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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心(友人・親友)編
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第四十五話 お料理教室①

やって来ました、家庭科の時間。エプロンを付けて楽しそうにしている冬音と青ざめるクラスメート達+あたし。冬音の料理を知っている先生も勿論青ざめていた。そして案の定、冬音はアレを作り出したのだった。


材料は皆のと同じだし、調理方法も同じ…はずなんだけれど、どういう訳か禍々しいものが出来上がった。目を離している少しの間に何か入れたりしているとしか考えられない。そういえば、冬音がポケットからスルメを取り出したのをチラッと見た気が…。使わないからね!?スルメなんて!


精神的に疲れた状態のまま、冬音がいた班の全員は教室へと戻る。食べれない事もなかったので、物はあたし達が美味しく頂きましたよ!!でも…毎回これだとちょっと身が持たない…。放課後になり、桜・冠凪さんの二人が一組へと入って来た。


「どうしたんですか?春香さん、お疲れのようですが…」


「桜…冠凪さん…冬音をどうにかして!」


「一体どうしたって言うのよ!冠凪さんが困ってるじゃない」


必死で冠凪さんにしがみ付くあたしを見て桜が言う。それから桜によって引き離されたあたしは少し冷静さを取り戻して近くの椅子に座る。桜は腕と足を組んで、冠凪さんは膝に手を置いて座っていた。冬音はと言うと、机に突っ伏して寝ていた。


あたしは家庭科の時間にあった事を細かく桜と冠凪さんの二人に話した。それを聞くと、桜は唸り、冠凪さんは苦笑いを浮かべた。


「どうしたらいい?」


「冬音ちゃんに変な物を入れさせなければいいんじゃない?」


「入れないでって言って冬音が聞いてくれると思う?」


「言うだけ言ってみなさいよ」


そう、桜が言うのであたしは仕方なく言う事にした。寝てしまっている冬音を揺り起こして、あたしは言った。


「料理にさ…変な物入れないでね?」


「変な物なんて入れてないよ、もしかしたらコレを入れれば美味しくなるかも!って物しか入れてないよ」


「……この通り」


「どうしようもないわね」


溜息を吐いてから桜は立ち上がった。あたしと冠凪さんは驚きながら桜を見上げ、冬音は首を傾げながら桜を見上げた。


「私が徹底的に料理を教えるわ」


「ええ…いいよ別に」


「貴方が良くても他の人達はダメなのよ……ダメなのよ?」


桜はニッコリと笑って冬音に言った。それを見て冬音はただ頷く。ここで逆らったら……どうなるんだろう……。


「原因はやっぱり余計な物を入れる事ですよね?」


「まあ、そうね。それが無ければ普通の物が出来るはずだわ」


「でも……冬音は入れちゃうよ?目を離した一瞬の隙に」


全員の視線が冬音に向けられる。冬音は何故か照れたような表情をした。


「まあね!」


「褒めてないわよ」


「どうします?椅子に縛り付けて置きますか?」


「冠凪さん、あなた時々とんでもない事言うわね。でもナイス・アイディア」


そう言って桜は親指を突き出した。冠凪さんは「そうですよね!」と嬉しそうにしている。


「いや、二人共ナイス・アイディアじゃないよ!?誰かが見張って置けばいいじゃん!しかも縛り付けてたら冬音が料理できないし…」


「ハッ…それもそうですね」


「料理を教えるのに本人身動き取れなかったらだめよね」


「今気づいたの!?」


冠凪さんだけでなく桜までも……と唖然としていると、いつの間にか隣にいた冬音がいなくな……。


「……えぇぇぇぇー!?ふっ冬音!?」


「消えました!まさか冬音さんはマジシャン!?」


「ちょっ、冠凪さん。今それ言ってる場合じゃないから、マジシャンでもないから」


「何処言ったのよ!見つけたらスパルタで料理を教えるわ…」


拳を握り、ゆっくりと立ち上がって桜は勢いよく教室を飛び出して行った。それから心配そうに冠凪さんがあたしの顔を見た。


「大丈夫でしょうか?」


「とりあえず…探すしかないよね…あと、桜より先に見つけてあげないと…」


「ですね」


少しの間、桜が飛び出して行ったドアの方を見つめてから、あたしと冠凪さんは教室を出て行った。




冬音が見つかったのは三組の教室。あたし達が行くと、秋が驚いた顔をした後に状況を理解したのか、やれやれと溜息を吐いた。


「突然、松永が教室に来たと思えば…」


「いやー…なんかごめん」


「本当にご迷惑おかけしまして…」


もうあたし達は秋に謝るしかなかった。冠凪さんなんて、かなり丁寧に謝っている。そんなあたし達を余所に、冬音は腕を組んで顔を背けていた。


「迷惑なんてかけてないし!出来る事ならば、迷惑をかけたいさ!」


「もう十分かけてるよ…」


「おおっ!」


「秋にじゃないから、あたし達にだから!明らさまに嬉しそうな顔しない!」


迷惑をあたし達にかけてると言った瞬間、冬音は悲しそうな顔になった。なるほど、秋にじゃなければ罪悪感は感じるのか……なるほどじゃないけど。


「ほらっ、戻るよ?」


「ええー…」


「ええーって…貴方子供ですか!」


冠凪さんが耐えかねて言った。その声を聞いて駆けつけたのか、桜が鬼の形相で教室のドア付近に立っている。


「やっと見つけたわ…フフフ…」


勝ち誇ったような笑みを浮かべながら桜は冬音に近づき、そのまま廊下まで引きずって行く。それをあたし達が呆然と見送っている。


「では、お騒がせしました」


お辞儀をしてから冠凪さんも二人を追いかけて行く。あたしも苦笑いを秋に向けてから三人の後を追って行った――――――…。




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