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二人の母、一つの境界線 ―空のママと、絆創膏のお母さん―  作者: 横山


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8/8

元ネタ

これが元々のお話〜

文字数倍くらいになったかな?

物心ついた時すでに両親は離婚しており、私にとって母とは外国から帰って来たときに一緒にお出かけする人だった。

今日は母が来る日だからと幼稚園を休み、約束の時間より少し早く玄関のチャイムが鳴らされた。

父がドアを開けると輝かんばかりの笑顔を浮かべた母がいた。

「おはよう!ひーちゃん。ちゃんと起きれたのね、偉いわ」

「おはよう、ママ!」

細身に見えるのに体力勝負の医者である母は飛びついた私をしっかりと受け止めてくれた。

「じゃあ今日一日独り占めさせてもらうから」

「ああ、行ってらっしゃい。気をつけてな」


父が再婚したのは五歳の時。とても可愛らしい女性で、優しい人だった。

実家から仕事に通っていたためにあまり家事が得意ではなかった彼女は、それでもわからない事は調べたり聞いたり、できない事は人に頼り、家には笑顔が絶えなかった。

父が再婚すると聞いて次のお出かけの日、母は珍しく真剣な顔でこう言った。

「あのね、ひーちゃんにお願いがあるの」

「なあに?」

「あの、ね?新しいお母さんができるのは知ってると思うんだけど……あの、ね」

「うん」

「……ママって呼ぶのはママだけにして欲しいなぁって……ダメかな?」

「わかった」

「ほんと!?ありがとう!……ごめんね、わがままなママで」


彼女が継母ははになり、私は初めて料理を作る仕事をしている人以外の作ったホットケーキを食べた。

目の前にはパッケージの写真よりもぺちゃんとした物が重ねられ、バターとシロップがかけられていた。

「ごめんね、上手に作れなかったの、や、やっぱりこんなのよりカフェに行こうか!」

皿を下げようとする手を止めてそれを頬張った。

「お母さんが作ってくれたホットケーキ美味しい!」

「ほんと!?」

「うん!今度は私もお手伝いしたいな」

「じゃあ次は一緒に作ってパパに食べてもらおう?」

「やったぁ!次のお休みはいつかなぁ?」


私が十歳の時、妹が産まれた。継母ははにはすぐに会えたのに、妹には会うことができず、嫌な予感がした。


「私の家は病院です」

私がそう言えば聞いた人は親が病院を経営しているのだろうと思うことだろう。羨んだり、嫉妬する人もいるかもしれない。

「わたしの家は病院です」

妹がそう言えば聞くことができた人は皆気の毒がったり、なんと答えて良いのか困ったりするだろう。

家の隣にある父の病院が妹の家だった。

産まれてから三度の手術を経て一命をとりとめた妹だが健康体とは程遠く、学校はおろか普通に家で過ごすことさえも難しい状態だった。


妹の世界は病院と、そこに訪れる人達だった。

だからだろうか?妹は私の話を聞くのが大好きで、私は学校や近所、人の噂、インターネットで見つけたニュースなどを集めて病院へ足繁く通った。

「なんか今年は暑くなるんだって。テレビでやってた」

「そっか、じゃあ熱中症に気をつけてね」

常に温度が調節された室内にいる妹には夏の暑さというものがよくわからないらしい。

ただテレビや私の話からそういうものがあるとは識っている。


妹の容態はかなり悪い。

大学で妹が危ないとの連絡を受けた私は残りの授業を受けるのをやめて急いで病院へと向かった。

幸いに体調も安定してしばらくは大丈夫だろうとのこと。

最近父が悩んでいる姿をよく見かける。


母が亡くなった。

トラックで無差別に人を轢き殺すテロに遭遇し、轢かれた人達の手当てをしている最中にトラックから降りてきた銃を持った男達に殺された。

母の手帳には私の幼い頃と、成人式の時母と一緒に撮った写真が挟まれていた。

葬儀は母の住んでいた国と日本の両方で行われた。


妹は最近調子がいい。

見舞いに行くと父のことを訪ねてきた。

「よくね、わたしの顔をじっと見つめてるの。どうしたのって聞いても何でもないって言うだけで顔そらしちゃうし……家ではどう?」

「うん、なんか部屋でじっと考えてることがよくあるよ。何か悩んでるんだろうけど、話してくれないから……。お母さんも気になってるみたい」

「あーぁ、心配かけてる筆頭のわたしじゃ逆に面倒かけちゃうだろうし、どうしたらいいんだろ?」


両親が亡くなった。

結婚記念日に二人で食事をした帰り、事故だった。相手は無免許の高校生。助手席の弟は死んだらしいけど本人は軽傷、絶対に許さない。

妹は知らせを受けて急に体調を崩してしまった。職場には訳を言ってしばらく休みをもらうことにした。

これからは私が支えていかないと。


妹の体調が思わしくない。

「そう言えば最近あのお薬出てないな」

話を聞くと食間に服用していた薬らしいけど先生に尋ねても知らないと言う。

父からある程度まとまった量を渡されていたらしい。この病院では必要な時に必要な分を持って来るようにしているのに不思議な話だ。

外観を聞いて調べても妹に必要そうな薬の中には見つからなかった。


「あのね、これ、前にお父さんがくれてたのと同じ薬だから。先生には内緒にして欲しいの」

「お姉ちゃん?」

「ごめん、何も言えないけど、お姉ちゃんを信じて」

「……うん」

頷いた妹にほっとして病室を出て行こうとする私に声がかかった。

「お姉ちゃん」

「ん、なあに?」

「……無理しないでね」

返事は、できなかった。


妹が、亡くなった。

会いに行く頻度が減った私の代わりではないが、病院で友人ができたのだと話してくれていた。小学生の女の子で妹と同じ病気で入院していた。

その子にこっそりと薬を渡していたらしい。

気づいた頃にはすでに取り返しのつかないところまで病状は進んでしまっていた。

葬儀を済ませ、顔を出した伝令役にもう協力はできないと告げた。


ただ、何をするでもなく、生きていた。

仕事を辞め、家の中でぼんやりとテレビを見つめる。近所が花の名所だと紹介されていた。

あの子の、妹の好きな花だった。

「行ってみようかな……」

一人つぶやいて家を出た。


横断歩道を渡っている最中、前方で何やら人が騒いでるのに気がついた。

目をやると人が倒れているのが見えた。

そして、後ろからエンジンをふかす大きな音。衝撃とともに体が舞い、地面へと叩きつけられた。激痛と、何かが抜けて行く感覚。

私を跳ね飛ばした車が騒ぎのあった歩道へと乗り上げて行く。

ああ、これで終わるのか。

痛みのせいか途切れない意識の中で、救急車のサイレンが聞こえてきた。

実のところ、異世界転生ものの主人公の前日譚として書いたものでした〜

この子は来世で冒険者やって、苦労人だけど楽しくやってました。


誘導ってわけじゃないですが、スクラッチってお話です〜


裏設定として「薬」は日本に点在する『特定資源管理地区』で採取された資源から作られたものっていうローファンタジー世界です〜

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