何回も真っ赤になる件について(仮)
「やっとついた・・・・」
大変な道のりだった。
かおるはぼろぼろのいかだから、なんとか地面の降り立つ。
「いやあ、いい運動になったな」
トシコはなぜか肌の艶が良くなっている。
それに少し腹立たしい気持ちが起きないわけではないが、ここは我慢だと思った。
かおると、トシコの2人は川を最後まで下ったわけではなかった。大体三分の二くらいまで下ったところで、また再度、森に入る。
これは、おそらく後ろから追ってくるであろう篠原家の人間から逃げるためというのと、トシコが街までの道がわかったという理由である。
「じゃあ、行くか」
「また獣道ですか・・・」
「いや、ここを真っ直ぐ100メートルくらい行くと道路が見えるはずだから、それを今度は下っていこう。それなら、かおるも大丈夫だろ?」
「そうだな。それなら、多分」
かおるはトシコの後を付いていく。
「お、道路が見えたぞ」
トシコのその言葉から、コンマ数秒、かおるの目にもアスファルトで塗装された道路が見えてきた。
(おお、これで少しは楽になる・・・)
「止まれ!」
後もう少しで道路に足を踏み入れるというときに、トシコがかおるの前に手を出し、その動きを制する。
トシコはその場にしゃがんで、地面にある何かを触る。
「罠だ・・・」
それはワイヤー状のもので、トシコが上を見る。そこには、槍の嵐をそのワイヤーを踏んだものに振りそそぐものが設置されていた。
「こんなところに罠があるってことは・・・」
2人は、その罠を避けて、道路にでる。
「待っていたぞ」
その言葉が、道路の上から聞こえてくる。聞き覚えのある声だ。
「父上・・・」
「どうして、俺達のほうが早いのかという疑問を抱えた顔だな。いいだろう。教えてやる。残念ながら、お前達には追跡忍法を施している。なぜだが知らないが、その男のそれは破られてしまっているようだが、トシコ、お前は気が付かなかったみたいだな」
「くっ!」
「サイレントスキルでも使えばよかったのだが、自分だけが姿を消しても意味がないと思い使わなかったのが仇になったな」
「しかし、それでも、川を下ってきた俺達よりどうして、父上たちのほうが早いのですか?」
「簡単な話だ。抜け道があるんだよ。この山には」
「もしかして、この土地の忍を・・・・!?」
「ああ、手中に収めた」
トシコは苦虫をかんだ顔をなる。
かおるには、トシコがそこまで嫌な顔をする理由がわからなかった。
「どうして、父上はそんなことを?」
「この土地の忍はくだらんやつらだったからな。再教育してやったんだ」
トシコは怒号を放つ。
「そんな時代は終わったのですよ!! 暴力でなんでも事を運ぶ時代は!!」
「今、お前とそんなことを話している時間はない」
かおるが、話の中身がよくわからず。首をかしげていると、ベルゴが説明してくれる。
《俺の知っている忍同士の手中に収めるという表現は、敗者を勝者が下僕にするというものだ》
(マジかよ・・・、ってころはこの山にいた忍は、篠原家の下僕になっちまったってことか?)
《反応からしてそうだな》
かおるは、奥歯を強く噛む。
「まあ、まあ、お2人とも、落ち着いてください」
トシコと敏夫がにらみ合っている間に、一人の男が入る。その男は、敏夫の横に立っていた男だ。敏夫の隣にはもう一人男が立っている。
「お前は誰だ?」
トシコが睨みを利かせたまま言う。
「いやあ、始めまして、阿久津 典夫、あなたの将来の夫です」
その男は、どこかの社交場でのあいさつのようなものをする。
その姿を見て、かおるはその男を優男と呼ぶことにした。
「お前が、今夜、見合いをする予定だった典夫君だ」
「俺の勘違いでなければ、相手はもうすでに俺と結婚する予定みたいですが?」
「そんない目くじらを立てないでください。ただ、僕はただあなたを迎えにきただけですから」
そういいながら、その男がトシコに近づいてくる。
《気をつけろ、今の忍はどうか知らんが、昔の忍を継承している人間なら、何をするかわからないぞ》
(わかった)
かおるは、気持ちを身構える。
「俺は、お前とは結婚する気はない。俺はこの男、かおると愛し合ってるんだ!!」
「え?」
かおるはその言葉に肩の力が抜ける。
かおるがトシコを見ると彼女はその言葉が恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしていた。
「ああ、嘆かわしいことだ。忍の者がそんな、しょうもない男にたぶらかされているとは・・・」
かおるはその言葉に、忍という一族は総じて口が悪いんだと理解した。
「僕が元に戻してあげましょう」
その瞬間、その優男が一瞬でトシコとの距離を詰める。
「な!」
そして、トシコに何か毒針みたいなものを刺そうとする。
だが、それは寸でのところで防がれた。優男は距離を取る。
「この場で、僕の攻撃に反応ができたのはあなただけですよ」
典夫はかおるを見る。
トシコの周りには、かおるが展開した黒炎のバリアが張ってあった。
これは、先ほどのベルゴの忠告のときにトシコの周りに予め仕込んでおいたものだ。
「助かった。かおる」
「いや、気にするなトシコ」
かおるは、一応付き合っている設定なので、下の名前で呼んだほうがいいと思い。そうしたのだが、それがトシコには不意打ちであったらしく、彼女は顔を真っ赤にしていた。
「ひゅー、かおるイケメンだね!」
「いやいや、どう考えても、トシコの反応がおかしいだけだから!」
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
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