表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

煮込んでも一人

作者: コウ
掲載日:2026/04/18

一人暮らしを始める時、実家から持ってきて良かったと思うもの第一位は間違いなく圧力鍋だった。

昔のピンがクルクルするやつじゃなくてレバー一つで簡単に圧力をかけられるタイプ。これがあると煮物のクオリティはとんでもなく上がり、時間はとんでもなく短縮される。

私は鍋にお湯を沸かす。まだ、圧力はかけない。

スーパーの安売りで買ってきた牛すじを大きめにカットする。お湯が沸いたら牛すじを入れて一煮立ちさせる。

私は料理は割と好きだ。次の工程を考えながら作業を進めると頭が整理されていく。それに単純に美味しいもの好きだし。

一煮立ちしたら牛すじをザルにあげて茹で汁を捨てる。この一手間で仕上がりが結構変わるのだ。

続けて人参、玉ねぎ、セロリ、ジャガイモを乱切りにする。いつもはジャガイモを入れないけど、最近また寒いのでほっこりしたかったのだ。

ニンニクは荒微塵にする。

全て鍋にぶち込んで、ホールトマトと安いワインとゼロカロリーコーラも注ぎ込む。味付けはコンソメとローリエとオールスパイスを入れるだけ。こんな簡単な仕込みでプロ並みに美味しいビーフシチューができる。私は蓋を閉めて火をつけ、圧力調理を開始する。

その間にフライパンで小麦粉をバターで炒める。中火で焦げないようにするのがポイントで、私はこのだんだん香ばしい匂いがしてくるのがとても好きだ。

ほんのりキツネ色になったら火を止めて、冷蔵庫で冷やしてあったワインの残りを一気に注ぐ。

この一気にというのがポイントで、熱い粉と冷たいワインが急激に同じ温度になるからダマが出来にくい。後はじっくり小麦粉をワインに溶かしてから中火にかけ、焦げないように混ぜ続ける。トロミがつく時は一気に来るのでそこが要注意だ。

そうこうしているうちに蒸気が吹き出し始めてから十五分くらい経ったので、鍋の火とフライパンの火を止めて、私は風呂に入る。

私は半身浴とかしているわけでは無いが、だいたい一時間から一時間半くらいは入ってるので、上がる頃には丁度圧力も下がっているのである。

風呂から上がると慌てて体を拭き、パジャマを着る。まださっさと服を着ないと寒い。

鍋の蓋を見ると思った通り圧力が下がっている。

私は蓋を開けて、作った小麦粉のトロミを鍋に注いで混ぜる。火にかけシチュー全体を温めたら皿に盛って、コショーを削りかけた。

さっきパン屋で買ってきたバケットも皿に盛って、今夜の夕食は完成。

うーん、しっかりと煮込まれた牛すじはぷりぷりでトロトロ、安いワインとは思えないコクにスプーンが止まらない。

バケットをちぎってシチューをつけて口に入れる。あーもう私天才かも。めっちゃ美味しい。

そうして夢中で食べ進め、食べ終わる頃にふと思う。こんなに美味しくできても食べるのはいつも私一人なんだよな……。

誰にも共感、共有されないまま、消えていくビーフシチュー。誰かに手料理を食べてもらったのなんて何年前の事だろう。

なぜだろう、料理が上手くできた日ほど、こんな思いに取り憑かれる。

私は空になった皿をシンクへ運び、流水で皿に付いたシチューを洗い流してから、スポンジに洗剤を付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