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世界の終わり

作者: 滝原莉音

 しまった。

 やばいやばいやばいやばい。

 うわー、やばい。

 何がやばいのかと申しますと、私は重大な間違いを犯してしまったのです。取り返しのつかない事態を引き起こしてしまったのです。……私の手で。

 世界を止めてしまったのです。

 この世の全ての活動を停止させてしまったのです。

 ほら、窓の外をご覧になってください。

 このとおり、あらゆるものが止まっているでしょう。森羅万象が、この今を以って、その活動を終えてしまったのです。本来の寿命よりもずっと早いうちに死んでしまったのです。一度止まったものは、人間でいうところの心臓のように、二度と動き出すことはないのです。

 というのも、私は神ですから、この世界の全てを創造し、また管理してきたのであります。

 そしてまた、終わらせることも簡単なわけです。

 いや、わざとじゃありませんよ。いくら私が神だからといって、自分の創造物を、そう簡単に壊したりするほど横柄でもなければ、この世界にはあまりある愛着さえあるのです。

 かといって、うっかり世界を終わらせてしまった、ということではないんですよ。本当ですよ。世界を止める引き金となる動作の「全裸で逆立ちをしながらヒャッホゥと叫ぶ」なんてことをするわけないじゃないですか。ねえ。

 すいませんでした。私がやりました。

 うわー、どうしよう。絶対怒られる。誰に怒られるのかは分からないけど怒られるー。うー、どうしよう。

 だって46億年ですよ。想像できないでしょ。

 めちゃめちゃ熟成させておいたフルーチェを、こっそり姉貴に食べられるのとはわけが違うんですよ。そりゃまあ、風呂上りにとっておいてあったやつだったとしてもですよ、たがか40分で作れるじゃないですか。作り直せるじゃないですか。でも世界はそうはいかないんですよねえ。

 いや、待てよ。

 窓の外を見る。テレビをつける。ネットを見る。電話をする。見知らぬ人に話しかけてみる。

 うん、確かに世界は止まっています。

 

 この状況を、必ずしも、間違いだったとは言い切れないんじゃないでしょうか。

 

 数分前を、数時間前を、数年前を思い出してみましょう。

 何が違うんですか。

 世界は元々、停止していたようなものではないですか。

 人々はいつしか進化をやめ、内戦を繰り返し、政治は腐り、むしろ愚かに退化していたようにも思えます。そのせいで他の植物や動物の進化の可能性を奪い続けてきたのです。

 私が世界を止めなくとも、いずれ近いうちに、人間の手によって世界は止まっていたのではないでしょうか。

 私のした行為は間違っていなかったのではないでしょうか。

 

 違う、そうじゃないんです。

 それこそ、まさに愚かな人間の考えるようなことです。どんなに小さな可能性でも、他人がそれを摘み取ることはあってはならないのですから。

 時が経てば、どんなに頭の悪い人間も、気づき始めるのではないでしょうか。自分の想像力のなさに。

 そうだ、もう一度、世界を創ってみましょう。失敗してもいいんです。どれだけの時間を使ってもいいんです。

 私の納得する世界を作り上げてやろうではないですか。

 建設に失敗して、また止まってしまった世界のことは「天国」と呼ぶことにしましょう。成長しないことと引き換えに、永遠を手に入れた夢の世界です。

 さて、どんな世界を創りましょうか。

 まずは、そうですね。

 私のいない世界を創りましょう。

どうか、想像することをやめないでください。

想像するのをやめたとき、人は無意味な創造に走ります。

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