦闘態勢に入りながら、かおるはトシコの病室の扉を開けた。
「かおる!」
「良太郎! 無事か!?」
かおるは良太郎と、竹市の両名を確認して、少し、心の不安が取り除かれる。
「うん、今のところ大丈夫だね。彼女も無事だ」
かおるはトシコを確認する。
(よかった、無事か・・・)
それにしても、スパンが短い。相手はこっちの事情なんて気にはしてくれないんだろうけど、とりあえず。皆を集めたほうが良さそうだ。
良太郎もかおると同じ考えだったようだ。
「竹市君、皆を集めてきてくれる?」
「わかった」
竹市が扉に向かう。
「おいおい、なんだこりゃ?」
「どうしたんだい?」
良太郎も、扉に向かう。
「これは・・・、参ったね」
2人の反応がおかしなものだったので、かおるも2人の元に向かう。
開け放たれた扉、その外を見ると・・・
「え? 森・・・なのか?」
眼前に広がるのは、病院の廊下ではなく。そこは大きな木々に囲まれた森だった。
- - - - -
「どうだ? 成功したか?」
敏夫が作戦の成功を聞く。
「はい。確認できました。病室の一室だけ、こちらに転移できました!」
双眼鏡を目に当てながら、勇次が言う。
「よし、まずはこれでトシコの確保に成功だ。これだけの忍を集めた甲斐があった」
敏夫は後ろを振り返る。
すると、そこには、あまたの忍が控えていた。そして、全員が息を切らしている。
敏夫が発動した忍法、それは、忍千人が一同に介することにより発動が許させるもので、千人の忍の生命力を使うことで一定空間の転移を成功させるものだ。
これは、まだ戦乱の時代のときに、主君を逃がすために開発されたものだが、千人もの忍が一つの城にいるわけもなく。使われたことは一回もない。
「これで、忍の歴史に我が名が刻まれたことになるな!」
「そうですね! 父上!!」
現在、敏夫の後ろにいる忍びは、いわゆる連合軍だ。篠原家、阿久津家筆頭に、元々この土地にいる忍の一族や、もろもろの他の、手中に収められている一族が参加している。
「でも、あの中には僕の未来の花嫁以外にも数人、人がいるみたいですよ」
典夫が言う。
「そうか、なら都合がいい。あの中にあの漆黒の力を持っているやつがいるなら、今度こそ、この総勢力を持って打ち滅ぼしてやろう! どれだけ負傷しようが大丈夫だ。こちらにはこの、篠原家秘伝の丸薬も数百子用意しているからな!」
丸薬とは、典夫、かおるが口にしたもので、ある程度の負傷なら回復できるものだ。それは魔力や生命力も同様である。だが、副作用ももちろんある。
「とりあえず。数名の忍を派遣しよう。まずは様子見だ。おい! お前達行け!!」
「御意!!」
敏夫に言われて、五名ほどの忍が従う。彼らは、元々この土地にいた忍たちだ。
典夫はそれを見て、哀れだなと思った。
忍の世界は、古い伝統を守っている。しょうもない組織だ。だが、彼のような上に君臨する家の人間には楽な制度だ。
生きていれば勝手に配下が増えていく。
そして、今回も、篠原家は阿久津家の手中に収められる。これが阿久津家のシナリオだ。
五人の忍が、転送された病室に近づく。
その瞬間、病室に結界が張られた。
その結界は見たところ普通のものだ。
(あいつはいないのか・・・?)
だが、そう考えた瞬間、地響きがする。
「なんだ!?」
すると、彼らがいた丘台が崩れ去る。
「全部、かおるのせいだったのかあ」
「いやいや、待て待て、そうと決まったわけじゃ・・・」
「最悪だよ」
「いや、だから・・・、ごめん」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。