99話 紋章の願い
※この話は最初の勇者の視点になります。ご了承ください。
あれは遠い昔の話、俺の勇者としての最後の時の決断だった。
「……結局最後までワクワクとした敵が現れなかったな」
「ええ、勇者様の最後は魔物に殺されるでもなく、寿命でもなく、病気ですか……ヒーラーの私でも治せない病気でごめんなさい……」
今俺の隣で泣いているのはヒーラーのハイルング、最期まで傍に居てくれた唯一の人物だ。唯一の疑問は数十年旅をしている仲間だが年を重ねている感じは無かったのだ。
「いいんだ、結局勇者は神じゃなくて人だと証明できただけでいいだろう……ゴホッ」
(もう余命は少ない……俺が死んだ後は誰が勇者を名乗るんだ……?)
そう疑問に思った俺はハイルングに問いた。
「ハイルング……覚えているか……?紋章の話を」
「覚えてますとも、だけど勇者様が紋章になってしまったら私はどうしたら……」
「その時は勇者を探し出してくれ。そして俺が創った紋章を受け取ってくれと言ってくれないか?ゲホッ」
「分かりました……もし私の前から居なくなるのなら今夜共に寝てもいいですか……?」
ハイルングは俺に恋をしているようで口に出せずにいるようだ。普段なら断っていたのだが今になって不思議と嫌な気持ちではなかった。
「好きにしたらいい」
「ありがとうございます……」
こうして俺は最期の日まで過ごしていき、ハイルングは俺が紋章になる準備をしていったのだった。
(しかし子供の顔を見ずに死ぬなんてな、飛んだ不幸者だな俺は……それに悪に落ちていった魔物や罪人を裁いて行ったおかげでハイルングと同じ場所に行けなさそうだな)
俺は生まれてくるであろう子供の顔を思い浮かべたり今まで断罪してきた魔物や罪人の死ぬ間際の顔が寝ている時にフラッシュバックしてくるのだった。
そして数日後、紋章になる手順のすべての用事が終わり、俺はいよいよ紋章になるのだった。
「……ハイルング」
「どうかされましたか?」
「先日は派手に暴れていたが大丈夫か?」
「ええ、きっちり致しました」
「ああ……その……初めてハイルングに弱みを見せると思うが……子供を頼んだ」
その時俺の顔は勇者の顔ではなく、ごく一般人の顔だった。
「はい……その顔含めて私の夫です」
「ああ、そう言ってもらえると助かる。それでは行ってくる」
俺は空の紋章に手を触れた。
(これで未来の勇者が俺の力を使ってくれるだろう……)
足先から紋章に吸い込まれていく姿をハイルングはきっちり見ていただろう。そして俺の体が紋章にすべて入るとハイルングがその紋章を抱き上げた。
「ああ……旦那様……この姿になってもいとおしいです……」
そして俺の紋章はハイルングが立ち上げた宗教の信者たちが立派な神殿を建て、そしてそこに俺の紋章が安置されたんだ。
最初の勇者の話を聞き終わった私はふと涙が出ていた。
「何だか涙が出てしまいますなぁ~」
「そんな涙を出す事なのか?」
「それでハイルングと言う人はどんな人だったんですか?」
「とっても奥手で可愛らしかった。旅をしていた時はパーティーメンバーの心の癒しになっていたな」
「……そのハイルングと言う人は人間だったんですか?」
「いや、人間ではなかったな。確か耳が長くて年齢は三桁と言っていたな……」
(耳が長くて年齢は三桁……なんだかそう言う種族知ってるような気がする)
私は家に居候しているメンバーの中でその特徴が当てはまる種族を思い出していった。
「フェアシュタント……もしかしてエルフだった?」
「そんな種族名だったような気がするな……」
「なら少しだけ来てほしい事があるんだ」
「どこに行くんだ?」
「古代エルフの種族の村に行きたいんだ、だけど私一人だと危ないからついてきて?」
「分かった、ついて行こうかな」
こうして私たちはハイルングという人物を尋ねるためにいろいろと知っていそうな古代エルフの長に聞きに行くのだった。
最後まで見てくれてありがとうございます。
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