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天国宝くじ  作者: 三毛猫
4/5

リョウタの願い

「こんにちは!そしておめでとうございます!!見事、貴方が天国宝くじの当選者に選ばれました!!」




「……確か、お隣さんが宝くじを買っていましたよ。間違えてしまったのですねぇ…」



リョウタはスーツ男に微笑みながら応えた。



「あ……いえ、この世の宝くじでは無くて、天国の宝くじが当選したのですよ」



「天国……あぁ、もうお迎えが来たのかい?」



「大丈夫です。リョウタ様。まだ貴方にお迎えが来る予定はございません」



スーツ男はしっかりと否定した。

確かに天国の人間だが、お迎えは担当していない。



「そうなのか…」



「あの…こんな全身白のスーツですが………怪しい者では無いので家にお邪魔してもよろしいでしょうか?」



恐る恐るスーツ男はリョウタに訪ねる。



「えぇ。大丈夫ですよ」



「お、お邪魔してもよろしいのですか!?」



予想外の対応にスーツ男は慌てた。

何時もなら不信感丸出しで見られる。

酷いときは警察か救急車を呼ばれた時があった。



「大丈夫ですよ。貴方からは危険な雰囲気はしませんからねぇ……不思議ですねぇ……」



どうぞっと微笑みを崩すことなく、リョウタはスーツ男を家に招き入れた。



「あ、ありがとうございます!ではお邪魔します!」



「あら、あなたお客様ですか?」



リョウタの妻が様子を見に来た。

優しい雰囲気のリョウタと同じく、妻からも同じ空気を感じる。



「久々のお客様だよ。何でも天国宝くじが当たったらしい」



「天国宝くじ………ですか…」



天国宝くじっと聞いて妻は少し引っ掛かった。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「ささ、熱いうちにお茶をどうぞ」



「はい!ありがとうございます!!」



「つまり、願いが一つだけ叶うって事だね?」



「はい!リョウタ様の願いが一つだけ叶えられます!」


お茶をひと口飲み、改めてリョウタに天国宝くじの説明をした。



「願い……」



「ん?どうしたんだい?」



「あ、いえ……少し聞いた事がある様な気がして……」



隣に座っているリョウタの妻が首を傾げる。



「まぁ、最近は詐欺事件が多いからねぇ…きっとニュースで似たような事を聞いたんじゃないのかい?」



「そうねぇ…」



「あの詐欺ではありませんのでご安心を……それでリョウタ様の叶えたい願いはなんでしょうか?」



「うーん……叶えたい願いかぁ………無いかなぁ……」




「え?……無いのですか……本当に無いのですか……?」



ここでも予想外の答えにスーツ男は戸惑った。



「あの……億万長者になりたいとか?若い頃に戻りたいとか……?」



上ずた声でスーツ男はリョウタに訪ねた瞬間、豪快にリョウタは笑い始めた。




「ハハハハハ!!確かに!もし私が若い頃に願いが叶うっと言われたら億万長者になりたいっと伝えたかもしれないなぁ……ただね」




「ただ?」




隣に座っている妻の手を優しく握り、リョウタは少し照れた様に話始めた。



「私は最愛の人に出会い……元気な子供に恵まれ…その子供も無事に結婚して孫も産まれて……とても幸せなんだ……」



それを隣で聞いていたリョウタの妻も恥ずかしそうに微笑んだ。



「左様で……ございますかぁ…」



「わざわさ、出向いてもらって申し訳ない…」



頭を深く下げリョウタはスーツ男に謝罪した。



「いえいえ!…しかし、本当によろしいのですか?」



「ええ…もし良かったら、その当選の権利を他の方にお渡しください」



「……わかりました。お役に立てなく申し訳ありません。もう、そろそろ失礼しますね」



「もう帰るのかい?何も出来なくて申し訳ないねぇ……」



すくっと立ち上がるスーツ男にリョウタは慌てて声をかけた。



「いえいえ!!こんなに優しくしてくださって、これだけで感無量でございます!!」



靴を履き終えスーツ男は深々とリョウタに頭を下げた。


「それでは失礼します!!リョウタ様!貴方に幸あれ!!」



そう言い残し、笑顔のままスーツ男はリョウタの家を後にした……


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



「不思議なお客様でしたねぇ…ふふ」


お茶を片付けながらリョウタの妻は微笑んだ。



「ん?どうしたんだい?」



「私が若い頃にね。とても不思議な夢を見たのを思い出したのよ…」



「どんな夢だったんだい?」



興味津々のリョウタ。

お茶を片付ける手を止めて、妻は楽しそうに話を始めた。



「昔、私が住んでいたアパートにクラッカーを鳴らして、さっきみたいに「天国宝くじが当選しました!」って嬉しそうに言ってね」



「うんうん」



「それから、億万長者になりたいとか、絶世の美女になりたいっと願いを伝えるのだけど、悲劇的な結末になってしまうの」



「ははは!それは災難だなぁ…」



「ええ。本当ね。でも一つだけ悲劇的な結末にならない願いがあったのよ」



「それは何の願いだったんだい?」



「それはね……素敵な恋人と幸せになる事だったのよ…」



「それで……素敵な恋人には出会えたのかな?」



恐る恐るリョウタは訪ねた。


「ええ!だってその夢を見た次の日にリョウタさんに出会えたのだから!」



妻の答えを聞いてリョウタは心底ほっとした顔になった。



「それは嬉しいなぁ……もし、僕と別の人だったらショックだったから……っと僕も思い出した!」



「あら?何かしら?」



今度はリョウタの妻が興味津々に訊いてきた。



「昔、君がガンで入院した時があっただろう?」



「えぇ……そうねぇ……あの時はもう駄目かもって言われていたわね……でも…」




「そう……もう一度、検査した時にはガンの姿が無くなって、他の検査も異常なしって……」



「あれは……本当に不思議だったわ……」



「その時にね。ケンタが「全身真っ白のおじさんにお願いしたんだ!だから治ったんだよ!」って言っていたんだよ」



「まぁ!そうだったのね!」



「そうなんだよ!つまり僕達家族全員、天国宝くじに当選していたんだな!」



「そういう事になるわね!ふふふふ♪」



暫く二人は声をあげて楽しそうに笑い始めたのであった。

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