81話 本当は優しい夢女
私とマーチャはサキュバスクイーンの城から商人ギルドの近くに移動してきた。もうとっくに辺りは夕暮れ時で私たちは休める場所を探した。
「しかしここに夢を食べるサキュバスが現れるのか?」
「サキュバスクイーンが教えてくれたからかくじつせいがあるのじゃ、何時間でも待つのじゃ」
「暇だし魔法で遊んでおこうか」
私は手のひらの上に小さな魔法を出して遊んだ。
(こうして遊んでいるけど魔法の練習になっている、時間の使い方が上手いかもな)
魔法で遊んでいると辺りが暗くなっていきあっという間に夜になった。
「マーチャ、すぐそばに居るよね?」
「そばに居るのじゃ、真っ暗じゃから見えないのじゃ?」
「そうだ」
マーチャはこっそり私の肩に手を置いてすぐそこに居ると知らせてくれていた。そして数時間が経ち、足音が聞こえてきた。
(足音が聞こえてきたな……一人のようだけどまさか?)
「マーチャ、もしかしてこの足音って探していたサキュバスだよね?」
「ああ、近づいてきているのじゃ。儂が出るのじゃ」
マーチャは足音の主に話しかけに向かった。
「やぁやぁ、どうして儂がここに居るか分かるのじゃ?」
「魔王様……どうかされたんですか?」
(この声が記憶を食べるサキュバス……なんだか大人しめの声だな)
激しめの声と予想していた声とは違い、必ずクラスに一人いるおとなしめの子の声が聞こえてきた。
「ちょっとあなたに聞きたいことがあるから少しいいのじゃ?」
「いいですけど一体何を聞きたいんですか?」
そう言いながら私の元に連れてきた。
「人間……?」
「儂の親友の瑞希なのじゃ」
「何が行われているのか分からないけどよろしく」
「そう言えば人間にはこの暗闇見えないのじゃ、ファイアで辺りを照らすのじゃ」
マーチャは手のひらにファイアを出して辺りを明るくした。そしてマーチャの隣に立っていたのは紫のゴスロリ服を着たサキュバスだった。
「この人がトラウムフレッサーだよね?」
「私がトラウムフレッサーだけど……どうかしたのです!?」
トラウムフレッサーはおどおどしていて可愛らしかった。
「最近男の子に出会ったことある?」
「あるけど……それがどうかしたんです?」
「その子の記憶を戻してほしいんだ、多分トラウムフレッサーはその子の記憶を食べたはず」
「……食べた記憶は戻らない」
そうトラウムフレッサーは静かで冷たい風と共に言った。
「そうなのか」
「だけど完全に食べたのはあの男の子のショックを受けた記憶、その弊害でそのほかの記憶も食べちゃった」
トラウムフレッサーはそう言うと私が座っている岩に座った。
「ショックを受けた記憶?」
「あの子の場合だったら仲間をアラクネに食べられた記憶、そして異世界で死んだ記憶と虐められていた記憶」
トラウムフレッサーが言った言葉に異世界という単語があった。
(もしかしてあの男の子は転生者なのか?だとしたら出会った早々に記憶を奪われたって事だよね)
「もしかしてその男の子って転生者なの?」
「多分転生者、分からないけどね」
その時トラウムフレッサーが私の頭に手を乗せてきた。
「記憶、見せてもらってもいい?」
「いいぞ」
トラウムフレッサーが私の記憶を見ていると何かを確信した笑みを浮かべた。
「やっぱり。あの男の子とあなた、同じ異世界から来てる」
「そうなの?」
「ええ、もしあの子の記憶を呼び覚ましたかったら記憶を教えてあげる。もう一度頭に触れるよ」
トラウムフレッサーは私の頭にもう一回触れた。すると男の子の記憶が一瞬にして脳内を駆け巡った。
「ガァアアア!!!」
「途轍もなく荒っぽい方法をするのじゃ……」
「長い時間他人の記憶を流したら人格が崩壊するからね……伝えるなら一瞬で」
私は膝をつき、頭の中を整理していった。
(この記憶はあの男の子の記憶……ハンバーグに母のような温かい笑み……家庭か)
トラウムフレッサーはもうすでにどこかに行く準備をしていた。
「これだけは言っておきます、私が見せた記憶はあの男の子の記憶を呼び覚ますヒントになるかもしれません」
そう言ってトラウムフレッサーは闇に消えた。
「瑞希大丈夫なのじゃ!?」
「ああ……数十年分の情報が流れ込んできた……頭がかち割れそうだ」
(一般人なら気を失ってるかうずくまってるぞ……これは……)
私はマーチャに支えられながら家に帰っていったのだった。だがこれで男の子の記憶を呼び覚ます方法が分かったのだった。
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