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たぶん異世界47日目 ~シリスの日記 4ページ目~

彼女の姿が変化した。

驚いたことに、彼女もオレと同様に変化の術を使っていた。



そうして、オレは彼女の姿に見惚れた。




彼女は美しかった。

言葉にするのが難しいほどに。




紫紺の髪に白皙の肌、静かに開かれオレを見据えた瞳は髪と同じ宝石も霞んでしまうような紫紺の輝きを放っていた。迷い人だからだろうか。紫紺の髪と瞳の持ち主は初めてだ。加えて、ここまで美しい女性を目にしたのも。しかも類稀なる清楚で可憐な美貌。何よりもその圧倒的な存在感と雰囲気に、呑まれた。



オレは『主』に、ただ、ただ、見惚れるしかなかった。



そして、彼女も剣の使い手だったのだろう・・・しかも普通の剣ではないようだ。

彼女は双剣を手にし、胸に掲げた後、オレの剣に合わせ言葉を紡いだ。



「我、カオル・トウドウはシーリウス・シリス・アドルフス・アーダンベルト・ベニート・プランドリア・ウィスタリアを真の騎士、唯一無二の騎士であることを許すと共に、汝に生涯絶対の命令を課す。いつ、如何なる状況であろうとも私の為に生きろ。例え頭だけになろうとも、生きて役に立て」




彼女の言葉と共に誓約の陣は更に輝く。




彼女の告げた言葉にオレの魂はどうしようもないほどに歓喜し、余すところなく、満ちた。



彼女の望みは生きて役に立つこと。

それは死を望むことよりもより、困難だ。

例え、絶望しかなくともどんな状態になってもオレに『主』よりも先に、死を選ぶことはもちろん、死ぬことは許されないということだ。なんと素晴らしい、命を課す『主』なのだろう。



さすが、オレの『主』

オレは貴女のモノだ。オレの全てを捧ぐ。




「御意」




オレは心の臓の上に誓印が刻まれたのを感じながら、彼女の最初の命に応え、頭を垂れた。





誓約の印、通常は誓印と呼ばれるものは騎士にのみ刻まれる。

騎士に取っての『主』は唯一人だが、『主』にとっての騎士は一人ではない為、騎士にのみ刻まれるのだ。誓印は『主』と自信を表す印が刻まれる、唯一つの印だ。



オレは『主』に了承を取って、自分に刻まれた印を確認した。



「・・・!剣は解るが、龍に・・・紋様・・・?しかも、色が紅と紫紺に・・・金と言うか銀というか・・・不思議な色合いだな・・・」



恐らく、オレを現すだろう、剣と紅色は解る。紫紺色もカオルを表すだろうこともだ。

しかし、この龍、しかもよく見ると六本の角と七本の爪を持っているように見える。更にこの複雑な紋様だ。この紋様、見ようによってはどの属性の紋様にも見えるし、どの属性にも見えない紋様のような・・・これはどうしたことかと思っていると、オレの紋様をじっと見ていた『主』、カオルと呼べと言われていたんだった。カオルが問い掛けて来た。




「この誓印って、もしかして、私とシリスを表してたりする?」



オレは誓印について簡単に説明した。



「・・・しょうがない。シリスは私の騎士になったんだし、お互い隠し事はやめよう。それでいい?」


「もちろん。オレは『主』であるカオルに隠し事する気はない。何でも答えるし、聞いてくれるとありがたい」




「口調は必要な時以外は、臨機応変に。出来るだけいつものようにしてね」




「わかった」





「ちなみに、私の人生の目標は、しぬほど地味で平穏で普通のヒト!目指せぱんぴー、いっぱんぴーぽーだから。宜しく」



と、言って、変化の術でまた、元に戻ってしまった。

もったいない。

誓約の効果か、目を凝らせば、先ほどと違い、彼女の本来の姿が見えるのでまぁ、いいか。



オレも変化の術で元に戻る。

そんなオレを見て


「あの眼、綺麗なのにもったいない・・・」


と、言ってくれて嬉しかったが、とりあえず、オレの素性と現状を話した。

彼女はかなり驚いた挙句に、嫌な顔をされたが、もう、誓約を結んでしまった後だ。

後の祭と言ったところだろう。それに、オレは彼女にどこまでも付いていくので望むならば家と縁を切ってくると申し出たら、焦った感じで目立たなければいいからその必要はないと言われた。

