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たぶん異世界24日目 ~ヒルトの日記 1ページ目~

俺はこの大国ローシェンナの王太子。

現在、王城ではなく、首都より北の辺境地カナリーの傍にある森にいた。

なぜ、こんな辺境の地にいるかと言うと、ここ最近、この地で高位精霊だか魔獣らしきものが出現するようになり困っていると言う。もちろん、国として騎士団を派遣したのだが、全滅したのか、連絡が取れず、現状把握が出来ていない状態に。王太子として、軍の総帥としても真相を究明する為に、側近であるユージンと数名の騎士を連れて、こうして来たわけだ。


この森は元々、出現するモノ、精霊やら魔物やらがやたら強いと言う噂はどうやら本当らしい。

獣型魔族や魔物に数度遭遇したが、かなり強い。

残念ながら、派遣した騎士団の骸を先ほど発見してしまった。

そうして、発見した骸の検分をしている所に刺客が襲って来たのである。


恐らく、刺客を仕向けたのは王妃か兄あたりだろう。

毎度のことながら、良くやる。この程度ならかわいいもんだが。俺はこれでも強い。


ユージンや他の騎士達に指示を出しながら屠り考えに耽る。

表の世界はもちろん、身分と名を偽って入った裏の世界でも負け知らずの強さを誇る。


王子ではあると言うものあるが、色々なことに好奇心がある俺は自ら進んで色々なことを学んだ。そうしているうちに、表の世界だけの経験や知識では実践で役に立たないことに気付いた。政治にしろ戦にしろ。俺が欲しいのはどこにでも通用する実力。そこで、裏の世界での人脈作りと何よりも腕を磨く為に暇を見ては裏の世界で経験を積んだ。王子辞めたら、裏家業で生きていくのも良さそうだと思ったこともあった。そんな俺の努力は思ってもみないところで報われることになる。おかげで数年前の戦争では、その時の経験と人脈を使い攻め入って来た他国を圧勝。俺には白金(プラチナ)の死神と言う二つ名まで付いた。


俺は小さい時から、歴史あるローシェンナ王家の中でも一、二を争う力の持ち主でもあった為、上の兄を差し置いて最有力の王太子候補になっていた。本当はそんなものに、なりたくなかったが、俺は側室の子であるにも関わらず、正妻の子である兄が、甘やかされ撒くって育てられた所為で、そう強くもない力であるのに、女にしか興味がない放蕩馬鹿息子になってしまったからだ。


王である父は賢王と名が高かったが、長男の育成には失敗したようだ。


妃は正室と側室が数人。

俺の母親は俺を生んですぐに亡くなっている為、王の寵となるべく醜い女の争いを繰り広げる母親の姿を見なくてすんだが、女とは如何に恐ろしいかを後宮で小さい頃から学んだ。


上の兄とは半年ほどしか違わない所為で敵視されて仲が悪かったが、下にいる腹違いの二人の弟とは歳が離れてることもあり、懐いてくれたのでそれなりに可愛がっている。


ローシェンナの王位は血よりも実力主義で基本的には力あるものがなる。


俺には母親は亡いが、5大公爵家のひとつでもある母の実家の後ろ盾があったのと、王である父に母と同じく溺愛されて、特に不自由なく育った。


順番にいけば、正妻の子でもあり、長男である兄が王位を継ぐかと思ったが言わずもがなである。醜い争いを繰り広げることもなく、俺にお鉢が回って来てしまった。


二ヶ月程前に、王太子になることを国の内外に正式に通達。


名実共にローシェンナの時期王として決まった所為で、馬鹿息子を溺愛している王妃と当事者の馬鹿兄から暗殺者が息つく暇もなく送り込まれてくる。その対応だけでもうんざりなのに、降るような縁談が降る処か雪崩と化して押し寄せて来ている。


それまでは、正妻の子である兄に擦り寄るものも多かったが、王位が俺に決まってしまった為、方向転換せざるを得なくなり、彼らは俺とお近づきになろうと日々、躍起のようだ。


俺は氷の王子としても有名だったので男も女も直接、擦寄って来る勇気のあるヤツはごく少数。攻めあぐねているのだろう。周り曰く、無表情で絶対零度の空間を常に展開しており、冷酷非情と言われている。

特に女には冷たいらしく、男色の噂まで出る始末。俺の興味を引くような女がいないんだからしょうがない。それに、そんなもの言いたい奴には言わせておけばいいが。


この容姿のおかげで昔から女には不自由しないが、大した性欲も湧かず、自分で不能なのではないかと思うほどだ。が、この容姿と力と肩書きに惹かれて来るものは多かった。が、最近特に酷い。この国の時期、王と言う涎モノのブランドがプラスされたのだから、この状態はしょうがないと言えばしょうがないと言えよう。だが、俺と言う存在自体を見てくれるヒトはなかなかいない。俺の外側だけに擦り寄って来るものが日々増えればこちらも不機嫌になるのも仕方がない。

そんな日々に俺の不機嫌オーラは最大だった。


特に女は鬱陶しい。

歩けば、俺の邪魔をする。冷酷で氷の王子と名高い俺に捨て身で近づいて来るの者もいれば、俺を怖がっているくせに無理矢理親しくなろうとする者、俺をアクセサリーのように自分のステータスにしようとする者。自分を売り込むか、頭が軽いか、兎に角碌なのがいない。

まともな女もたまにいるが、面倒臭いかそういう対象に見えないのしかいない。


放っておいたら爆発しかねない、こんな俺の状態を見兼ねた側近のユージンが、ストレス解消にとこの話(カナリーの案件)を持って来た。


すぐさま、父に許可を取り、飛竜と愛馬を駆って、報告のあった森へ。


暫く捜索していると、派遣する騎士団の骸を発見。検分の最中に刺客に襲われた。

刺客は問題がなかったが、


ガァァァアアアアアッッッッ!!!!

