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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心(友人・親友)編
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第四十八話 怪しい二人① 冬音side

最近、妙に夏騎君が私に構って来る。そしてかならずと言って良いほどお菓子を進めてくる。別に構わないのだけれど……彼が構って来るのは私の隣に春香がいる時…。


私と会話をしながら夏騎君はチラッと時々春香を見ていた。いや…もう春香気に食わないが彼氏がいるし、もう諦めているものだとずっと思っていた。


そして、今は放課後で夏騎君が私にお菓子を渡して去った後だった。


「冬音、良かったね?またお菓子もらって」


「私は子供か!!」


それにしても…春香も気づかないのか…。まあ、私じゃないから分からないだろうけど、春香がいる時にいつも来るのだから…ちょっとは気づいても……。


そんな事を言ったら春香は困ってしまうだろうから言わないけれど…。春香に気づかれないように小さく溜息を吐くと、前から桜さんが歩いて来た。


「ありがとう!」


私のすぐ前まで来ると桜さんはいきなりそう言って来た。春香に言っているのかと思えば、桜さんが見ているのは私……。


「え?」


「だから、冬音ちゃんが春香と一緒にいてくれてありがとうって言ってるのよ」


「なんで?」


「まず夏騎君がよく構って来るのよ…特に話もないのに声かけて来るもんだから……そして、春香の惚気話を聞かなくて済むわ」


「ああ…」


後者の言葉に私はつい納得してしまった。秋と付き合ってからと言うものの、春香は思い出したように惚気話をし始める。いっそ、そのまま忘れたままでいてくれれば……。


「え?何?何?」


「春香は知らなくていいのよ。じゃあ、しばらくは頼んだわよ」


私の肩に手を置いてから桜さんはそのまま廊下を歩いて行った。しばらくって……しばらくの間、私は耐えなければいけないのか……。


「何?何なの?桜、何を頼んだの?」


「春香は知らなくていいんだよ」


桜さんと同じ言葉を言ってから、私達はまた歩き出した。現在私達が向かっているのはサイエンス部。なんでも、春香は確かめたい事があるらしい。


サイエンス部に着くと、春香が深呼吸をしてから部室のドアをノックした。少しして、中から「はい」と言う声が聞こえて来たので春香がドアを開ける。


私は思わず顔を強張らせ、一歩後ろに下がる。衝撃的な出会いの所為か、私はあの人…春香の兄が苦手だ。


「やあ、春香に松永さん」


「ちょっと確かめたい事があって…」


春香はそう切り出して手近にあった椅子に腰掛けた。そこに春香が座ったとき、少し思いに耽るようにしてから彼も前にあった椅子に腰掛けた。私はいつでも逃げられるように立っている。


「あのさ……無理…してるよね?あたし、鈍いから気づかなくて…」


「?」


彼は首を傾げて春香を見つめる。恋も鈍いって自覚してくれればいいんだけど…と私は内心溜息を吐いた。


「もう無理して明るく振舞わなくていいよ?あたしね、毎日が楽しくって…お兄ちゃんがいなくても…もう笑えるの…楽しいの」


「春香……」


「今までありがとう。これからは無理して明るくしなくていいよ?完全からぶってて見ててイタタタタってなるから」


「ハハッそんなにイタイ?」


「うん!イタイ!んじゃ…違和感が何なのか分かったから帰るね?」


春香は椅子から立ち上がり、満面の笑みを浮かべて私の横を通り過ぎて行った。通り過ぎて行った?……置いてかれた!?私が慌てて春香を追いかけようとすると、後ろから彼の声が聞こえた。


「初めて会った時はごめんね」


「え……あっ…いえ…」


いつもの痛々しい感じとは違い、年上…と言う感じのする雪先輩に戸惑ったけれど、私はきちんと向き直った。


「もう、気にしてません!だから…これからもいいお兄さんでいてあげてください」


雪先輩は小さく笑ってから手を振った。私は会釈してから春香の後を追った。


春香が見つかったのは一組の教室、自分の席でうつ伏せになっていた。私は寝ているのかと思い、揺すってみる。


「…ん……あっ…冬音!?ごめんねー置いて行っちゃって!違和感の謎がようやく解けたから」


「いや、それは別にいいよ」


「あれ?春香さんと冬音さん」


教室のドア付近から教室内を見回している冠凪さんが私達の名前を呼んだ。首を傾げながら春香が近づいて行く。


「どうしたの?あたし達に用事?」


「はい…本井さんを見かけませんでしたか?」


「桜?いないの?」


「そこら中探したんですけど見当たらなくて…あと、探していないのは部室です」


部室、と言う言葉を聞いて私と春香は顔を見合わせた。それから冠凪さんに顔を戻す。


「部室に…お兄ちゃんがいる」


「怪しい二人ですね!!」


「なんで冠凪さんテンション上がってるの!?でも…あたしも気になる…」


「見に行って見ましょうか?」


かなりテンションの上がり始めた二人は勢いに任せて教室を飛び出して行った。今の会話からして、向かったのは部室。


一人置いていかれてしまった私は溜息を吐いてから、マイペースで二人の後を追いかけて部室へと向かった――――――…。





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