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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心(友人・親友)編
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第六十四話 掠れ声と昼食とお弁当と 桜side

その日は朝から妙だった。春香が尋常じゃないほど私を見つめてくる。冬音ちゃんは冬音ちゃんで何だか上の空。


冠凪さんは唯一いつも通りで強いて言えば嬉しそうにしていたぐらいだった。手始めにまず、春香から聞いてみる事にした。


「何よ」


「…桜、本当にお兄ちゃんの事好きなの?」


「…っ!!」


顔が熱い、ただ彼の話題が出ただけで…。しかも真顔で逆に聞かれたもんだから焦った。春香は私に詰め寄ってくる。


「どうなの?」


「い、言わす!?ここで!」


「あー、なるほどね。うんうん(好きな人の前でしか言いたくないって事だね)」


何を勝手に解釈したのか、腕を組んで頷いている。組んだ腕を解くと春香は何処かへ行ってしまい、次に冠凪さんを見る。


「何かあったの?昨日」


「あ、桜さん!おはようございます、実は夏騎君と話せたんですよ」


「良かったわね」


「はい!!」


満面の笑みを浮かべて冠凪さんはスキップしそうな勢いで四組へと戻って行った。しばらく、その後ろ姿を見てから、最後の一人を見る。


こちらはなんとなく原因は分かっているけれど、本人がいやに頑固なので触れていいか迷う。絶対なんでもないって言うわ、この子。


しかし、話しかけない訳にはいかない。つくづく私はお節介だと思う。今こうして、ボンヤリとしている冬音ちゃんを放って置けない。


「ちょっと」


頭をくしゃりと撫でながら、私は冬音ちゃんに声をかけた。少しして聞こえてきたのは掠れた声。


「何?」


「声、どうかした?」


「ああ、少し風邪気味でさ。けど大丈夫だから」


喉に手をやりながら冬音ちゃんは笑った。で、それよりと切り出す。大方の見当はついていたので、その為の心構えをする。


「雪さんとは話したの?」


「…放課後よ、放課後」


「昼休みに教室までとか、積極性はないわけ?」


「ないわね、放課後会うだけマシよ」


そう言ってやると冬音ちゃんが声を出さずに笑った。一応、喉を気にしているらしかった。少しは元気が出たのならいいんだけど…。


「ほら、さっさと自分の教室戻ったら?」


「はいはい」


時計を見ると、まだ余裕があったけれど遅れてしまってもいけないので私は素直に戻る事にした。



昼休み。三組の教室にて、お弁当を食べていた。冬音ちゃんは購買のパンだったけれど。


「たまには、お弁当にしなよ?いっつもパンじゃん」


春香が箸を一旦止めて、眉をひそめながら言った。しかし、冬音ちゃんはひょうひょうとした様子。


「美味しければいいんだよ」


「んな訳ないでしょ!?栄養偏るよって言ってんの」


「お母さんみたいな事、言う」


へらへらと笑って冬音ちゃんはパンを口に運んだ。けれど、確かに栄養偏るかも…。


「そうだ、夏騎に作ってもらえば?」


「ぶっ」


「桜!?どうしたの急に吹いたりして」


昨日の今日で…しかも分かってないとはいえ…なんて爆弾発言したの!?吹いてしまった飲み物を私と一緒に拭きながら、春香が言う。


「夏騎、料理上手いからいいと思ったんだけど」


「別にダメって訳じゃないのよ」


「じゃあ「良いって良いって」


春香の言葉を遮って、冬音ちゃんが言った。遮られた春香はきょとんとした顔をしている。


「えー?なんで?」


「手間かけさせちゃ悪いし…逆に冠凪さんが夏騎君に弁当作ってあげたら?」


「え?え?私ですか?」


「なんでそうなるのよ」


すると春香もハッとして、冬音ちゃんに同意した。昨日の話から察するに冠凪さんの後押しの一つらしい。


「夏騎、一回冠凪さんのお弁当食べてみてよ」


「…いいの?」


「あ…はい!はい!いいです!」


とてつもなく嬉しそうな冠凪さんをまるで何かをやりとげた時のように清々しい顔をした春香が見ていた。冬音ちゃんも笑っている。


「ところでさ」


春香が気づいたように言った。冠凪さんも春香の声に耳を傾けている。チラチラと夏騎君を見ては、いるけど。


「冬音、声掠れてない?」


「ああ、風邪気味」


私の時と同様に喉に手をやり笑う。春香は心配そうに冬音ちゃんと話していた。それよりも私の目を惹いたのは冠凪さんと夏騎君だった。


やっぱり、冬音ちゃんの想いは届かず終わってしまうのだろうか。私は席を立った、春香が気づいて聞いてくる。


「どうしたの?」


「秋君と話があるの、いいかしら?」


「あ…ああ」


断れぬよう重圧をかけ、私は教室を出た。少し行った所で止まる。


「どう?夏騎君」


「何がだ」


「冠凪さんに惹かれてるのかしら?それとも、まだ春香に心残りが?」


「さあな、あいつ表にめったに出さないから。知ろうにも分からない」


溜め息をついて、どうしようもなさそうにしている秋君を見ながら私は言った。


「どこまでもお節介なのよね、私。放って置けなかったわ」


「松永次第だろ、お節介しても。それに本井自身はどうなんだ?春香の兄さん」


「あなたまで同じ事を!!放課後に会うわよ!!」


「どうした、急に怒って」


「なんでもないわよ!」


私はキレながら教室に戻った。戻って来た私達に冬音ちゃんが言った。


「桜を怒らすって命知らずだね、秋。すごいね」


(……天然?)


結局、私は放課後に雪さんに会って、この話をして笑われたのは次のお話…。



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