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たぶん異世界24日目 2ページ目

生ゴミ男がこちらを見た。

恐らく、目覚めたばかりと言うこともあって現状を把握出来ていないのと、私が傍らに正座しているのでその存在の確認だろう。初めは焦点が定まらず、何となくこちらを見ていた瞳が、意識の覚醒とともに眼光も鋭く変化していく。


ぉおぅっ。なかなかいい瞳をしていますね。

これは戦場と言うか修羅場を潜り抜けて来た瞳ですねぇ。

どうしましょうね。とりあえず、挨拶でもしておきますか。

挨拶しようとしたら、ゆっきーが一言。


『この者は、挨拶ではなく、他の言葉を期待してるのではないか?』


でも、ゆっきー、挨拶は基本中の基本です。挨拶出来ないヤツはヒトとしての存在価値はないのです。誰が何と言おうとそうなんです。一般社会の常識なんです!こっちの常識知らないから私の知ってる常識が基準です。と、いうことで挨拶は非常に大事です。わかった?ゆっきー


『わかった。我も挨拶は最重要項目としよう』


偉いよ。ゆっきー。

心話で会話してるので、心の声でゆっきーを褒める。とかなり嬉しそうにした。

ゆっきーや。最強の龍って言われてるのに、私に褒められたくらいでバックにお花がとんじゃってるよ。カワイイなぁ。もちろん、ゆっきーは、私以外に姿が見えません。継続中です。

って、挨拶!挨拶!


「おはようございます」


「・・・おはよう」


重症だった所為なのか、寝起きの所為なのかはわかりませが、掠れていますけど、なかなか聞き取り安い声で返事が返って来ました。どうやらヒトとしての最低限のラインはクリアしてるようです。良かった。これでまともな挨拶のひとつも返って来なかったら吹っ飛ばしてるところでした。


さて、どうしましょう。

・・・考えるのも面倒臭くなって来ましたね。

!いい案が浮かんだ。


「お身体の具合は如何ですか?」

と、OLで培った営業スマイルを全開に、感じ良く聞こえるよう、声も心持ワントーン高くし、問いかける。


生ゴミ男は自分の身体を確認すると


「あぁ。すっかり良くなってるようだ。あんなに酷い状態だったのに。これは貴女が手当てして下さったのか?」


生ゴミ男の言葉を受けて確認する。


「えぇ。動くには問題ないですね?」


「あぁ。大丈夫なようだ」


「そうですか。それは良かったです。では、これで私は失礼させて頂きます」


と、言って私はその場を去ろうと立ち上がった。

ほら、余計なこと聞いたりすると、後々、面倒だから手っ取り早くフラグへし折るには、ここはひとつ、なかったことにするのが一番!話してる感じでやっかいさが3倍増しました。私の勘で。

こう言う時に大事なのは素早い行動です。


生ゴミ男はそんな私の言動と行動に驚いたらしく、唖然としたようだが、それも一瞬で、去って行こうとする私の手を急いで掴んで声を掛けて来た。


「待って貰えないだろうか?!」


本当は掴む手くらい簡単に避けたり、振り払ったり出来るんですけど、先ほどまで重症だったヒトに対しては優しく接してあげる。私も鬼ではないのですよ。


「なんでしょう?」


「名前を名乗らせて貰えませんか?貴女のお名前も伺いたい。そして、お礼をさせて頂きたいのだが・・・貴女の時間を少しでいいので私に頂けないだろうか?」


と、生ゴミ男は早口に話す。私がさっさとその場を去ろうとした所為もあり、何となく早口になってしまったのかもしれない。その言い方は合格ですね。とまるでどこぞの就職試験の面接官のようなことを思いながら、にっこり笑って生ゴミ男に返す。


「お礼などは望んでおりませんので、結構です。貴方が気になさる必要はありません。私は偶然、貴方を見つけ、怪我をしているようでしたので、私の勝手で手当てをさせて頂いたのです。それに、私はきのこ狩りに来ただけの、ただの一般市民。危険なことに巻き込まれる可能性があるものは極力回避したいのです。ですから、私のことはなかったと思って頂けないでしょうか?」


本当はおバカな街娘のフリをしたかったが、ここは危険と噂の森の最深部。

どう考えても、そんな頭の軽そうなお嬢さんがうろちょろしてるなんて無理がありますよね。


で、考えた設定が通りすがりのきのこ狩りのお嬢さん。

きのこ狩りに来たのは本当だしね。うん。幻のきのこを求めて世界中を旅してることにしよう。うん。うん。やっぱり、それがいい。と言うようなことを、一瞬で考えてOL時代に培った経験をフル活用しての対応をする。


『・・・』


ゆっきーさんや何か言いたいことでも?


『いや。我は主に従う・・・』


・・・なんか、今、イラっと来た気がするけど気のせいにしておこう。うん。平和が一番だよね。とか何とかいつもの如くゆっきーと心話で会話してる時に(もちろん、顔は男の方を向いて心話してるのを微塵も気取らせないようにしてますよ)生ゴミ男が返して来た。


「貴女は面白い方のようだ。そのようなことは言わずにぜひ、貴女の時間を頂けないか?ここで出会ったのも何かの縁。もしも、危険なことになったら、その時は私が護る。治して貰ったおかげで問題なく動けそうだ。こう見えても、私は結構強い。だから、少しでいいから、私と話して貰えないだろうか?」


・・・ヒトの言った事聞いてんのかよ?って言う返しして来ましたよ。

建前抜くと、お前は危険人物臭いから近寄ってくんなボケと言ってるのに。

こちらが言ってることをわかっててなおかつ、食い下がって来てる気がする・・・面倒くさっ。

しかも、腕に自信ありってか?まぁ、自信過剰じゃないことがわかって言い返せないあたりが悔しいですがしょうがない。


ゆっきーにしろティアにしろ、どうしてこっちの世界は面倒臭いのが多いんですか?それとも、食い下がるのがデフォルトなんですか?このまま去りたいけど、追っかけられても面倒臭そうだしな・・・しょうがない・・・どっちに転んでも嫌な予感しかしないが付き合うことにした。


