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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
3/88

第三話 虫と騒ぎと餡蜜と…

昼休みのチャイムが鳴り、あたしは冬音の席へと歩いて行った。


「食堂行こう!」


「えー…餡蜜付ける?」


「付ける」


「じゃあ行く」


そう言って冬音は、すぐに立ち上がった。即答ですか…ちゃっかりしてるなー。


食べ物に釣られるんだよね…知らない人でも食べ物もらったらついて行っちゃいそう…。


「食べ物もらっても知らない人について行ったらダメだよ!」


「何を突然…私は小学生か…」


「そうだ!秋達も誘わない?あっでも今日、お弁当かな?」


あたしは、秋達の居る教室を覗いてみた。


「居る?」


隣から冬音も教室を覗く。


「居ないみたいだね」


「どこに行ったんだろう?」


「さあ?居ないんじゃ仕方ない…」


冬音は、セーターのポケットに手を入れて廊下を歩いて行く。


「ちょっと冷たいんじゃないの?」


「餡蜜が先」


冬音に続いてあたしも、ついて歩く。


「双子か餡蜜だったらあたしは、双子を取る!」


「そんな自信たっぷりに言われても…と言うか春香の場合…」


「双子じゃなくて秋を取る!」


「だと思った…」



食堂に着き、食事を終えて冬音が餡蜜を食べようとした瞬間、校内放送が聞こえてきた。


《只今、学校内の昆虫観察で使う予定だった昆虫が入っているケージをサイエンス部の部員が誤って壊してしまい、校内に昆虫が逃げ出しました。甘い物をお持ちの生徒は、ご注意ください》


「またサイエンス部だって…」


「サイエンス部以外が問題を起こした事なんてあった?」


「ないね…」


逃げ出した昆虫、どうするんだろう?もちろん捕まえて戻すんだろうけど…。


でも、どうやって捕まえるんだか…。


「あ…季野くん達だ」


「え?」


食堂の出入り口の方で、秋達が何かしていた。


近づいて声をかけてみる。


「何してるの?」


「さっき昆虫が逃げ出しただろ?だから罠を設置してるんだ」


「偶然近くにいたのが僕らだったから手伝わされて…」


「お前は、すぐにサボってたがな…」


秋達の仕掛けた罠に、少し経ってから昆虫達が集まって来た。


「あれ?」


昆虫の数を数えながら、秋が首を傾げる。あたしは、罠に引っかかっている昆虫達を見た。


「どうしたの?」


「三匹足りない……」


「どこ行ったんだろう?」


そう言ってから、あたしは周りを見回した。周りにいるとは決まってないけど、なんとなく見回してしまう。


「三匹くらい、その内出てくるでしょ?踏んでなかったら」


「確かにその通りだけど、なんて事言うの…」


「私は、餡蜜食べてくる」


冬音の言葉を聞いて、秋が顔を上げた。


「餡蜜?……止めておいた方がいいんじゃないか?」


秋は、目を逸らして眼鏡の縁を指で押しながら、そう言った。冬音は、不満そうに顔をしかめる。


「嫌、私は食べるよ」


そう言って冬音は、食堂に入っていき……少ししてすぐに戻って来た。


「どうしたの?餡蜜は?」


冬音は、力なく首を横に振った。


「食べられない……」


「どうし………!?」


あたしの前に冬音が差し出した餡蜜を見て、どうしてなのかすぐに分かった。


餡蜜に三匹の昆虫が……。


「もしかして、残りの…?」


「ああ、餡蜜と聞いてなんとなく予感は、していたが……」


そう言って秋は餡蜜に付いている昆虫三匹を取り、ケージに入れた。そして餡蜜は、もちろん食べられないので……。


「私は一体今日のデザート、何を食べればいいの?」


「今日くらい、我慢しろよ…」


呆れながら秋が言った。フラフラと冬音があたしの所に歩いてきて両肩を掴んできた。


「ううー、春香ー」


涙目だし、もう冬音半泣き状態…。あたしが困っていると、夏騎が冬音の肩を叩いた。


冬音は、振り返る。


「実は、チョコが余ってるんだけどいる?」


「是非ください!」


両手を出して冬音は、夏騎に言った。夏騎は何処からかチョコを出して冬音に渡した。


「デザートの恩人!今度何かお礼します」


「楽しみにしてるよ」


「大袈裟な……」


あたしと秋は、冬音のデザートに対しての執着に呆れて思わず溜め息を吐いてしまうのだった。


後日、授業のその昆虫を観察する事になり……。


「あたし達のクラスで使う昆虫だったんだ……驚いたね?冬音…?」


「先生ー松永さんが倒れましたー」


餡蜜台無しにされちゃったんだっけ……。あたしは、また溜め息を吐いた。






                                     続く……?

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