大きな方向と共に獣らしきモノが複数襲って来た。

何だあれは・・・


禍々しい気配はするが、魔族とも違うようだ。初めて見るタイプだ。

動揺する騎士達に撤退指示を出しながら、部下の撤退を助ける為に剣を振るう。


「ルイス様っ!早く、お逃げを!」

「ユージン!いいから行け!お前らではあいつらの相手は無理だ。俺が殺る。お前らがいては俺の足手纏いだ。さっさと連れて行け。後に合流しよう!命令だ!」


「・・・わかりました!無茶しないで下さいよ!後で迎えに来ますからね!」

苦渋の表情でユージンは俺の命令に従い部下達を連れ戦闘区域を脱出する。


戦闘区域から離脱したのを確認し、俺は獣らしきものに向き直り、聖魔剣「レイティア」を構え直す。


この「レイティア」は由緒正しき、ローシェンナに伝わる宝剣らしい。

俺が7歳の時、城の倉庫で遊んでいたら、偶然、主に選ばれシロモノで何でも切れる。自分の力を使わずとも、魔法を纏って戦うことや、魔法や魔術防御壁を展開することも出来るうえに、何となくだが、意志も感じられる。手入れの必要もない素晴らしい剣だ。


その剣で屠っていくものの、いつの間にか獣型と植物型魔族に加えヒト型魔族まで複数現れた。

おいおい。こんな所になんでいるんだよ。しかも、単独行動が基本のヒト型が・・・どうなっている?


まぁ、おもしろいからいいが


「これはこれは。変わった気配がすると思ったら、旨そうな神族がいる。お前を喰らえば、我らの力が増すかのう」


「これだけ力に溢れるモノ。喰らわばかなりの力が得られそうだな」


「この人数で掛かれば殺れるのでは?」


「フフ。試してみようか?」


「甚振るのも、また、一興」


そう言って、奴らは結界を張った。


キィィィィイイイインンンン


「!」

絶対領域結界!しかも、13人全員で張りやがった!

4,5人なら力にモノ言わせて破ってやるのに。


絶対領域結界とは、対象者を擬似的な異空間に隔離し、術者が自分の意志以外で解く以外は術者本人を殺すか重症に追い込まなければならない。また、術者の意志で解除すればその擬似空間で起こった破損等はなかったことになるが、術者の意志以外での解除となれば、その空間での事象は現実の空間にも反映される。ここは、森の最深部に近い場所。どんなに被害が出ても構うものか。


皆殺しにしてやる。

そうだ。せっかく、面白いことになったのだ、なるべく剣技だけでどこまでいけるか試してみようか。


獣らしきモノは粗方カタがついた。次はヒト型魔族だ。


ガッ!


キンキンキン

ゴォォオオオオオッォォォォッ


ザシュッ


魔法と魔術はもちろん、魔族たちが連携して次々と俺を襲う。

さすがヒト型魔族。今までの獣らしきものとは格段の差がある。

俺も剣を振るって応戦する。唯一の救いは最上級クラスじゃなかったことか。



首を飛ばし、急所を一突きしながら、回し蹴りで近場にいたヤツの頭を潰し、相手の魔法の発動を誘い、一瞬油断したヤツを襲って来た火炎系の魔法をそちらに反射して消し炭にする。


気が付けば、辺り一面、地獄のような様相で、俺自信も血塗れになった。


最後の1人を肉の塊に変えるとさすがの俺も意識が朦朧としてきた。

倒したヤツの中に毒を持っているヤツがいたのか、さっき打った頭の当たり所が悪かったのか。

このまま死んでもいいかと、頭の片隅で思ったこともあって避けられる攻撃も急所じゃなければ避けず、魔法と魔術を使わずにどこまで剣技だけでいけるかと限界まで試したのも良くなかったのかもしれない。

剣技でここまで出来れば上等だな。面白かったし。


ヒト型魔族と獣みたいのと他にも何がなんだかわからないが、久々にこんな激しい戦闘をした。

気分はなかなか悪くない。が、身体が思うように動かない。


俺は唯一、治癒系魔法が使えないので、仲間の助けを待つしかない。

仲間が来たところで、助かるかはわからんが。

治癒系の術士は数自体が少ないからな。軍でも数人、国のお抱えでも少数だ。

そんなことはどうでもいいか・・・


しかし、確かここは獣型や植物型の魔族、獣も多数生息すると言う報告があった。こんな、奴らの泣いて喜びそうな餌がゴロゴロしてる真っ只中にいたら、俺も餌になってしまう。朦朧とする意識の中で、そんなことを考え、何とか転移した。この退屈で何の面白みもない日常が続くなら、ここで生を終えてもいいかと思った。


しかし、世界は俺を見捨ててはいなかった。


この後、俺は、世の中、捨てたもんじゃないと思えることになる。

俺の人生において素晴らしい出会いが、唯一無二の存在との出逢いが待っていたのだから。

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