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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
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第十一話 センチメンタルガール

冬音が腹痛を起こしてから二日後、元気になって登校して来た冬音を見てホッとした。お見舞いに行った時は無理をして元気に振舞っているのではないかと心配していたから。


そしてお見舞いの時のあたしのノートを見た冬音のリアクションを見て、ふと思った事がある。なので昼休みに聞いてみる事にした。


「もしかして…あたしってバカ?」


「赤点取って補習の常連って事ではバカなんじゃない?」


「すごいハッキリ言うね…ちょっとあたしの心が折れそうだったよ…」


「春香が聞いてきたんでしょ?」


冬音は、呆れたように溜息を吐いた。あたしも反論したかったけれど事実なので何も言えない。


「でも春香はノートとってるだけマシだよ…白紙よりは…」


「夏騎のノート、白紙だったんだっけ?」


「夏騎君が何しに学校来てるのか、時々分からなくなる時がある」


「あたしも」


ノートが白紙なのに0点になった事が一度もないのでそれがまた不思議だ。授業は聞いてるけどノートには何も書かないだけなのかな?


「やっぱり(かしこ)い女子の方がモテるのかな?」


「賢い女子がいるとして性格が最悪だったら元も子もないじゃん」


「冬音、それを言っちゃ…」


ふと思った…二人も賢い子の方が好きなのかと…もしそうだったなら、冬音にあたしは賢さでは勝てないだろう。


「冬音って勉強好きじゃないのに出来るよね?」


「出来ると思う」


「否定はしないんだね…。それって何か秘訣とかはあるの?暗記とか…」


「ない」


考える素振りも見せずに冬音は即答でそう言った。あたしはただ呆然と冬音を見ていた。


「すごいバッサリ言った…」


「どうやら今の話によると春香さんは頭が良くなりたいのですね?」


いつの間にか冠凪さんがあたしの隣に座っていた。気配が全くしなかったのであたしは驚いたけど冬音の様子からして、気づいていたのだろう。


「頭の良くなるポーションがあるんです。お使いになってみますか?」


そう言って白衣のポケットから綺麗な青色のポーションが入っているらしい小瓶を取り出した。そして栓を抜いてあたしに近づける。


「どうします?飲んでみますか?」


「なんか…変な副作用とかないよね?」


「さあー?」


満面の笑みで冠凪さんは小瓶をあたしの手に握らせる。この人、笑顔で恐ろしい事を言っている…もし副作用があったらどうするつもりなんだろう…。


とりあえず怖いのでこれ以上は考えない事にしよう。そう思い直してあたしは小瓶に入っているポーションを半分口に含んでみた。


あたしから受け取った小瓶の中身を確認する冠凪さん。そして大変な事に気づく。


「これ頭が良くなるポーションじゃなくて絵の具で青色に着色した、ただの水…」


「ブッ…」


思わず口に含んだ青色の水を吐き出す。目の前に丁度、冬音がいたので(もろ)にかかってしまった。絶対に怒られるっ!


「あ…あの…冬音…さん?」


「春香……グスッ」


うわーどうしよう…泣かせた!?でも冬音ってこんな事でなくような程、繊細じゃないし…。原因があるとしたらあたしが吹いた水くらいだけど…。


「すみません。どうやらセンチメンタルになってしまうポーションだったようです」


「天然でワザとじゃないから、たちが悪い…」


「え?何か言いました?」


「ううん、別に」


今は冠凪さんのうっかりの事を考えてる場合じゃない。なんたってあの、男子相手でも取っ組み合いの喧嘩をしたと言われる冬音がこんなに泣いているのだ。


そんな珍しい光景を夏騎達に見せない訳にはいかないでしょ!あたしは急いで三組に行き、二人を確保して一組に強制連行した。


泣いている冬音の姿を見て夏騎は呆然と立ち尽くし、秋は笑いを堪えていた。いまいち、秋の笑いのツボが分からなかったけど普段と違う姿を見て驚いたのは二人共、同じだろう。


「冠凪さん、冬音戻せない?」


「飲んだ訳ではないので数十分で戻ると思います」


「それまではこの状態って事ね」


まだ薄っすらと涙を目に浮かべている冬音の前にあたしは座った。秋と夏騎は、どうすればいいのか迷っている様子だったので、あたしは隣に座るよう言った。


「ほら!泣かないで?心配して秋達も来てくれたし」


正確にはあたしが強引に連れてきたんだけど…。二人が来た事に変わりはないさ!冬音はハンカチが無いのか腕で涙を拭っている。


「なんか新鮮だな…松永が泣いてる姿」


「同感」


「二人共、そんな事言ってないで冬音をなんとかしてよ!」


冬音は泣き顔を見られたくないのか顔を二人から背けている。秋が立ち上がって冬音を見下ろした。


「えーと…大丈夫か?」


「大丈夫じゃないから泣いてる…」


「そうだよな…」


そこで一旦会話が中断されて、秋が言葉を(はっ)しようとした瞬間に冬音が涙を拭い鋭い目つきでこう言った。


「お前は泣いてる女の子にそんな分かり切った事しか聞けないのか」


それはいつもの冬音の調子で、もとに戻ったのだとすぐに分かった。怒りを堪えて夏騎に(なだ)められている秋も、冬音が元に戻ってよかったと思っているのかもしれない。


泣き虫のままでいてくれた方が平和でいいとあたしは少し思うけれど。


「それで、なんで双子まで一組にいるの?春香に何か用事?」


『え……』


どうやら、秋が話しかけた時くらいからの記憶しかないようです。それにしても、冬音はやっぱりこうでなきゃと思う、今日この頃でした。







                            続く*

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