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プロローグ
牡丹雪が舞うなか私は花束を片手にある場所へ向かっていた。
高校を卒業して県外の大学へ進学した私は一度も実家に帰ることなく学生生活を送っていた、というよりも、独り暮らしを満喫していたと言った方がいいかもしれない。
「ただいま……潤」
私はある人物のお墓の前にいる。
『鏑木 潤』
私の幼馴染みであり……元恋人である。
「久しぶり……4年…振りだね…」
久しぶり過ぎて面と向かって話してる訳でも無いのに緊張して言葉が出てこない。
「寂しい思いさせてごめんね、私、今年の春からこっちで働く事にしたんだ…」
「潤が…潤と私が産まれ育った……一緒に思い出を作った…この町で」
私は、込み上げて来る感情を圧し殺すことが出来ず、そこに、潤が居ないとわかっているけど顔を両手で覆い隠しながら涙した。




