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たぶん異世界32日目 ~ユージンの日記~

首都グーズグレイに向かう途中にそれは突然起きた。


ヒルの思い人、カオルが突然、ティアという同伴の女に叫びながら馬から飛び降りた。

カオルの言葉を受けたのか、ティアも続いて馬から飛び降りる。続いて素早く、亜空間から武器を取り出した。驚いたことに、両手に持ったのは大型の円形の複雑な形をしたブーメランだ。はっきり言って、あんなモノを扱えるヤツは男でもなかなかいない。武器としての能力は高いが扱えるようになるまでがこんなんなのだ。しかも、あの武器、魔法も載せて使うタイプのようだ。


・・・まともじゃないとヒルが言っていたが、ヒルの目が確かだったと認めざるを得ない。


立ち直るのはヒルの方が早かった。

色ボケしてても、さすがと言わざるを得ない。

ヒルトは急いで馬首をカオルの方に巡らせ、走らせた。


ティアに気を取られていた俺は、ヒルに倣う。


そんな俺達、嫌、ヒルトに向かって、真っ直ぐに射抜くような眼をしてカオルは告げた。


ヒルにそんなことを言う女どころか、ヒトは初めてだった。

あの、万能人間ヒルに自分にとっては存在価値もないし、不愉快だから二度と姿を見せるなとまで言った。ヒルにそんな暴言を吐いたモノは俺が生きてきた中で初めてだ。

確かに、色ボケしているヒルの様子を見るとそう言いたくもなるが、彼女はしっかりと、潜んでいた事実を見抜き指摘したのだ。今までヒルの周りは彼を恐れるモノが大半であり、彼は基本的に自分にも他人にも厳しかった為、たまに今回のような甘えが出ても時が経てば正されることも多かったので放っておいた。しかし、彼女は深くズバっとはっきりと誰も指摘しなかったことを、一撃必殺の如く打ち抜いた。しかし、同時に関心もした。彼女は短期間で鬱陶しそうにしながらもヒルのことを把握し、弱点をしっかり突いてきたのだ。ヒルには申し訳ないが、天晴れとしかいいようがない。

自分も唖然としていたが、ヒルのことが心配になって様子を伺った。


そこには、今まで一度も見たことのない、ヒルの愕然とした姿があった。

明らかに、しぬほどショックを受けているようで放心状態だ。

当たり前だ。

しぬほど好きな、自分の世界の中心になるほどの女に認識する価値のない屑と言われたのだ。

脈がない、脈がないと思っていたが、ここまでとは・・・ここまで来るとヒルが可愛そうになってくる。


更に彼女は気になることを言った。


「あなたが、自分のことにきちんと決着を付けないから、こういうことになるんです。これで、私達が戦闘能力皆無のただの村娘なら、間違いなく即死の状況ですね」


どういうことだ・・・?

俺がそう思い、言葉を紡ごうとしたら彼女、カオルは驚く速度で、初めて見るタイプの強力な防御魔術結界を展開させた瞬間に俺達も攻撃魔法の気配を感じ、防御魔法を展開、彼女の言葉の意味を知った。突然の強力魔法襲撃にヒルのことを気に掛ける暇もなかったが、ヤツもさすがは軍人。条件反射で結界を張ったようで無事だ。


攻撃魔法が降り注ぐ中、彼女はヒルに別れの言葉を継げ、去った。


しかも、彼女、カオルとティアの戦闘能力は凄まじかった。

軍人でもなかなか、見ない程の腕ではないだろうか・・・?彼女たちは一体何者なのか、まともな女たちじゃないのは確かなようだ。彼女たちの後を追い、問い詰めようとしたが、激しい攻撃と夥しい数の襲撃者たちである。どう言ったわけか神族の他にヒト型魔族、魔獣や魔物までいる。


しかも、彼らの狙いはヒルのようだ。

これで、彼女の言葉に合点がいった。この襲撃者は恐らくヒルを抹殺しようとする暗殺者たちの一味だろう。ヒルの方を確認すると俯いて微動だにしていなかった。


俺は舌打ちしてヒルの傍に寄ろうとしたが、突然、身体に大きな負荷が掛かり動けなくなった。


「貴様らの所為で、カオルに嫌われただろうが・・・どうしてくれる・・・?」


ドス黒い、魔王のようなオーラを出しながらヒルは呟いたと同時に、地味モードではなく、本来の姿に戻ると同時に、ヒルの周りにいたモノたちが一瞬にして塵と化した。魔力が暴走したのかと思い冷や汗を掻いたが、


「ユージン、邪魔だ。死にたくなければ、退いていろ」


違ったようだ。


その後のヒルの戦い振りは凄まじかった。死神なんて甘いモンじゃなかった・・・

怒り狂ったヒルは、重要人物と思われるモノ以外は全てを無にして・・・せめて血の海にして欲しかった・・・何もなかったことにされたよ・・・ヤツら・・・こえぇぇぇええええ・・・あいつ、カオルの前だとあんなにイっちゃってデレデレだったのに・・・無意識に遠い目になってしまう。


はっきり言って、ヤツとは長い付き合いだが、ここまで怒ったヒルを見たのは初めてだ。

俺はこの時に改めて思った。ヒルを敵に回すのはやめよう。



俺は一人遠い世界に現実逃避していると、ヒルが中心核のモノと思われる奴らを連れて俺の傍に来た。そう、絶対零度の空気のまま。


そうして一言。


「このまま、城に転移する。俺の邪魔をする奴らは徹底的に排除し、さっさと、俺のやるべきことを全て片付ける。手伝えユージン。俺は早く、カオルに認めて貰える存在になりたい」


「御意」


そう答えることしか俺は出来なかった。


どうでもいいが、ヒル・・・おまえ、あんだけ言われてまだ、諦めてないのかよ・・・

言われただろうが・・・

二度と顔見せんなって・・・


もう、カオルは諦めろよ。

お前に無理だよ。


と、言いたかったが俺は命が惜しかったし、世界の平和を願っていたので言えなかった。

これは世界の平和の為にも本気でカオルには悪いが生贄になってもらうしかないな・・・でも、あっちも先ほどの腕前を見るにやっかいそうだが・・・


俺は今後のことを思うと遠い目をするしかなかった。


そんな俺を無常にも転移魔法の光が包んだ。

残念ストーカーは、この程度で諦めるわけがありません。

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