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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
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第二十二話 ハムスター確保

夏騎と組む事になったあたしは早速、各教室とその近くを探す事にした。探してるのは小さくてしかも動くから…見つけるのは難しそうだな…。何より一番心配なのは冬音と組んだ冠凪さん。


もし食堂近くを探してたら冬音が食堂でご飯食べ始めちゃうよ…でも冠凪さんも“私もお腹空きました”って言って一緒に食べちゃうかも…。そう思って食堂を少し覗いてみると今まさにその状態。


溜息を吐いてから残して来てしまった夏騎の元へと戻る事にした。やっぱりあたし達の中で一番頼りになるのは秋と姉さ…じゃなくて桜だなー二人共しっかりしてるし。


そんな事を考えながら教室までの階段を上がって行くと上に居たはずの夏騎が走って階段を駆け下りてきた。あたしは事情を聞く為に慌てて夏騎を呼び止める。


「一体どうしたの?」


「見つけた」


それだけ言って夏騎はまた階段を下りて行った。見つけたのはもしかしたらハムスターかも知れない…そう思ってあたしも夏騎に続いて階段を駆け下りた。



[桜side]

秋と組む事になった私は、春香達が各教室を探してくれているので教室以外の職員室などの場所を探す事にした。小さいからよーく探さないといけないんだけど…大丈夫かしら?特に冠凪さんと冬音ちゃんの二人…。


春香と夏騎君はとりあえず大丈夫だとは思うけど…両方の組み合わせ共に心配だわ。そんな心配をしている間にも秋は部屋を一つ一つ念入りに調べていた。やっぱり頼りになるのは秋か私ぐらいね。


そっと溜息を吐いたその時、


「一体どうしたの?」


「見つけた」


かなり焦っていたからだろうか?声が少し大きかった、それと私達が階段付近にいたのもあって春香と夏騎君の会話が聞こえて来た。会話の内容からして、ハムスターが見つかったのかもしれない。秋もそう思ったらしく、私達は顔を見合わせてから声のした方へと駆けて行った。



[紅葉side]

冬音さんと組む事になった私は食堂付近を捜していた。けれど冬音さんが“お腹が空いた”と言って食堂へと入って行ってしまった。仕方が無く私も冬音さんに続いて食堂へと入って行く。


いつもこんな感じなのかな?自由と言うか…よく食べると言うか…。食堂で注文した物が来るとすぐに食べ始めて、しかもその食べっぷりに唖然としてしまった。


「冠凪さんは実のところどうなの?」


「え…?」


突然話しかけられて一瞬言葉に詰まったけれど、気がつき夏騎君の事だと悟った。私の答えを待っているのか食事をせずに頬杖をついて私を見ている。


「好き…ですけど恋愛感情と言うより尊敬の方が近いと思います。時々、部室にいるのを見かけたりしたのですが、何かを作っていたようなんです…夏騎君が去った後に完成品を見て…すごいと関心したんです…」


「へぇ…」


その事を知らなかったのか興味深そうな眼差しで私を見つめる。そしてニッコリ笑うと食事を再開した。どうして急に聞き出したのかと首を捻っていると、冬音さんがふと顔を上げた。


「親友の恋敵かもしれない相手の事を聞くのが私のポリシーだから」


「えっ!」


もしかして冬音さんは世に言うあれですか?エスパーって言う…。戸惑いながら冬音さんを見ていると冬音さんが面白そうに笑う。


「冠凪さんも春香と同じで顔に出やすいから…見てて面白い」


それだけ言うと冬音さんはデザートを買いに購買へと向かって行った。私の顔ってそんなに分かりやすい?手鏡を白衣のポケットから取り出して、私は徐ろに顔を見つめるのだった。



[春香side]

不意に後ろを振り返ると、さっきの会話で聞きつけてきたのか秋と桜があたし達の後ろからついて来た。冬音達は食堂にいたから、さすがにそこまでは声が届くはずないよね?


そう思い、私は桜に冬音達を呼んで来ると告げてから食堂へと向かった。そこでは冠凪さんが自分の顔を手鏡で見ながら溜息を吐いていた。


「どうしたの?」


「私、顔に出やすいみたいなんです…思ってる事が…だからさっきも冬音さんに言い当てられてしまって…」


「それ、あたしも冬音に言われたよ」


冠凪さんに同じ雰囲気を感じながら、あたしはこんな事を話しに来た訳ではない事を思い出した。そして周囲を見渡す。


「冬音は?」


「デザート買いに行くとかで…」


「自由!こんな時でも自由!って突っ込んでる場合じゃない!ハムスターが見つかったらしくて、冬音がいなくていいからとりあえず冠凪さんだけでも来て?」


「あっはい!」


白衣に手鏡をしまい、慌てた様子であたしの後ろについて来る。桜達の元へと戻ると息を切らせながら座り込んでいた。


「どうしたの?ハムスターは?」


「見失っちゃったのよ…全く…夏騎君は…先頭なんだからしっかり…しなさいよ…」


「ごめん…」


どれだけ走ったらこんなにも息を切らせるのだろう?あっでも腰を低くして走ってたから、その分疲れが増すのかも!今日のあたし、冴えてる!おっと本題が…。


「でもどうする?また探すの?」


あたしの一言で全員の顔から血の気が引いたのはまず間違いないでしょう。そんな最悪の展開を想像していると誰かに後ろから肩を叩かれた。


「誰…って冬音!?もー!こんな時になんでデザートなんか………ってあれ?」


「デザート買ってたら見つけた」


そう言って冬音は手に乗せているハムスターをあたし達に見せた。まさかの自由人がハムスターを見つけちゃったよ…。


「今度は逃がさないでね?私、踏んじゃうから…」


「あと一歩遅かったら……って奴?」


「まさにそんな感じ」


購買で買ったらしいチョコパンを頬張りながら冬音が何度も頷く。そんな事があって、ハムスターを無事ケージに戻して一件落着した。


その後、飼い主が引き取っていった。たぶん飼い主の方には、あたし達の事は話してないんだろうなー…と言うか話せないよね…。


授業がとっくに終わっている放課後の教室で少しだけでも触っておけばと後悔しながら、あたしは鞄を手に取り教室を出たのでした。








                             *続く*

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