55話 五種同時詠唱
クエストの場所にたどり着いたがそこは洞窟になっており一寸先は闇で音は何かが聞こえてきていた、だがかなり奥から聞こえているようでしっかりと聞き取れなかった。
「何だか聞こえるんだけど」
「確かに何者かが声を出しているのじゃ……じゃが奥すぎて聞き取れないのじゃ」
「気になるし進んでみるか」
私とマーチャは洞窟の中に入っていった、中は思ったより快適でほんのり涼しい程度だった。私はエーテルロジックスタッフの先にファイアを出して光源を確保した。
「土の壁が続いてるなぁ……ここに住んでたら気が滅入りそうだけど」
「魔族はこういうじめっとした場所を好むのじゃ。それは他種族を襲うためと言われてるのじゃ」
(そういえばマーチャの言う魔族と魔物の違いって何だろう?)
私はふと気になったことをマーチャに言った。
「気になったんだけどさ、魔族と魔物って何が違うの?」
「魔族は他種族とある程度の意思疎通が可能、魔物は自らの意思より本能が優先されている、野生動物と変わりないのじゃ」
「本能が前面に出てるのが魔物で理性が前面に出てるのが魔族って事ね」
「そう言う事なのじゃ」
マーチャの魔族と魔物の違いの教えを聞きながら洞窟の奥に進んでいくとかなり冷えてきていた。
「少し冷えてきたのじゃ……」
「確かに冷えてきたね、ファイアの出力をあげるか」
私はエーテルロジックスタッフを介してファイアの出力を上げた。こういうことが出来るからエーテルロジックスタッフは便利だ。
「温かいのじゃ~」
マーチャが私が出したファイアで暖をとっている内に声が鮮明に聞こえ始めた。その声は微かながら助けを求める声だった。
(これは助けを求めてる声!?だけどどこからなんだ!?)
「瑞希、これは少しだけ急がなければいけないかもなのじゃ」
「分かってる、だけどどこから聞こえてるのか分からない!」
声が聞こえているのは分かる、だがどこに人がいるのか分からないのだ。
「仕方ないのじゃ、声が聞こえる方向に向かって走るのじゃ!」
「ちょっとまってマーチャ!」
私はマーチャの後を追って走った、すると声がどんどんと大きくなっていき、それと同時に金属が地面を転がる音が聞こえた。
「瑞希!もう間に合わない!ファイアを向こうに放て!」
「どうなっても知らないよ!!!マーチャ!」
私はマーチャが指さした方向に向かってファイアを打った、するとエーテルロジックスタッフの先から出ていたファイアが私が出した魔力に反応してビームを放ち始めた。
「グォルォ!?」
洞窟の中でゴブリンの断末魔が木霊した。どうやら私が放ったビームは命中していたようだ。
「なるほどな、女性冒険者を襲おうと服をビリビリに脱がせていたのか。卑劣な奴め」
私とマーチャが涙を流して虚ろな目をしている女性の元に向かった、すると足元にはその女性の仲間だった物が転がっていた。
「少し遅くなったけどな、私と魔王が来た!」
「魔王……ひっ!?」
女冒険者は怯えながら剣を構えた、それを私はエーテルロジックスタッフで止めた。
「あなたは今ボロボロだ、そこで待ってて」
私は女冒険者の横に落ちていた薪にファイアを打ち、松明にしてあたりを照らし始めた。
「マーチャ、このゴブリンたちは冒険者を襲って武器や防具を盗み、挙句の果てには自身の欲望のままに行動してるぞ」
「ああ、どうやら犯してはいけない事をしでかしたようじゃな」
マーチャの周りが歪んでいった。どうやらマーチャは怒っているようだ。
「お前らは万死に値する、魔王の我に処刑されるのだから嬉しいのじゃ?」
そう言うとマーチャは一気に5つの魔法を唱えた。それは火、水、風、雷、土の5種の基本魔法だった。だが魔王が唱えた魔法はゴブリンを一瞬で殲滅していった。
「凄い……私はかないっこないな」
「ああ、私もマーチャのこんなガチの魔法を見たけど勝てる気がしない……」
そしてマーチャは私と女冒険者の元に歩いてくると破れた服を見た。
「……派手にゴブリンにやられたのじゃな」
「あなた……どうして魔族なのに人間の仲間をするの?」
「魔族でも人間を助けたいってのは当然の心理じゃろ。どうして儂ら魔族を野蛮な奴らと同じにしてるのじゃ?」
「ごめんなさい……」
マーチャは服を重ね合わせ、肌や恥ずかしい部分が見えないようにしていた。
「これで恥ずかしくないじゃろ。それで地面に転がってるのはおぬしの仲間だった者じゃな」
「はい……ゴブリンに棍棒や剣で斬られて……うっ……オエェエエ」
女冒険者はあまりのショックで吐いた。私は女冒険者の背中を叩いたのだった。
「ほら、楽になって」
「ごめんなさい……」
(これは心にも傷を負ってる、二次被害も予想できるな……どうしたらいいんだ?)
明らかに女冒険者は二度と冒険に出れないほど心に傷を負っているようだ。
「マーチャ、この仲間の人って生き返らないの?」
「死んで間もないのなら蘇生できるのじゃが……ここまで惨殺されていると蘇生魔法は効かないのじゃ」
「そうか……苦しい事を聞いて悪かった」
ゴブリン討伐のクエストは終えたがこの女冒険者をどうしようかと私とマーチャは悩んでいたのだった。一旦外に出て落ち着かせるか、一層の事楽にさせるか、選択肢は限られていたのだった。
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