第二話 勉強とパンと約束と…
「NOー!!」
頭を抱えてあたしは、叫んだ。耳を抑えて、顔をしかめながら冬音は、言った。
「いきなり何?」
「もうすぐテストだよね?」
「焦ってるんだ?勉強真面目にやってないから」
冬音は、余裕綽々であたしを哀れそうに見た。
「だってー」
あたしは、涙目になりつつある。
教室のドアを開けて、秋が近くに来た。
「松永、また春香を泣かせてるのか?」
「私がいつ春香を泣かせたって?春香を泣かせてるのはテストだよ!テ・ス・ト!!」
今すぐにもバトルが勃発しそうな雰囲気。冬音と秋は、お互いを睨みつける。
そこへ、夏騎がまたパンを持ってやってきた。
「また喧嘩?」
「私、春香を泣かせてないよね!」
「え?どちらかと言えば泣かせているのは、勉強とテストじゃないかな」
「ほらー♪」
勝ち誇ったように笑いながら冬音は、腰に手を当てて胸を張った。
「無い胸、張って…」
呆れたように秋が言う。
これは、また喧嘩が始まりそう…。
「うっさいなー!胸だけが全てじゃない!」
「ない奴が言いそうなセリフだな」
ああっ!なんで二人共、喧嘩するのかな?秋を睨む冬音の肩を夏騎が叩く。
「パン、いる?」
「え……いいの?」
冬音が目を輝かせて夏騎を見た。冬音は、パン本当に好きだなー!
この雰囲気でパンは、どうかと思ったけど…夏騎ナイス!!
あたしは、夏騎に向かって親指を出した。夏騎は、それに気づいたようであたしに微笑んだ。
うわー顔同じだから思わずときめいちゃったよ……。眼鏡なかったら、どっちがどっちかあたし分からないかも。
「話は、戻るけど本当にテスト大変だと思うんだよね。今の春香では」
「俺も今の夏騎ではテストが大変だと思う」
「珍しく意見が合った……じゃあ今日、早速勉強会しない?」
やっぱりこの展開か……薄々こうなるんじゃないかって思ってたけど……。
あたしは、夏騎を見た。夏騎もこうなると思っていたのか特に驚いていなかった。それともポーカーフェースなだけ?
「でも誰の家でやるんだ?勉強会」
あたし達の意見まだ言ってないのに話が進んでいる……。まあ、嫌だって言うに決まってるというか嫌って言うから当然と言えば当然なんだけどね……。
「私の家は、事情があってダメなんだよね。春香の家は私が許可しない!男を春香の部屋に入れるなんてとんでもない事だよ」
「松永は春香の父親か……って事は消去方で俺達の家になるな」
「秋たちの家かー!見てみたいかも……楽しみだなー」
「それ位勉強も楽しめたらね……」
溜め息を吐いて冬音が呟いた。そしてその隣で秋も溜め息を吐いて言った。
「夏騎も楽しんでくれればいいんだけどな……」
なんか後半、冬音と秋の意見が一致している……仲いい事は、いいんだけど……。
ちょっとヤキモチを焼いてしまう。試しにあたしは、聞いてみた。
「じゃあ二人は、勉強楽しい?」
「俺は楽しい。色々知る事が出来るからな」
「え?私は、全然楽しくないけど」
冬音から意外な言葉が出た。秋は、目を見開いている。
「じゃあなんで成績上位なんだよ」
「知らないよ……でも楽しめば上がるんじゃない?」
「じゃあ春香が楽しんで勉強やったとして、学力が上がるか?」
三人は、あたしに注目した。
「……………………上がるよ?」
「間!その間が一番傷つく!そして何故、疑問系!」
「だってハッキリ言って春香の学力が上がるなんて皆無だから」
「随分ハッキリと……」
とにかく、あたしは勉強会に行かないといけないようです。多分どんなに嫌がっても強制的に連れて行かれる。
でも秋と夏騎の家に行けるんだー!でも勉強会とはいえ……いきなり家は、ハードではないでしょうか?
続きますよ!