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美人に殴られろ!

「爆発しろ!」のネタは浮かんだんですが「モゲろ!」のネタが浮かびません^^;

まあ、どちらにせよ、次回以降のネタですが




 いきなり見知らぬ美人に殴られた。



 

 周りの別荘と比べても一際豪華な別荘に到着した俺たち一行だったわけなんだが、門の前に正に仁王立ちと言っていい感じに立っていた女性に俺が有無を言わさず殴られたのが今の状況だ。



 まあ、この王子だから女性に殴られて当然なんだが、俺が中に入ってるんだから勘弁してもらいたい。


 

 ただ「俺が殴られた」って言うのがちょっと問題なんだよねぇ。



 俺のお付のアヤメは、その騙されやすさを除けば優秀だ。



 実際、傍にいる状態で俺への刺客を返り討ちにしたのを、俺も何回か目にしてる。



 この女性のパンチも、腰の入った鋭い一撃ではあったものの、相手に一切怪我を負わせたりせずに、その暴力を防ぐ事はアヤメにはたやすく出来たはずだ。



 それを「しなかった」という事は、この女性がアヤメにとって信頼出来る相手であったという事。



 つまりは王子にとってもかなり馴染み深い相手であるという事になる。


 ガチガチと言っていい忠誠心の塊であるアヤメが自分の個人的付き合いを優先させる事は有り得ないからな。


 となるとだ、この女性は王子に対して深刻な悪意は持っていないって事になるんだ。



 たぶん、バカな友達に対する挨拶を兼ねた制裁ってトコだろ?

 うん、最低でも友達って事は、下手するとアヤメに次ぐくらい王子に親しい相手。


 でも、俺は見覚えないし、王子の記憶を漁ってもこの顔は浮かばない。


 ・・・これは伝説のリア充的要素「美人の幼馴染」って奴じゃないのか?


 流石、顔だけはイケメン王子、「モゲロ!」と言いたいトコだが、今は俺の体なんでモゲてしまうと困る。


 

 目の前の惨劇にオタオタしちゃって涙目になってる薄幸の侍女のフォローをしてる姿を見る限り、性格も悪くは無さそうだ。


 女性にしては太目のキリリとした眉毛をしてるが、内面に似合ってそう、ってか意思の強さが顔に出てるって気がする。

 女性にも好かれそうなタイプって感じ。


 外見だけの王子にゃ勿体無い美人だな。



 「あんた、馬から落ちてまた死に掛けたんだって? だから女の尻ばっかり追いかけるのはやめなさいって言ったでしょ! 別にあんたがどうなろうと構わないけど、他の人に迷惑がかかるんだからね!」


 これがツンデレって奴か?


 まあ、頬が紅潮してるのが怒りの為なのか、他の感情のせいなのかは俺には分からないけど。



 俺がぼけーっとしていると、後頭部に衝撃と共に激痛が走る。


 「また、ボケっとして! 何、誰だか分からない、みたいな顔してんのよ! ・・・まさか、私の顔を忘れたなんて言わないでしょうね!!」


 ・・・女性って怖いね、うん。

 

 「いや、予想以上に美人になっていて驚いてただけだよ?」


 取り敢えずのフォローも「頭打って悪い頭が更におかしくなったの?」と真顔で心配されてしまう。




 記憶の隅っこ、でも王子にとっては大事なものフォルダに、幼き頃の彼女の映像はあった。


 「子供らしく」王子が遊んだ唯一の相手、エリシア・カラ・ジルブレイス。


 王室からこの地の管理を任されているゲオルグ・カル・ジルブレイス子爵の長女。

  

 王子よりも2歳年下ながら、物知らず、世間知らず、常識知らずの王子に呆れ果て、バカな弟の面倒を見る様な態度を取っていた少女。


 一別以来、実に10年ぶりの再会であった(この時期の十年、しかも異性なんてパッと見で分かるわけねーじゃん!)。





 顔を合わせるのは久々であっても、手紙を通じたやり取りはその後も続いていた。


 王族、貴族を合わせた中でも数少ない王子を「見捨てなかった」存在である。


 苦言が多く、また歯に絹を着せない文面に、口では文句を言いながらも手紙の間隔が開くと心配してみたりと、王子にとっても彼女は特別な存在であった。


 もっとも、返事の手紙は元々あまり書かなかった上に、「あんた字が下手ね、もっと練習しなさい」と言われ落ち込んだ為に、更に返事の回数が減ったなどという経緯もあり、中身が俺になってからも手紙は来ていたものの、「王子もあんまり返事出してなかったし」と返事の手紙も書いてなかった事から、俺的にも申し訳ないという感情が先立って反抗する気が起きない。   


 手紙の受け渡し役をアヤメが行う事も何回かあったから、アヤメにとっては何度も顔を合わせた相手でもある。

 うん、もし彼女と俺が争ったら良くて中立、下手すんと向こうの味方に付くなアヤメは・・・(「忠誠心はどこに行った!」となるけど、俺への忠誠心<<<彼女への信頼、だろうな、たぶん)。 





 そんな彼女の説教を既に彼女手配である程度整えられていた王室の別荘の、応接間で聞く羽目になっている。


 アヤメの事にしろ、彼女の事にしろ「王子贅沢すぎるぞ、お前!」と言いたくなる。


 まともに相手を認めてなければ、少なくとも関心が無ければ説教なんて疲れる事はしない。


 有難過ぎる程有り難い話なんだが、彼女の説教の内容は俺では無く王子がしでかした事だ。


 今の俺が王子である以上、神妙に聞くしかないんだが、理不尽さを「感じる」くらいの自由は有ってもいい筈だ。


 

 「なに、他人事みたいな顔してるのよ!」



 いや、鋭すぎるだろ、この人。


 うん、少なくとも目の前に居る時は、内心の自由すら許されないみたいね。


 

 誰か助けてくれー!





「美人からの説教、ご褒美です」って人じゃないんで

忠志君の苦行は続きます

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