苦労した機械
「やったぞ!ついに完成だ!」
「苦労の甲斐がありましたね。博士。」
「ああ、この、スイッチを押すだけで今まで経験した全ての嫌なことを瞬時に忘れることのできる機械を作るのにどれだけ苦心したことか。しかし、これで人類はさらに進歩するに違いない。」
「助手くん、君がスイッチを押したまえ。」
「え!僕が押すのですか?」
「安心したまえ、助手くん、動物実験は既に済ませてある、飼い主に虐待され、引き取った時からずっと怯えていたあの犬も、スイッチを押すだけで今は穏やかに過ごすことが出来ている。」
博士の指さすほうには先日引き取ってきた犬がすうすう寝息を立てていた。
「今まで一緒に苦労してくれたのだ、さあ、人類の大きな一歩を私に見せてくれ。」
「分かりました。」
助手がスイッチを押すと、部屋の中にやかましい電子音と機械音が鳴り響く。
数分も経たないうちに音が止み、博士が助手に話しかける。
「どうだね、具合は。」
機械を見つめたままの助手が応える。
「なんです?この機械は。変な音が鳴るばかりで何の意味もないじゃないですか。」
「何だって?そんなはずはない、私の設計に狂いはないはずだ。」
慌てた博士は助手の前に割り込み、スイッチを押す。またやかましい電子音と機械音が部屋に鳴り響き、数分も経たないうちに音が止む。
「何だ、この音が鳴るだけの無意味な機械は。私はこんなもの作った覚えはない。こんなものを置いていても部屋の邪魔だ。粗大ゴミとして捨ててしまおう。」
もっと皮肉の効いたタイトルにしたかったのですが難しいですね。