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無限問題  作者: 城宮 美玲
恋心編
10/88

第七話 トキメキと変化と虫と…

朝早くにあたしは、早く秋と会いたくて冬音が家に迎えに来るのを忘れて季野家へと向かっていた。


たぶん…いや、絶対あとで冬音に怒られる。そんな事を考えつつも季野家のチャイムを鳴らした。


少し待っていると寝癖の付いた髪をした秋が出てきた。キャー!激レアだ!


「春香?どうしたんだ?こんな時間に…」


「うん、たまには秋達と一緒に学校行きたいから」


「そうか…ちょっと待ってろ。すぐに仕度する」


そう言うと秋は、ドアを閉めた。その後に冬音が歩いて当然のようにあたしの横まで来た。


そしてあたしの頭に一撃入れる。感想…真顔で怖さ倍増しです。


「イター…イタごめんなさい」


「何、痛いとごめんなさいを合体させてんの?」


「と言うかなんで冬音、分かったの?」


「春香が私より優先させるのは双子だから」


それもう、当たり前になっちゃってるんだ…。会話が終わった頃に秋が出てきた。そして、冬音に気づく。


「どうしたんだ?こんな時間に…」


秋があたしに対して言った言葉は、ここまで一緒だけれど…。


「幽体離脱して魂だけ来たのか?」


「私、どれだけ器用なのさ!そして朝に私がいるのがそんなに意外か!」


「意外だ」


「ハッキリ言ったー!こいつハッキリ言った!」


本当に秋は、冬音が好きなのだろうか?完全に犬猿の仲なのですが…。


「幽体離脱と言えば…最近幽霊が校内に出るって噂だよ?」


「幽霊?」


冬音が興味深そうに聞いて来る。夏騎も来たので歩きながら話す事にした。


「校内の中を女性の幽霊が授業中に歩き回ってるのを見たって生徒がいるの」


「教室からよそ見すれば見えるからね?」


「うん、だけどサイエンス部が関わってるみたいなの」


「サイエンス部…?」


それを聞くと、冬音が腕を組んで考え始めた。そしてあたしを見る。


「サイエンス部なら知り合いいるよね?」


「え?あっ…顔見知り程度の知り合いがいるよね」


あたし達の会話を聞いて、秋と夏騎は首を傾げた。彼女に会ってないから当然と言えば当然だけど。




昼休み、サイエンス部の部室を覗くと、彼女…冠凪さんがいた。冠凪さんがあたし達に気づいてこちらに向かって来る。


「どうしたんですか?春香さんと松永さんと…」


冠凪さんは、視線を秋に移している。あれ?もしかして…。


「例の幽霊についてなんだけど…」


「ああ、噂になっている彼女の事ですね?幽霊なんて失礼ですよ!」


状況がイマイチ分からず、あたしと冬音は顔を見合わせた。そして冠凪さんを見る。


「知り合い?」


「知り合いと言うか…サイエンス部の部員ですよ。ちょっと影が薄くて誤解されやすいけどいい子なんです!」


「そうだったんだ?」


今回の件は、そんなに不思議でもなかった。影が薄いだけの子だっただけ…。なんだか、拍子抜けした気分。


まだ昼休みが終わるまで時間があるので、あたし達は校舎裏へと行って見た。校舎裏には大きな木が並んでいて、昼ご飯を食べるのに最適な隠れスポットなのです。


「どうするの?木の近くで食べてて虫落ちてきたら」


「虫!?」


「春香を怖がらせるような事言うなよ…」


「本当に落ちてきたらと思って言っただけじゃない!」


なんか朝と同じ…いつもと同じだなー。これ、秋が冬音を好きな可能性ないかも…。


でも夏騎が嘘を吐くはずないし……もしかしてからかわれた?


冬音と秋を見ていると、ふと、あたしの頭に手が伸びてきた。


「え?」


思わず後ずさって身構える。夏騎が呆然とあたしを見ていた。


「えっと…葉っぱが頭に付いてたから……ごめん。嫌だった?」


「ううん、ありがとう」


うわー、撫でられるかと思…って違う!なんであたしが夏騎に撫でられたいの?どちらかと言えば秋に撫でられてほしいはず…。


いやいやいや!なんでこんな恥ずかしい事、まず考えてるの!?自分でも顔が赤くなるのが分かった。


「どうかした?顔、赤いけど…」


夏騎が顔を覗き込んで来るので、益々(ますます)顔が赤くなる、熱くなる。


「そこの二人!」


冬音が叫んだので、驚いたあたしは冬音を見た。夏騎も同様に冬音を見る。


そういえば、冬音って夏騎の事好きだっけ……。だから近づき過ぎて怒られた?


「ごめ「上!二人共、上見て!」


謝ろうとするあたしの言葉を遮り、冬音は叫んだ。首を傾げながらも上を見ると…。


「い……イヤーーーー!」


もうダッシュで冬音の元へと走り背中に隠れる。夏騎は、ゆっくりとこちらへ歩いて来た。


「大丈夫?」


「大丈夫じゃない!だって虫…」


そう、あたしの頭上数センチの所までクモが迫ってきていたのです。冬音が気づいて叫んでいなかったら今頃あたしの頭にクモがいただろう。


「怒られるかと思った…」


「なんで?」


「なんでって…」


近くに夏騎がいるので、冬音の耳元に近づいて言った。


「だって、冬音は夏騎が好きなんでしょ?」


「…まさか!」


「え?違うの?」


あたしの方が驚いてしまう。好きなんじゃないの?


「違う違う!」


「そうだったんだ…」


「だから怒らないよ」


そう言って冬音は笑った。だからあたしも笑い返した。冬音の笑顔に安心して、それがもしかしたら嘘かもなんて考えなかったんだ。








                           続くよ!

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