80話 夢を喰らう夢女
サキュバスクイーンは対等に話をしなければと地面に座った。
「……椅子とか無いのじゃ?」
「椅子はあの椅子だけです……」
「もしかしてこの城自体があなたの家なのじゃ?」
「そうです……」
マーチャは少しため息をつきサキュバスクイーンは冷や汗を滝のように流している様子だ。
(でもマーチャは怒ってなさそう、何か考えているのか?)
「それで休まずにベビーサキュバスを育てているのか?」
「どうですね~まぁこの子たちはこのダンジョンに住んでいる配下の子供……そう言えば魔王様、入ってくる際に配下のサキュバスたちはどうしました?」
「ああ、あれおぬしの配下じゃったか。サンダーエクスプロージョンで気絶させてあるから安心するのじゃ」
「殺しては無いという事ですね……」
「のじゃ」
サキュバスクイーンはどこか安堵した様子で話し始めた。
「それで聞きたいことはどういう?」
「記憶を奪うサキュバスっているのかなって思って聞いてみたのじゃ」
「記憶を奪うサキュバス……聞いたことは無いけどそれに似たサキュバスを聞いたことはあるね。でもどうしてそんなことを調べてるの?魔王様なら部下を使って調べることが出来ると思いますが」
「部下を動かせば簡単に調べがつくかもしれないのじゃ、裏を返せば時間をかけたのに情報がゼロと言う事も考えられるのじゃ。じゃから儂が直々に調査をしているのじゃ」
サキュバスクイーンはマーチャの様子を見ていた、するとこんなことを言った。
「何か隠し事をしていますよね、魔王様」
「いいや、隠し事はしてないのじゃ」
(隠し事……?私に伝えられていない物事は無いはず……)
「私は嘘を見抜く能力に長けてるんです、ですから本当の事を教えてください。例えばどうして記憶を食べるサキュバスを追っているのか……を」
(記憶を食べるサキュバス!?そんなサキュバスも居るのか?)
マーチャは何かを伝えようと必死になっていたが何故か声に出せなかった。私はマーチャを見かねて正直に話した。
「私とマーチャが何故記憶を食べるサキュバスを追っているか、それは記憶喪失の男の子が関係してるんですよ」
「へぇ……男の子が……」
「瑞希、こやつは腐ってもサキュバス、あの子の事を教えたら何をするか分からないのじゃ」
「魔王様は少し黙っててください」
「ぐぬぬ……」
私は正直に男の子の事についてサキュバスクイーンに話した。
「その記憶喪失の男の子の記憶を取り戻したいんです、それでキス・夜・紫の服という単語を思い出していろいろな人の助けもあってここに来たんですよ」
「なるほど、つまりその男の子は記憶を食べるサキュバスに襲われたから復讐と」
「襲われたのかは分からないんだけどね」
「普通サキュバスと言うのは自身の欲望を抑えるために何かしら趣味を全力で行う。だが一部のサキュバスは趣味で発散できないから人間を襲ってしまう。だが記憶を食べるサキュバスというのは変わり者なんだよね」
サキュバスクイーンはそばに潜り込んできたベビーサキュバスを撫でながらこう言った。
「夢を食べるサキュバス、それは夢を食べ物にしているサキュバスだ。逆に記憶を食べるサキュバスの食べ物は記憶と言えるんだ。その男の子は全ての記憶を無くしているのか?」
「全ての記憶を無くしているけどアラクネのゲデヒトニスにお姫様抱っこをされたらその時の記憶が蘇ったんだ」
「蘇った記憶、教えてくれない?」
「ゲデヒトニスにお姫様抱っこをされた事しか思い出せない様子だった。だけどこの出来事の前はね……同行していたパーティーメンバーがアラクネに食べられたらしいんだ。その事は思い出せなかったらしい」
「なるほどね、普通は記憶を食べるサキュバスは一部の記憶を食べる。だがすべての記憶を食べてショックになり得ない事だけを思い出せる……ちょっときな臭いな」
サキュバスクイーンは立ち上がり、この部屋唯一の椅子の裏から本を取り出してきた。
「その本は何なのじゃ?」
「この本は私が出会ったサキュバスの情報を載せた本、ここに探しているサキュバスがいたはず」
サキュバスクイーンが本をめくっていくととあるページで指が止まった。
「多分だけどこのサキュバスが男の子から記憶を食べたんだと思う」
私とマーチャはそのページに乗っているサキュバスの情報を見た。
「名前はトラウムフレッサーで性別は女……」
「記憶を食べるサキュバスなのじゃ」
「住んでいる場所は分からないけど徘徊場所は商人ギルドの周りだね」
「今日の夜に出会えると良いのじゃ」
「そうだね」
「早速会いに行くのね、気をつけて会ってね」
「誰に心配してるのじゃ?儂は魔王ぞ?」
「そうでしたね、それでは気を付けて帰ってください~」
こうして私とマーチャはトラウムフレッサーという夢を食べるサキュバスの情報を手にし、徘徊場所に向かった。そしてこの事を知らないトラウムフレッサーは私とマーチャが目の前に現れたことに困惑するのだった。
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