93話 静かな恋心
無事に次の街に辿り着いた私たち、日没まで少し時間があるので大広間に顔を出したのだった。
(街の様子はかなり落ち着いた感じだな……だけど人間以外の種族が見当たらない)
恐らくこの街は元々ウンエントリヒ王国の傘下だったのだろうか、勇者には熱い視線、私たちには冷たい視線を送っているような気がしていた。
「しかしこの街はゴミが一つも落ちてないのじゃ」
「確かに落ちてないね、誰か掃除をしてるのだろうな」
街はゴミ一つ落ちておらず、植え込みにもゴミが入ってなかった。そして宿に入ると私たちはくつろぎ始めた。
「リョウはいったいどこに行ったんだ?」
「外で鍛錬をすると言っていたのじゃ。ついでにムートも一緒に出ていったのじゃ」
「あの二人は戦士だからな、何か惹かれるところがあるのだろう」
私とマーチャはリョウを探しに外に出た。すると宿の目の前の広場でリョウとムートが剣の鍛錬をしていた。
「そう、剣は真っすぐに持つんだ」
「このままキープするのが難しいんだよな……」
「それは腕の筋力の無さだな。筋トレをするんだな」
私とマーチャがそんな光景を見ているとどこからか視線を感じた。
「マーチャ、今誰かが見てたような気がするんだけど」
「そうなのじゃ?」
(今感じた恐怖は何だったんだ?)
私は周りを見渡した、すると建物の陰からこちらを見てくる人の影があった。
「マーチャ、こっちを見てくる影があった」
「なら少し聞いてみると良いのじゃ。どうして儂らを見てくるのかを」
私は人の影があった場所に向かった。
「あの~?誰かいますか?」
(と聞いても絶対答えないんだよなぁ)
私はファイアで周りを照らしてみた、すると黒い布で身を包んだ人が現れた。
「……もしかして私たちを見てた?」
「はい……」
私は声だけで目の前に居る人の詳細が分かったのだった。
(この声聞いたことがある、昼間の暗殺者だこいつ!?)
私はファイアを奴に撃とうとしたがやめてくれと暗殺者は懇願した。
「やめてください!私は敵意が無いですよ!!」
「か弱い声で言われてもなぁ……とりあえずパン食べな?お腹空いてるだろう?」
私は暗殺者にパンをあげた。
「どうしてお腹が空いていると分かったんですか?」
「リョウに負けた後、こっそりついてきていただろう。だからご飯を食べる暇なんてなかっただろう」
「……そうだけど」
暗殺者はパンをかじり、私がどうして優しくしてるのか気になったようで質問をしてきた。
「しかしどうして私に優しくするんだ?」
「リョウが生かしたんでしょ?リスクがあるのにどうしてついてきたのかなって聞きたいんだよ」
「……ここだけの話にしてくれないか?」
「ああ」
暗殺者は顔を赤らめながら告白した。
「私……勇者様に恋しちゃった」
「恋事でリョウを追ってきていたのか……あんな男ろくでもないぞ?」
「いいえ、絶対あの方は私を導いてくれるんです……!」
どうして暗殺者はリョウの事を好きになったのかは教えてくれなかった、だが結婚はしたいと言っていた。
(この事をリョウに話すべきか話さないべきか……どうしたものか)
「おーい瑞希、まだ帰ってこないのじゃ?」
「今から行くよ!ちょっと待ってて!」
マーチャは私が帰ってこないのを不審と思い、声をかけてきたのだった。
「ついてくるのは勝手だけど私たちには関わらないでね」
「分かった、でも勇者様が危ないときは飛び出すから」
私は少し笑い、そしてマーチャの元に戻っていった。
「何かいたのじゃ?」
「いいや、何もいなかった。それで鍛錬は終わり?」
「とりあえずリョウは強くなったと言える」
「おう!」
こうして一日が終わり、神殿までの残り距離は後2日はかかる距離だったがそれは徒歩での話。翌日街と街をつなぐ馬車に私たちは乗り込んで神殿の近くの街まで楽に移動するのだった。
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