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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
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第二十五話 鬼ごっこ③

【秋side】

俺は夏騎と逃げる事になった。とにかくこんな時でも夏騎は楽観的で鬼に追いかけられて捕まりそうになっても“まだ捕まってないから大丈夫”と笑って言っている。確かにその通りだけれど、もっと気をつけろと怒鳴りたい…居場所がバレるから怒鳴れないが…。


今はとりあえず三組の教室に逃げ込んでいた。それにしても心配だ…春香や本井も心配だが松永が一番心配だ。第一に体力がないし、今日は何故かすごく眠そうだった。


「そんなに心配なんだ?」


夏騎が覗き込むように顔色を窺いながらニコニコと聞いてきた。俺は顔を背けて目だけ夏騎の方に向ける。


「心配に決まってるだろ。本井も春香も」


「秋は松永さんを一番心配してると思ったんだけど…」


なんでこんな時だけ鋭いんだ!心の中で夏騎を睨みながら、上辺では冷静を装う。心配してると素直に言ってもいいけれど、本人にだけは知られたくない。弱みを握られた感じがして嫌だ。


「お前の考えすぎだ。俺は松永が嫌いなんだ」


「そうなんだ?」


納得したのかしてないのか分からないけれど、周りを確かめ始めたのでこの話題はもう終わりなんだろう。


「秋って松永さん、好きだよねー」


……どうやら終わってなかったらしい。そして何故か俺が言った事と矛盾している事を言ってきた。夏騎は周りを確かめるのを止めてこちらを見ている。


「なんでそうなるんだ?嫌いって言っただろ」


「嫌よ嫌よも好きのうち…」


「嫌いなものは嫌いなんだ」


「そんな嫌い嫌い言ったら可哀想だよ」


一体こいつはどっちの味方なんだろうか…もういっそ夏騎を鬼にしてしまえ。でもそうしたら俺が最初に捕まるな、今一緒にいるし。


「噂をすればなんとやら…松永さんが切羽詰ったような顔でこっちに来るよ」


「切羽詰った顔?」


廊下を見てみると本当に切羽詰った顔で息を切らせながら…もう歩いてるに近い速度でこちらへと向かっていた。もうこれ、普通に歩いた方が早いんじゃないかと言う速度だ。


そして俺達の存在に気づくと夏騎を見てホッとし、俺を見て明らさまに嫌そうな顔をした。何なんだ、この違いは。


不満なので睨んでやると睨み返してきた。一応、無視はしないようだ…だからって睨み返されてイラッとしなかった訳じゃない。


「夏騎君、まだ捕まってなかったんだ?良かったね」


「うん、良かった」


二人が笑い合って話してるのを見ていると、不意に松永がこっちを見たので慌てて目を逸らす。…なんで目を逸らしてるんだ?別に逸らさなくても良かったはず…。


首を傾げていると冠凪がやってきた。俺達三人は警戒したけれど本人が言うには放送係なので鬼ではないらしい。


「そんな訳で私は残り時間を知らせに来たのです」


「そういえば残り時間知らなかった…あと何分くらい?」


腕を組み、首を傾げて松永は冠凪に聞いた。時計を確認して手に持っている紙を見ながら残り時間を確認している。


「35分くらいですね」


「まだそんなに時間あるんだ…私、生き残る自信がない」


「松永さん、体力ないんだっけ」


苦笑いをしながら夏騎が松永を慰めている。また不意に松永がこちらを見て、俺は目を逸らした。何でなのか首を傾げる。


自分だけではとても答えが出そうに無かった。それに鬼が来てしまったらしい。ジリジリと鬼が近づいて来るのでこちらも後ずさりをしながら、逃げるタイミングを見計らう。


そして俺達三人は教室の出入口へと走った。途中で夏騎が机に足を引っ掛けバランスを崩す。捕まりそうになる夏騎を助けようと松永が戻ろうとするが、顔色を変えてどこかへと歩いた方が早いようなスピードで走るあの松永からは、とても想像出来ない速さで走って行った。


一瞬呆然としていたけれど、鬼がまだいる事を思い出して走り出した。夏騎は……どうせもう助からないな。


鬼をなんとか撒いたところで一息つく。松永も同じ方向に逃げてきたと思ったけれど、どうやら俺の近くにはいないらしい。それか俺が嫌いで隠れてるかだな。


俺も嫌いだし、それで良いんだが今日の俺はおかしい。目が合うと逸らす…自分で考えてみても答えがサッパリ思いつかない。


今度、春香か本井辺りに聞いてみるか…ともかく今は少し休みたいな。床に肩膝だけ付き腰を下ろす。完全に座ってしまうといざと言う時、逃げ切れないからな。


それにしても…春香と本井は大丈夫だろうか。体力に自信があってしかも早い春香は大丈夫だと思うが本井は…昔付き合ってた頃に競争をしたけれど確か…短距離が苦手で最初だけ全然遅いんだよな。少し経った後で早くなってくる。


夏騎はダメだな…もう捕まった。松永は……無理だな。逃げ切ったとしてどこかで倒れてるに違いない。そう思い、視線を左に移してみると…倒れていた。


俺は溜息を吐きながらも、松永を自分の場所まで運ぶのだった。









                       続く

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