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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心(友人・親友)編
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第六十話 ドッキリ騒動

周りの視線が痛い。あたしは顔をひきつらせながら目の前の人物をみた。


「本当、ごめん!」


「いいから、いいからお願い!顔あげて!」


土下座している冬音にあたしは必死にお願いをした。朝、突然教室の前で土下座された。


聞いてみると勉強会のあった日、あたしの家で食事をしていた際に茶碗を割ってしまったそうだ…あたしの。


けれど土下座の引き金はそれじゃなかった。何の気なしに言った、あたしのこの一言。


「けど、よく人の物を割っておいて平然と食事出来てたよね」


よく知らないが罪悪感がこの言葉によって、こみ上げてきたらしい。


「やめてよ、これじゃ…あたしが悪い事したみたいじゃん!」


「朝から何してるんですか?」


若干引き気味に冠凪さんが聞いてきた。まだ鞄を持っているので来たばかりらしい。


「冬音があたしの茶碗割ったの、今頃言ってきて土下座してきたんだよ」


「そうなんですか?…けど茶碗って」


「休日によくご飯食べに来るから」


「ああ、なるほど」


「だから、もういいって言ってんのに…」


あたしは、うんざりしながら溜め息を吐いた。冠凪さんがしゃがんで冬音の背中を擦る。


「そこまでにしておいた方がいいんじゃないですか?」


「え?」


クスクスと笑う冠凪さんを思わず見る。混乱するあたしを他所に冬音は苦笑いを浮かべて立ち上がった。


「え?え?」


「からかわれたんですよ」


「昨日ドッキリの番組観てさ、試して見たかったんだよね」


「え?つまり…」


「茶碗は割ってないよ、割ったら言うよ」


先程までとは、うってかわって冬音がいつもの調子で言った。


「…………」


「あれ?春香さん?」


「おーい、ああ駄目だ」


つまり何か?あたしは冬音に騙されたって事?ドッキリ番組観たせいで?……マジか。


「どうします?全く聞こえてないみたいですけど…」


「これにはコツがあるんだよ、まあ冠凪さんはそこで見てて」


なんであたしが冬音のドッキリの為に周りからの視線を痛いほど貰わなきゃいけなかったの?てか、周りの人は協力者じゃないよね、絶対。


「あっ、秋が知らない女性と楽しそうに手を繋ぎながら歩いてる」


そもそも茶碗の時点で気づこうよ自分!!そこからもう……ん?秋が……え?


「浮気!?」


「おー、戻ってきた」


「美人?ねぇ、その人美人?」


「嘘だよ嘘。春香、黙っちゃうから」


「……悪質だ」


「あ……」


冠凪さんが声をあげて何かを見ていた。頬を染めながら…って事は。


「おはようって朝からどうかした?」


「夏騎君、おはようございます」


「私のドッキリが朝から冴え渡ったのさ」


「こっちはいい迷惑だけどね」


「朝から楽しそうでいいね、それじゃ」


そう言い残して去って行った夏騎を見る冠凪さん……をニヤニヤしながら見るあたし達。


「良かったね、朝から夏騎君に会えて」


「はい」


「けど秋がいなかったね」


「あいつに限って遅刻はないだろうし…」


うーんと三人で首を傾げながら唸っていると肩を叩かれ振り替える。


「おはよ、何三人で唸ってるのよ」


「おはよー、ちょっと秋がまだ来てなくて…」


「それで何でか考えてるんだよ、どうでもいいけど気になる」


「何よ、それ」


一緒に考える気がなかったのか、そのまま桜は教室に入って行ってしまった。


「あ、私もそろそろ…」


「うん、またね」


「はい」


次に冠凪さんが抜け、あたし達も教室に入る事にした。席につき頬杖をつきながら考えていたが分かりそうにもなかった。


それから放課後になっても秋は学校にやって来なかった。現在、いつものメンバーで一組の教室に集まっている。


「おかしいわね」


腕を組み、桜は全員の思っているであろう事を代表するように言った。


「秋に何かあったとか?」


「家を出るときは普通だったけど……」


「じゃあ、そのあとって事?」


興味がなさそうに冬音が言った。本当、秋に対しての好意0だな、逆に悪意あるよ。


「とりあえず家に行ってみたら?いるかもよ」


冬音のその一言によって、あたし達は季野家へとやって来た。出迎えてくれた和服美人な秋達のお母さんに聞いてみると…。


「ええ、いますよ。今は上で休んでて…」


「どこか悪いんですか?」


心配になってあたしは聞いたが、首を横に振られた。冬音と顔を見合わす。


「それがね、熱もなにもないし体調にも問題ないんだけど……」


「会わせてもらっても?」


「どうぞ」


あたしは急いで秋のいる部屋を夏騎から教えてもらいノックした。中から秋の声が聞こえた。


ドアをゆっくりと引いて開けてみると…制服のままでドッキリと書かれた紙を持つ秋がいた。


「?」


「ドッキリ大成功か?昨日観たドッキリ番組よりはインパクトないが…」


「あんたもか!!!」


今日のあたしは何なんだろう。冬音にならまだしも秋にまでドッキリを仕掛けられるとは。冬音達があたしの声を聞き付けてやって来る。


「どうしまし…え?」


「秋、あなた学校に来なかったのはコレの為?」


「いや、学校には行った。ただ見つからないようにしてただけだ」


「それ、結構すごいことよ」


呆れたような感心したような様子で桜が言った。あたしもスゴいと思ったもんなー。


「にしても冬音と秋の思考回路って意外と似てるのかな?やってる事、同じだし」


「うわー、やめてよ勘弁してよ」


「こっちこそ勘弁してほしいな」


同族嫌悪じゃないか?これ。似てるからこそっていう……けど。


(体調が悪いわけじゃなくて良かった)


あたしはコッソリと心の中でホッとした。



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