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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心(友人・親友)編
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第四十二話 ランキングと嫉妬

朝、各クラスの教室の黒板にランキングが貼りだされていた。見てみると【女子が付き合いたい男子ランキング】と書いてあった。


一位 季野夏騎


「へぇ、意外と夏騎君が人気なのね…と言っても人気な感じがするけど」


別のクラスなはずなのに桜はあたしの隣で同じようにランキングを見上げていた。手には何故かシャープペン…宿題やってたのかな?ランキングの話に戻るとまあ、夏騎が一位なのも納得がいく。男女問わず優しいからなー。


二位 季野秋


「双子で一位と二位を埋めちゃったわね」


「あいつのくせに二位なんて…でも弟に負けてる」


いつの間にか隣に来て桜と一緒に冬音もランキングを見上げていた。秋が夏騎に負けている事がちょっと嬉しいのか口元に手を当てて笑っている。なんで二人共、来る気配がないんだろう。


三位 節中雪


「あれ?意外な人物が…」


「本当に…」


兄が三位な事に驚きを隠せない冬音とあたしは口を開けたままポカンとしていた。冠凪さんも気配がない人だったらしく、いつの間にか隣にいて同様にポカンとしていた。


「部長が…ありえないです」


「冠凪さん、断言するのもどうなの?あたしも信じられないけど」


「三位って事はこの学校内に、この人と付き合いたいと思っている女子がいるって事だよね?」


冬音が確認するようにあたし達を見回しながら聞いてきた。すると、近くでバキッと何かが折れる音がした。


「ねえ、今なんか折れる音しなかった?」


「しました…ね…」


「どうしたの?冠凪さん…」


言葉を失っている冠凪さんに理由を聞いた冬音まで言葉を失っていた。二人の視線を辿ってみると……桜が手に持っていたシャープペンが折れていた。


「えーと…桜…?」


「何かしら?」


「その…シャーペンが…」


「それがどうかしたのかしら?」


「あ…えー…いえ…」


あまりにも桜の迫力がすごかったので言うのは止めた。顔は笑ってるんだよ!でも目が全く笑ってないので尚の事怖い……。


隣で冠凪さんと同じように言葉を失っていたはずの冬音が「ねえねえ」と言いながらあたしの肩を揺するので顔をそちらに向ける。


「どしたの?」


「桜さんが急に不機嫌になったのは、きっと三位の人が好きだからだよ!」


「兄を?それにしても冬音…兄の事名前だけでも呼んであげなよ?」


「呼んだら来そうだからヤダ」


(確かに来そう…)


苦笑いをしながら考えていたのはやっぱり…桜が兄を好きなのかと言う事だった。冬音の勘違いかもしれない…でも、あたしよりは冬音の方が鋭い。


「うーん…どうなんだろう?直接聞くのも今の桜を見ると…厳しいよね…」


「その手があったか!」


左手の平に右手の握り拳でポンッと叩くと冬音が早速桜に聞こうとしたので冠凪さんとあたしで必死に止める。


「ダメっ!今の桜は危険過ぎる!」


「そうですよ!ここは収まるまで待った方がいいです!」


「でもさ?せっかくだから二人も知りたいでしょ?」


そう言われて冠凪さんとあたしは顔を見合わせる。確かにちょっと…いや、かなり知りたいけど…冬音が聞くのが一番危険な気がする。余計な一言とか言いそうだから。


しかし、悩んでいる間に冬音は桜の元へと直行していた。なんて迷いの無さ!隣で考え込んでいた冠凪さんも驚いている。


「桜さんって、三位の人が好きなの?」


質問も迷いが全く無かった。質問されている桜の方が目を丸くして驚いている。


「すっ好き、とかじゃ…」


「本当に?」


「本当じゃないかもしれないけどそうでもないかもしれないし…それもまた違う!」


途中まで言葉を濁していたけど最後は言い切ったよ!!冬音、頭良いけど…ややこしい言葉は苦手なんだよね…。心配になってチラッと冬音の方を見る。


「つまり好きなんでしょ?」


心配無用だったみたい。いい加減ハッキリしてと言いたそうに冬音は桜をジッと見つめる。さっきまでの不機嫌さは全くなく、逆にオロオロし始めている。


「まさか…本当にまさかとは思うけど…兄が好きなの?」


「そんな訳ないでしょ!すっ好きとかじゃないのよ…」


目だけを逸らして顔を真っ赤にさせても尚、桜は否定している。周りは皆、そうかそうか…否定してるけど好きなんだね?と言う、桜を見守っているかのような空気になりつつある。


「好きまでは、いってなくて…き、気になるくらい…」


「いいじゃん、好きだ。気になるも立派な好きだよ?」


「そう言う冬音ちゃんはどうなのよ?夏騎君の事」


ここに来て桜が反撃に出た…けれど冬音は平然として腕を組んでいる。おおっ完全にいつもと立場が真逆だ!!


「恋愛相談したりされたりするだけの仲ですが…今はもう友達くらいだろうけど…それが何か?」


平然としているように見えたけど…あれ?なんか機嫌悪い?恋愛相談したりされたりする仲だったんだ…夏騎君…好きな人いたのか…。ってあたしの事だよね、たぶん…。


「何、逆ギレしてるのよ…。まあ、お互い大変よね」


「そうだね、夏騎君…皆に優しいからさー」


「分かるわ、雪さんも皆に優しいもの」


「えっ!そうなの?」


「そうよ!それに優柔不断なのよ」


なんだか冬音の逆ギレのお陰(?)で仲直りしたみたい…。兄、皆に優しかったのか…優柔不断なのは知ってたけど。黒板の前で優しい彼の話で盛り上がっている二人を見て、さっきまでの言い争いはなんだったのかと、隅の方で冠凪さんと共に溜息を吐いたのだった。


「冠凪さんも大変だね…」


「春香さんも…」


光の反射で輝く桜が最近気に入っている綺麗な紫の蝶のブローチが、ふと目についた。“皆に優しい”……確かに兄は優しい…でも性格が変わっていると言うかクラスで浮きそうな性格なので馴染めていないと思っていたのに…。妹なのに分からないなんて情けない…。


違和感…。


本当の兄は…一体どんな人なの…?



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