「わかりました。暗くなって参りましたし、お腹も空いて来たと思います。お食事をご用意させて頂こうと思いますが如何でしょう?出来れば、お食事しながらお話したいと思いますが。貴方もお腹が空いたのではありませんか?」


「ありがとう。私の名はルイス・ヒルト・アデレイド・ヘルガ・ロクサーナ・グラディウス・ローシェンナ。ヒルトと呼んで欲しい。是非、ご好意に甘えさせて頂きたい。貴女の名は?」


・・・クレイの所でやっかいになっていた時に、この国について学んだ中にローシェンナを名乗れるのは直系の王族のみって記述がなかっただろうか・・・。


はっはっは。


王族なんてあんまり関わることないだろうしと思って飛ばしたんだよね。


今度時間有る時にでも、ぼちぼちゆっくりと学べばいいかなと思って。生活に関わりそうな優先順位の高いところから詰め込んだんだよ。数日でやるなら厳選して勉強しないとね。って、また脱線してしまった・・・。


もう、気の所為ってことで深く考えるのよそう。うん。


迷い人だからって言って、色々と知らないフリしよう。それがいいね。

やっぱり、私の勘が当たったよ!厄介事だったよ!しかも厄介レベルまっくすだよ!

はっはっは。がっくりしすぎて涙もちょちょぎれる・・・ここはひとつ、役に立たないごくごく普通のきのこ狩りの旅人のフリをしよう。うん。


「私はカオル・トウドウ。カオルとお呼び下さい」


「それから、敬語は辞めて貰えないだろうか?私も貴女とはもっと・・・何と言っていいのだろうか。気安い感じになってしまうが、本来の普通の話方でお互い話をしたいがいいだろうか?」


「わかりました。じゃあ、それで」


「ありがとう」


私がそう言うとヒルトは嬉しそうに笑顔で言った。


落ち着いた所為か、彼は自分の状態を今一度確認して、自分のあまりの様子に身支度を整えたいがいいかと聞いてきたので了承する。


綺麗になったヒルトは印象がかなり変わった。


さすが王族だか貴族だかのお偉いさんで聖魔剣の使い手。魔法で身体の汚れを取り去り、破れた衣服も一瞬で復元した。これは仕立て屋の商売あがったりだね。この様子だとイメージするだけで私と同様、服も作れるね。きっと。これは予想通り、魔法も魔術もかなり使えますねぇ。ますます一度手合わせしたい・・・お礼はいっそ手合わせでお願いしますってね。そんなことして平穏な生活が遠のいたら目も当てられないので我慢しますが。ちょっと、本気だったりもします。


ヒルトの髪は瞳と一緒の白金(プラチナ)でした。


細心だが、しっかりと引き締まった体付きのわりに大理石のような色白。浅黒かと思ってたら汚れてただけだったのね。背も思った通りかなり高かった。私と頭二つ分近くは違うので2メートルくらいあるのでは?あぁ、こっちの単位だと、2ゼクスだっけ?まぁ、いいや。衣服も復元されたら、かなり良さそうなものでした。真っ黒な生地に瞳と同じ白金で上品な刺繍が施されている。先ほどまで剥き出しだった聖魔剣は趣味の良い質素だが高そうな鞘に収められている。


本当、汚れ落すと印象がかなり違いますねぇ。生ゴミに見えないのは間違いないです。



それから私はテキパキと夕食の用意をする。火を使って、大量に採った黄金茸のきのこ焼きとついでに採った山菜で汁を。プラスその辺に生っていた果物で夕食を用意。もちろん、超簡単な魔法以外は使わない。ヒルトがいるからね。


ヒルトは私の食事の準備を手伝ってくれながら、色々と話し掛けて来た。

簡単な自己紹介から始まり、話題は他愛もない話へ。


そこそこ楽しく話していると、複数の気配を感じた。

ヒルトに気取られないように確認しようとするとゆっきーが教えてくれた。


『その男を捜しているようだ。獣型の魔族もいるようだな。数もまぁまぁだな』


どうしようか。

ヒルトがまだ気付いてない気配を察知してトンズラしたら、通りすがりのきのこ狩りなただの一般人を貫き通すのは難しいよね。しかも、この男、ことある事になぜかしばらく一緒にいないかと煩い。


一応、迷い人だからと断ったら、それなら、しばらくお礼も兼ねて自分のところに滞在しないかと言ってくる。内容同じじゃないですかね?なかなか根性あるんだか、根気があるんだかわかりませんが諦めない。


いい加減、しつこい男は嫌われるよ!って言ったら、ますます、ここで粘らないとカオルは二度と俺に会ってくれないだろう?と言って来る始末。


当たり前だよね。そんな厄介まっくすレベルに自分から誰が近づきますかってね。

しかも、そんなこと言われる程、私たち親しくないですよね?

って言って拒絶したいけれど、ヤツめ。頭が回るらしく常識の範囲内でこちらがきっぱり断れないように会話を持って行こうとする。


そんな攻防がずぅっっっっっっっと続いてます。

正直疲れます。


そんな中での怪しい気配。

やったね!このドサクサに紛れて追っかけられて、逃げるフリして上手いこと撒いてしまおう。

名案ですね。


ハイ!このまま、追手だか敵だか待ちます!カモ~ン!

ウキウキしながら待ちます。


早く来い!敵!

いいから来い!さっさと来い!

今すぐ来い!って、心から思っていました。






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