病室での日常
ここは、重病患者が集まる施設の一角である。
目を見えない子供や足と手が動かない老人、精神的苦痛によって髪の毛が抜けた女性などの
多くの患者がベットを並べて横たわっている。
窓がたった一つしかなく薄暗い。
昼でも晴れでもカーテンによって閉ざされている。
患者たちは麻酔によって寝ていたり状況が読めずに沈黙を通していたり時間は無音で流れていく
医師も看護師も滅多に来ない。 病人以外来ない。 健康なら近寄らない。
何もない、時が過ぎるだけ。 変化がない。 変化がない辛さ。
そんな病室でも健康な人たちが集まる部屋のことである。
窓が一番近いベッドに横たわっているペプシは毎日時間をかけて起き上がり
カーテンの小さな隙間から外の様子を教えることが恒例になっていた。
それだけがこの病室の楽しみであり音であった。
ペプシはカーテンに頭を隠しながら喋った。
「今日は髭の生えた兄さんがギターをひいているよ 」と、
そうすると皆がざわつき質問をはじめる。
「何人ぐらい見ているんだい?いつものように人気なんだろう?」
「やっぱり儲かってるんだろう?」 「音が届かないのが残念ね」
「いつもの兄弟がお菓子をわけあっているよ、残りの一個を譲り合ってるみたいだ」
「やっぱりいつものようにチョコクッキーなのかな?」
「実は喧嘩しているんだろう?」 「カーテンで見えないのが残念ね」
ペプシがカーテンの向こうの様子を話してくれるときだけは、暗い病室に
何かあったかそうな夢と期待がカーテンから溢れてくるのだった。