何れ、一族を安心させる為、一族にオレの『主』を紹介する為に顔出ししないといけない旨も伝えたら、こっそり地味にしてくれるならと良いと了承を得た。


後悔しても、誓約はお互いどちらかの死以外は解除不可能と説明したので、彼女も諦めたらしい。


オレは内心ほくそ笑んだ。



それから、彼女の現状、攫われた友人を取り戻す為に組織を探っていたこと、これからどう行動するのかを話してくれた。

肝心の彼女について・・・オレは呆気に取られるしかなかった。


迷い人で、一ヵ月半ほど前にこちらに来たこと。

帰る手段を一応探していること。これは問題ない。

彼女が帰る時に向こうの世界に一緒に付いていこう。彼女には言っていないが。


彼女の愛剣は双剣で「クラウディア」と言う異世界のものであること。

剣はもちろん、魔法も魔術も治癒術も精霊術も使えること。

もう、この時点で耳を疑った。治癒術を使える時点で普通ではないのに、全て使える者など、異世界人での過去数人。異世界で使っていたものだから、こちらの術とは少し違うらしいが、それでも、片手ほどの人数しかいないのだ。


それだけならば、未だしも(全然、未だしもじゃないが・・・)、オレの誓印について何を表しているかについてカオルが説明すると言ったタイミングで金にも白銀にも虹色にも見える、不思議な色をした小さな龍?がヒトを加えて現れた。


そして、話した。


「カオル、これはここに置いてもいいか?」


「ユッキーありがとう!そして、これはなかなか、起きそうにないね。でも、起きたり、話を聞かれたら困るから、念の為、遮断結界張っとこうか」


彼女は言い終わるや否や一瞬で龍が連れて来た男?に魔術で結界を張った。



「・・・カオル・・・こやつは?・・・お前と誓約を交わしたのか?我とエスの加護とカオルの気配がそやつからするが・・・」


「そうだよ~カオル、シリスと誓約しちゃったんだよ~」

と、いつの間にかカオルの足元にいた黄金の毛並みの仔犬が話した。



?!

この犬、カオルの守護獣か?

カオルの守護獣にしたって、オレが許可を与えてもいないのにシリスと呼んだ!



オレが驚いていると、龍と守護獣はカオルに促されて挨拶をしてきた。

もちろん、オレも名乗った。正式名で。




カオルから聞いて驚いたが、オレの誓印の疑問も解決された。



ユッキー(オレはユキと呼ばせて貰うことにした)がカオルの守護龍で神龍であること、エスは高位精霊でカオルを守護している為、その加護がカオルを主としたことでオレにも与えられたことを伝えられた。


なるほど、それでオレの誓印にも表れたわけか。



それにしても、神龍なんて、龍の中でも希少種なうえに、伝説と言われるまでに存在が疑わしかった神龍王なんて本当に存在していたんだなと関心してしまった。


6本角に7本爪なんてものを見せられたら信じざるを得ない。

某国の竜騎士団に水龍王を持つ竜騎士がいたので一度式典の時に拝見したが龍王でさえ、確か、4本角に5本爪だった。神龍は他の竜に比べ、数はかなり少ないが桁外れの力を持つと語られている。と、言うのも神龍自体、歴史に現れることがほとんどない為だから記述がほとんど残ってないのだ。


それは兎も角もユキとエスの加護とはどのようなものか簡単に確認したら、ヒトであることをやめたんじゃなかろうかと思えるほどの力が色々と付加されたようだった・・・オレ元々、二つ名持つほど強かったんだけど、更に強くなってしまって自分で自分が心配になってしまった。




それでも、カオルとユキとエスと一緒にいることは楽しいと感じた。

これがずっと続くのかと思うと、オレはどうしようもないほどの幸せを感じる。




















オレはこの日、かけがえのないものを手に入れた。














































補足?でしょうか・・・

薫ちゃんは自分に関して関心がないので解っていませんが、本来の姿はしぬほど美人です。この世界に来るまでに壮絶な人生を送っていたので経験もあるし、強いです。

薫ちゃんは美醜に凄まじく疎いので、周りに美形がわんさかいても気付きません。力と容姿が比例する世界なので薫ちゃんの周りには力が強いのが多いので容姿端麗者がわんさかでございます。


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