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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
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第三十一話 君の香り①

久しぶりの平和な日!!今日は放課後の今まで何の問題もなく過ごせている。いつもなら昼休み辺りに何かが起こるんだけど今日は大丈夫らしい。でも放課後パターンもあるので、まだまだ油断は出来ない。


「春香、どうしたの?周り見回して…」


「いい?冬音。今のところ、今日は何の問題もなく過ごせてるんだよ!」


「うん」


「って事は平和なまま今日を終える事が出来るかもしれない!」


そうあたしが力強く言い切ると冬音はあたしの肩に手を置いて、顔を逸らしながら言った。


「…無理だよ」


「ええっ!?何で?」


「だって考えてもみなよ?私が問題を絶対に起こさないとは言い切れないじゃないか!」


「自信満々に言われても……」


どうしたらそこまで自信満々に言えるんだか…。あたしが溜息を吐くと教室のドアが開いて、桜が覗き込む。そしてあたし達の姿を見つけると歩いて来た。


「お話し中だったかしら?」


「別に大丈夫だよ、丁度会話が途切れたところだから」


「そう?それじゃあ私からも話したい事があるんだけど……。春香、正直なところ、秋と夏騎君のどつちが好きなの?」


「桜、口を開けばそればっかりだね。昼休みにもそれ聞かれたよ」


自分の事でも他人の事でも白黒ハッキリされたいタイプなようで、会えば必ず一回はこの質問をされるようになっていた。そんな数分や数時間で気持ちに変化が起こったりなんてしないと思うんだけど…。


「桜さん、無駄ですよ。なかなか話さない相手にはお菓子を与えればいいんです!」


「冬音ちゃん、それはあなただけに聞く方法だわ」


「自分の気持ちが全く分からない…あたしが好きなのはどっちなのかな?」


思わず思っていた事が口に出た。こんなだから顔に思った事が出やすい、なんて言われちゃうのかな……。すると、冬音が腕を組みながら言った。


「自分が分からないのに人に分かる訳ないじゃん」


「珍しく正論を言っている!…今日もダメな気がする…何か起こりそう…平和な日はいつ来るの?」


「そこまで!?酷くない?それだったら今日、嵐でも来るのかな?って言われた方が何倍もマシだよ」


「冬音の酷さの判断基準はよく分からない」


あたしが首を横に振っていると、桜に続いて冠凪さんもやって来た。今日は部活、ないのかな?あったらあったで今日もダメな日確定。


「皆さん、ここにいたんですね?探してたんですよ…」


「うん、居た!それでどうしたの?」


首を傾げながら冬音は少しだけ息を切らしている冠凪さんに聞く。ただ一緒に帰ろうとしてあたし達を探していたって訳でもなさそう…。


「実は新作の物が出来たんですよ!だから…試して頂きたくて…」


「桜さんどうしよう!ついに冠凪さんが私達を実験体に使い出したよ!」


「そうね、これは裏切りだわ」


「桜まで悪ノリしないで。冬音は何言っても無駄だから注意しないけど」


隣で桜が“差別しないでよ!”と怒鳴っていたけど、とりあえずスルーする事にした。それよりも冠凪さんがあたし達に試して欲しい物って何だろう?また変な物じゃなきゃいいけど…。


「この間、先生に注意されてしまったので…今回だけは“まとも”な物を作ってみたんです」


「今回だけって事は次回はいつも通りって事?注意されても尚、反省する気はないのね」


「反省しないのだけが取り得ですから」


「それ、絶対に取り得じゃないわよ」


二人の会話がなかなか終わりそうになかったけれど、あたし的には面白かったので話を聞いている。すると、冬音は飽きてしまったのか近くにあった椅子に座り、足をブラブラとさせていた。このまま二人の会話が止めるまで終わらない気がして、あたしは止めるキッカケに物についてを聞いてみた。


「ところで、試して欲しい物って?」


「ああ、そうでした。香水なんですけど、付ける人によって香りが変わるんです!」


「これまでの事からすれば“まとも”ね…」


桜は腕を組んで少しだけ関心している風だった。冬音はと言えば相変わらず飽きたのか机に顎を乗せている。見てて辛そうな体制なんだけど…大丈夫なのかな。


「では、これからお見せしますね、部室に置いてあるんです。ついでに途中で夏騎君達にも会って話したので部室に居ると思いますよ」


やっと話が進んで清々したのか、冬音は先頭を歩く冠凪さんの後ろを嬉しそうについて行っていた。なんだか主人の後について行く犬っぽい。


そう思った事については置いといて部室に着き、冠凪さんがドアを開けると待ちくたびれたのか秋と夏騎と…アレ?兄までいる…その三人が椅子に座っていた。冠凪さんと桜がかなり長話してたから仕方ない反応……。


それから夏騎達はともかく、なんで兄までいるんだろう?首を傾げていると冠凪さんが半透明の綺麗な香水を取って来た。


あたし達は冠凪さんに促されて椅子に座る。そして香水をあたし達の前に置いた。一つだけかと思えば二つもあった。あまりにも綺麗なその香水をあたしは、まじまじと見てしまうのだった。










                        ②へ続く。

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