第五話 気づきとダイエットとヤキモチと…
テストが終わり、とりあえず一安心です。そんな訳で勉強会の時と同じポジションで食堂の席に座り、昼ご飯を食べているのですが…。
「もうちょっと量を減らしたらどうだ?太るぞ」
「太らない体質なんですー。それよりお前こそサンドイッチ三・四個って…」
「お前って言うの止めろ」
「じゃあ、もやしっ子」
秋と冬音の二人は、睨み合いながら口論をしている。昼ご飯をちゃんと食べながら…。
前は、秋が冬音を好きなんじゃないかと思ったけど…なんかこの雰囲気だと有り得ない…今更だけど。
「ほら、春香を見ろ!量が少なめだからこんなに細い!」
「春香が細いって…まるで私が太いみたいじゃない!」
「…フッ…太いだろ?」
「鼻で笑ったー!こいつ、鼻で笑ったよ!春香」
どうしよう…話題があたしにまで及んでいる…。とりあえず、何か言おう!言ってから考えよう!
「ふ…冬音は、痩せてる方だよ」
「春香は、余裕だからそんな事言えるんですよ…ハハハ」
あれー?なんかネガティブな方向へ?もしや、さっきのは黙っているが正解だったのか!でも言わなかったら言わなかったで何か言われそう…。
「こうなったら私は、これから断食する!」
「それ、絶対死んじゃうよ!止めなよ!」
「止めるな!私の心が揺らいでしまう…」
「揺らせる為に言ってるんだよ。止めてよ」
案の定、冬音は、次の日の朝にフラフラになりながら学校へと来た。
「大丈夫?」
夏騎が冬音の傍に行き、そう声を掛けているのが聞こえた。あたし達と別のクラスなのに夏騎は、わざわざ冬音を心配して来てくれたらしい。
「大丈夫…心配してくれてありがと…」
「そっか…じゃあまた後で見に来るから」
冬音に微笑みかけてから夏騎は、自分のクラスへと戻って行った。冬音は、ずっと夏騎の後姿を廊下に出てまで眺めていた。
これは、最近気づいた事だけれど、冬音は夏騎が好きなんじゃないかと思う。いや、絶対にそう!女の勘って奴かな?
《サイエンス部が幻覚水を発明しました。サイエンス部が幻覚水を持っているので廊下を歩く方は、ご注意下さい》
そんな校内放送が流れた後にあたしは、冬音が居ない事に気づいた。
どこに行ったんだろう?そう思っていると廊下で誰かがぶつかる音と何かが割れる音が聞こえた。
嫌な予感がしながら、あたしは廊下に出て見て見る。
すると、そこには綺麗な桃色をした水…………を被っている冬音がいた。そして冬音と反対の方向にサイエンス部員がいた。
もしかして、さっきの放送で言ってた幻覚水を持ったサイエンス部と冬音がぶつかって、幻覚水を冬音が被ってしまってこの状態にいたるのでは?
なんかそれっぽい!あたし探偵の才能あるかも!
「一体どうしたんだ?」
「春香、大丈夫?」
秋と夏騎も騒ぎに気づいて廊下へ出てきた。今頃ですが、この学校の廊下は広いです。大きな窓も廊下の端に付いています。高所恐怖症の人には、辛い位置にある窓です。
「あたしは、大丈夫だけど冬音がさっきの放送の水を……」
「飲んだのか?まさかそこまでバカだとは…」
「違うよ。さすがに冬音は、そこまでバカではないよ」
あたしは、とりあえず冬音を抱き起こした。そして呆然と座っている部員を見た。
「幻覚水って被ると、どうなるの?」
「さあ?香水を付ける位の量しか想定してなかったので」
「能無しが…冬音がこんな状態なのに!」
「春香、落ち着いて」
そう夏騎に言われて、あたしはもう一度聞き直した。
「その香水付ける位の量だと、どうなの?」
「自分の今、望んでいるものが見えます。この人が被った量だと…小一時間もすれば戻りますよ?」
冬音が今、望んでいるのは食べ物…かな。それか夏騎か…。あたしも少し欲しい…。
「それにしても綺麗な桃色だね?」
「男性でも使いやすいようにと思って…」
「逆に使いにくいと思うよ…桃色だよ?ピンクだよ?」
冬音は、保健室に寝かせて置き、放課後になってから様子を見に行く事になった。
「あれ?松永さんは?いつも帰り一緒だよね?」
他のクラスの女子が教室を見回しながらあたしに言って来た。
「えっ?うん、そうだけど貴方は?」
「ああ、私の名前は本井桜!季野君達と同じクラスだよ。よろしく」
「よろしく。あたし、これから保健室に行くの」
あたしがそう言うと本井さんは、驚いた顔をして聞いてきた。
「具合悪いの?」
「そうじゃなくて…ほら校内放送で言ってた水が冬音にかかっちゃって…だからこれから様子を見に行く所なの」
「そうなんだ…私も様子見に行っていい?松永さんとは前から話してみたかったの」
「いいよ」
あたしと本井さんは、話をしながら保健室へと向かった。でも、これから本井さんの意外な関係を知る事になるなんて思いもしなかった…。
保健室のドアをノックしてから開けると先生は、何かの用事でいないらしかった。
代わりに秋と夏騎がいた。冬音は……布団に包まっている。
「遅かったな」
「うん。そうだ!あたしの他にさっき知り合った子が来てて…」
本井さんの姿を見た途端、秋の表情が強張った。あたしが首を傾げている間に本井さんが話し始める。
「こうしてちゃんと話すのなんて…久しぶりだね?」
「…そうだな」
「あの…えっと…知り合い?」
「私と秋は、前に付き合ってたの」
この言葉を聞いた瞬間、あたしの頭の中でこの言葉が繰り返された。
「付き合ってたって…?」
「その言葉通りの事。もう別れたけど、私はまだ未練がある」
本井さんは、そう言って秋の腕に自分の腕を絡ませた。
「離し…「離しなよ」
さっきまで布団に包まってた冬音が立って本井さんの腕を掴んだ。
「なんで?」
「人の恋心分かっててそう言う事するのは…私は好きじゃない。からかいたい気持ちは分かるけど」
「…っ!そうだね…」
なんか冬音、かっこいいけど…あたしをからかいたい気持ち分かっちゃうんだ…。それさえなければ良い感じなんだけど…。
「ねえ?夏騎君…私と付き合わない?」
それを聞いて、さっきまで余裕だった冬音が慌て始める。あたしは、冬音の代わりに本井さんに聞いてみた。
「どうして夏騎なの?」
「だって秋は、ダメでも夏騎君なら良いんじゃない?ね?」
「季野くんにするならこいつをあげるよ」
冬音が秋を本井さんの前に出す。
「ダメ。友人とどっちが大事?」
「………チッ」
「松永…お前恐ろしい奴だな」
冬音に解放された秋は、冬音と間合いを取っている。
「どう?夏騎くん」
「じゃあ…いいよ」
そう夏騎が答えた後、二人は保健室を出て行った。
「……冬音、大丈……冬音?」
今の返事のショックで冬音が倒れたと思い、近づいてみると…ただ眠ってしまっただけだった。
「良いタイミングで眠ったね…」
あたしは、眠っている冬音にそう言ってから溜息を吐いた。
続く…!




