実は怖い件について(仮)
「残念ながら、あんた達の火力じゃ、今の俺には届かないぞ」
かおるは、3人を睨む。
「ふん。いきがるなよ。一般人が、お前に我らの攻撃が届かないとしても、お前のその鈍い攻撃では、我らを捕らえることはできないぞ」
敏夫が、かおるに対してそう叫ぶ。
(確かにそうだな・・・)
かおるの攻撃は決して遅いものではない。むしろ普通の攻撃よりも早いほうだ。だが、彼らのほうが早い。
このときの忍との戦闘が、後の黒魔女アリスとの戦闘に役立つこととなる。
(炎で駄目なら、雷ならどうだ? 速度を上げることができるんじゃないか・・・、どうだベルゴ?)
《確かに、黒炎よりも黒雷のほうが速度は速い。2つの攻撃を上手く組み合わせればいいんじゃないか・・・》
かおるは、自分の向上のためと、最後の切り札として、今回はベルゴの助けを借りていない。
ベルゴの助言から、かおるは考える。
彼はまだ、2つの漆黒の力を同時に扱うことに慣れてはいない。なので、黒炎と黒雷を同時に扱うと、もしかすると暴走してしまうかもしれない。
(なら、2つを同時に使えばいいか・・・)
かおるは、2つの力を掛け合わせる意識で、右腕に力を集中させる。
「お?」
少しして、右腕から、黒炎と黒雷が2つ発現し、混ざり合う。
「な、なんだそれは・・・!?」
かおるの右腕に発言している。今までとは比べものにならない力を持つものを見て、敏夫がそう言葉をこぼす。
「まあ、見た目から言って黒雷炎ってとこかな。これなら、もしかしたら、忍の速度についていけるかもしれないな」
かおるは、それを、まず典夫に向かって放つ。
「な!?」
黒雷炎が、典夫の顔の真横を通って、後ろにガードレールにぶつかる。と同時にその一帯が粉々になる。
「やべ、ちょっと力の加減をミスったな。あんまり威力自体はいらないか・・・」
かおるは、自分の中で漆黒の力の調整をなんとなくする。
「次ははずさないからな」
かおるは、今度は両手に黒雷炎を纏う。
「典夫君!」
敏夫が叫ぶ。
「くっ!」
「勇次! 攻撃加え続けろ!!」
「あ、はい!」
勇次が、手裏剣やクナイ、爆薬や、催涙弾などの弾薬をかおるに向けえ、手当たり次第に投げる。
かおるはそれが、自分に届く前に、黒雷炎ですべてなぎ払う。
それを見て、敏夫が決断をする。
「2人とも! ここは一旦撤退だ!」
「わかりました!」
「・・・・・」
その瞬間、周りが煙幕に包まれる。この煙幕をかおるが焼き尽くすまでに3人は2人の前から消えていた。
「流石、忍だな・・・」
かおるは、トシコの元に行く。
「大丈夫か?」
「ああ、助かった。かおる・・・、お前、怒ると怖いな」
「え? そう? まあ、普段怒らないからな。はは」
そんなに怖かったのか・・・
かおるは、先ほどの自分を振り返る。
「まあ、少し頭に血が上ってたかな。とりあえず、街までこのまま下る?」
「そうだなあ、そうしよう。今は俺のことより孝子のほうが心配だ。それと、これ、飲んでくれ」
そういわれて、一つの黒い塊を渡される。
「これは?」
「さっき、あの阿久津家の人間が父上から受け取っていたものと同じものだ。さっきの混乱に乗じて、父上から奪った。これを飲めば、力が回復する。これを飲んでから24時間後に多少、体に負担がかかるけどな」
「そうなのか。まあ、飲むしかないか・・・、それにしてもよかった。トシコに張っていたバリアが消えていることには3人ともばれてなかったみたいだな」
「まあ、それでちょうどよかったわけだけどな」
実は、黒雷炎を発現してから、上手く黒炎の制御ができなくなり、トシコを守っていたバリアは消えていた。
だが、それによりトシコは動くことができて、敏夫から薬を奪うことができた。
かおるは、その薬を飲んだ。
体に力が満ちていくのを感じる。
「それじゃ、行くか!」
かおるはトシコに続いて、山を下りていく。
- - - - -
「父上、ご無事でよかったです」
「どこがよかっただ。こんな失態、許されるものではない!」
敏夫は机を叩く。
「すみません、僕が役立たずで・・・」
典夫が敏夫に頭を下げる。
「いや、いいんだ。君はよく頑張ってくれたよ。ただ、漆黒の力があれほどまでとは、俺の考えが甘かった。くそ!」
「どうしますか?」
「こうなったら、篠原家の全力を持って、あの男を必ず、仕留めてみせる。今から、本家に通達だ。優秀な忍を召集するぞ!」
「それなら、僕も阿久津家に掛け合ってみます」
「いいのかい?」
「ええ、僕も引き下がれないので・・・」
「わかった。頼む」
典夫は、その場から、立ち去る。
ある程度、ひと気のないところに行き、典夫は通信機器を取り出す。
「もしもし、はい。大丈夫です。篠原家には上手く取り入りました。ただ、少し問題がありまして、数人、人を送っていただきたいです。はい、ありがとうございます。はい、すべては篠原家を手中に収めるために・・・」
典夫が通信を終える。
「出てきてくださいよ」
地面から何かが出てくる。
「やはり、お前は篠原家の乗っ取りを計画していたか・・・」
義信が、典夫の目の前に立つ。
「流石、次期当主、その忍法も流石ですが、老害とは違い。よく気が付きましたね」
「ふん。阿久津家にはよくないうわさがあるからな。調べさせてもらったよ」
典夫は義信に近づいていく。
「残念です。もう少し、大人しくしていてくれれば、手を出さずに済んだのに・・・」
「お前がどれだけすごいかは知っているが、俺もそう簡単にやられはせんぞ!」
典夫と、義信がお互いに向かって走り出す。
「うわあ、かおる、怖いね。一番怖いやつだね」
「そうかな?」
「自覚がないのがまた怖い・・・」
「いや、そんなに引くなよ!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。