9話 工業の知識が皆無
翌日、私たちは小麦を小麦粉に製粉しようとしていたが肝心な物を忘れていたのだった。
「ねぇマーチャ、これってどうやって製粉するの?」
「そりゃもちろん製粉機を使うのじゃ……しまったのじゃ!!!製粉機を作ってなかったのじゃ!!!」
そう、製粉機や脱穀機が無く、買って来るにも専門の人に頼まなければいけないのだ。
「これは困ったのじゃ~」
(製粉機や脱穀機を作るのにどれだけ金を積めばいいんだ?)
私たちは乾燥した小麦の前で頭を抱えていたのだった。
「奥の手は儂らの手で脱穀する覚悟をしないといけないのじゃ……ひえぇ~」
「それにパンを焼くのならかまども必要ですよね……あれ、これって必ず腕のいい職人を呼ばないといけないね」
たまたまこのあたりを歩いている腕のいい職人は物好き以外いないだろう。
「腕のいい職人を誘拐してくるのもアリなのじゃが明らかに評判に関わるのじゃ~」
「誘拐は駄目ですよマーチャ」
「うーむ、アイツは使い物にならなさそうでグリュックは働かせたくないのじゃ~」
私はマーチャの暴走を止めつついい案を考えていった。
(今この家には腕のいい職人が必要だ、どうしたものか……)
この問題は幸運以外に人望が必要になってきそうだった。
「そうじゃ!度々来る勇者候補の中から誘拐してきて腕のいい職人に仕上げるのはどうじゃ?」
「やめてくださいよ、逆に反感を買ってこの家を壊しに来ますよ?」
「それはそうじゃな……」
その時どこかから地響きが鳴り響いた。
「おっと、地震か?」
「いや、これは地震じゃないのじゃ。あっちを見るのじゃ」
マーチャは森の方角を指さした。
「あそこから土煙が見えたのじゃ」
「そうなの?一旦見に行ってもいい?」
私は土煙が上がった場所を見に行った。
「儂も行ってみるのじゃ、瑞希はまだ弱いのじゃ」
「戦闘技術が無いから助かるけどドストレートに言うのね」
私とマーチャは土煙が上がった場所が気になって向かったのだ。
(とても草が生い茂ってるなぁ、とても動物が過ごしやすそうで野生の生き物がいそうだな)
「瑞希はこの森の事はどう思ってるのじゃ?」
「野生の生き物が生息していそうな場所だね、マーチャはどう思ってるの?」
「肉の宝庫」
どうやらマーチャは動物を肉と思っているようだった。
(マーチャって焼き肉が好きなのか?なら薬味を買ってバーベキューをするのはアリかな)
そして木がごっそり無くなっている場所があり、私たちはその場所に向かった。そこにあったのは何かが墜落してクレーターが出来た跡だった。そのど真ん中に人型の生き物がいた。
「……飛ぶのが苦手なドラゴン族なのじゃ」
「ドラゴン族っているんですね」
「気絶しているのじゃ……どんなスピードで森に突っ込んだのじゃ?」
木々がなぎ倒されていてこのドラゴン族を見つけやすかった、これも幸運なのか?
(このドラゴン族は今の状況は不幸って感じてるかもなぁ~)
「可愛そうだからベッドに寝かせてあげるのじゃ~」
「そうですね……しかし重たくないですか?」
「基本的にドラゴン族は体が重いのじゃ、だから重たくて当たり前なのじゃ」
私とマーチャはドラゴン族を運ぶのに苦労し、数十分かけてきた道のりを数時間かけて戻ったのだった。
「しかし重たくて腕が悲鳴を上げてるのじゃ……」
「あと少しで家だよ、もう少しの辛抱だよマーチャ」
私はマーチャの心配をしつつ周りからオオカミが来ないか警戒していた。だがオオカミはこっちに近寄ってこようとしていたがこの間ボスのオオカミをやられた事を思い出して襲ってこなかった。
「うおおおお!!!最後の気力なのじゃー!!!」
私とマーチャは無理やり家にドラゴン族を引きずり込み、一階の寝室に寝かせた。
「二階まで上がってたら絶対腕が死んでたのじゃ……」
「とりあえずお疲れ様、ドラゴン族の人が起き上がったら私が話をしておくよ」
「よろしく頼むのじゃ……儂は少し休憩してくるのじゃ……くわばらくわばらなのじゃ……」
マーチャは何故か私の家の一室に寝室を構えていたのだった。
(どうしてみんなは各々好き勝手に住み始めるのかな……大歓迎なんだけど一声をかけてからにしてほしいな)
これは余談なのだが今日一日、シルヴィアスは森に入って動物が居るのか探索していたのだった。これは肉が食べたいと言う事なのだろう。だが動物を狩猟する前に必要な設備があるのだ。それは冷蔵庫、食品を長く保存するために必要なものだ。この問題は腕のいい職人がこの家に住み着いてからにすることにしたのだった。
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