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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
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第十四話 不機嫌な理由 side冬音

春香に勉強を教える為に私達は休日に図書館へとやって来た。そこで夏騎君と秋も勉強していた。正確には勉強してるのが夏騎君で教えているのが秋だ。まあ、そんな事はどうでもいいけれど…。


手近な席に座り、春香の苦手な歴史から始める事にした。始めてまだ時間が経っていないのに春香の集中力がなくなってきている。原因は近くにいる秋か…。


「ほら、人を見てないで教科書見なよ」


「だって…つまらないんだもん」


「言っとくけど私だってつまらないから」


春香の集中力をもう一度教科書に移させて勉強を再開した。けれど、やはり秋に目が行ってしまうようだった。


「あんなの見て、何が楽しいの?」


「冬音にとってはあんなのでも、あたしにとっては好きな人なの!そりゃあ、見てて楽しいでしょ?」


「そんなもん?」


春香につられて…と言う訳でもないけれど私も二人に視線を移した。熱心に教える秋の言葉を夏騎君は完全に聞き流している感じだ。


その事で秋がまた怒って…なんだかその気持ちが珍しく分かるような気がした。こんなに分かるのは本当に珍しい。今日、雪でも降るのかな…一応夏だけど…。


「ふ…冬音、冬音」


顔を引きつらせて春香が名前を呼び私の背後を指差す。何の事か分からなくて振り返ってみると…暗い?停電?でも春香の方は明るいし…私側だけ停電?そうか、停電か。


……ってそんな訳あるかっ!一人ボケツッコミしてても何も始まらないな。顔を上げてみるとムカツク眼鏡…秋がいた。


「さっきからこっち見て…何か用か?」


「用がなければ見ちゃいけないのか、友達を見てはいけないのか?」


「見たらダメとは言ってないだろ?何か用があるかと思っただけだ」


そんな事を言われても用が全くない。なんか居たから何の気なしに見ただけだ。すると春香が手を挙げてこう言った。


「勉強教えて!」


「なんで?私、今の今まで教えてたじゃん」


「だって秋の方が分かりやすくていいもん」


「いや、どっちでも同じだから。私の方が分かりやすいんだから!」


「なんで張り合ってんの?どっちも同じならあたしは秋がいい」


なんだろう…この敗北感…。そんな虚しさを感じている間に春香はすぐに秋の隣へと座って行った。必然的に私が夏騎君の隣に座り勉強を教える事になりそうだ。





時計を見て一時間程経った頃、後は夏騎君が問題を解くだけなので私は席を立ち、何か興味のありそうな本がないか探していた。ふと、恋愛コーナーと書かれた所にある本で気になるタイトルの物があった。


【好きな人が親友を好きだったら】


他のタイトルと違ったストレートなタイトルに、私は思わずその本を手に取り読み始めた。その本の内容があまりにも自分の今の状況と似ていて驚いた。


【好きな人は親友が好きで、親友には別に好きな人がいて…】


まさに三角関係状態…いや、親友の好きな人を入れたら四角関係になるのだろうか?とにかく、この先の話を私は読まない事にした。


もし好きな人と親友が結ばれたと書いてあったら?そんな事が書かれていないと否定したかった…。何故かは分からなかったけどそう思った。


本を棚に戻して春香達の所へ戻ってみると、夏騎君と春香が倒れてと言うか、もう何も出来ない位に疲れ切っていた。


その傍で秋が本を読んでいる。私がいない間に勉強は終わったみたいだけど…。何があった!と私は聞きたい…。


「一体何が…?」


「ああ、冬音聞いてよ。秋ってばスパルタ…こんな風にいつも勉強教えてもらってる夏騎は凄いよ…」


「言っとくけど夏騎君も春香と同じ状態だからね?」


秋のスパルタは、夏騎君も慣れないらしい。私は呆れて溜息を吐きながら夏騎君の隣に座った。疲れ切っているようで熟睡している。


なんとなく見た、寝ている夏騎君の寝顔に不覚にもドキッとしてしまった。慌てて視線を逸らし、本を読んでいる秋を見た。正確には秋の読んでいる本に。


【猫の可愛い仕草】


思わず吹き出しそうに…


「ぶふっ…」


あっダメだ、吹いた。意外過ぎて笑わずにはいられない。でも図書館なので「ぶふっ…」で収まった訳だ。


「なんだよ…?」


「猫…可愛い猫って…」


「好きなんだから別にいいだろ」


そう言って秋はまた本を読み始めた。ふと、春香の方を見ると…体を震わせて顔を腕に埋めて笑っていた。私よりすごい笑っていた。


「あっありえな……猫……猫て……アッハッハッハ!」


『しー』


「ごっごめんなさ…」


注意されてもなお、春香は笑っていた。もしかして、ツボッたのだろうか?さすがに私の笑いは、とっくに引いていた。


スパルタの後に猫なら、そりゃウケる…。意外性って奴?


私は、さっきの本が置いてある方に視線を向けて私にしか聞こえない声でこう呟いた。


私だったら譲るよ…と…。







続く

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