52話 偏見は消えない
翌日、私とマーチャはオルドヌング王国とウンエントリヒ王国の和平交渉に同席していた、和平交渉の主導権は優位のオルドヌング王国が握っていた。
「こちらから要求する物事は5つ、一つは慰謝料、二つは戦争に関わった王室や王国直属の兵士の裁判権」
この時点からウンエントリヒ王国の人たちはザワザワし始めた。それに構わずヴェルメ王は要求することを述べていった。
「三つは領土の譲渡。四つは今後の関税」
「そうか……なら話を始めよう」
「まだだ。五つ、我が国が結んだ国、覚えているか?」
ヴェルメ王が言ったことにウンエントリヒ王国の人たちはただならぬ気配になり、空気がひりつきだした。
「魔族の国や魔王が住んでいる場所に攻撃を仕掛けると我が国を攻撃されたと考え、ウンエントリヒ王国に報復をする」
それは私たちを守るためにヴェルメ王がウンエントリヒ王国に条約として認めさせることだった。
「どうしてだ!魔族は穢れた種族、お前たちも穢されたのか!」
「穢れとかなんだとか僕に言う権利は無いのかもしれない。だけど共通点は生きていることだ」
ウンエントリヒ王国は剣を抜こうとしたが交易ギルドの一般の人たちが睨みを利かせて抜かせないようにしていた。
「どうしても無理な種族だったら関わらない方がいいんだ。触らぬ神に祟りなしってね」
触らぬ神に祟りなし、その言葉は戦争のトリガーになり、死んだ外務大臣がオルドヌング王国を例えた言葉なのだ。
「だが魔族とは一生分かり合えない、そう思っている」
「分かりあえなくて結構、攻撃したら我が国が報復攻撃をするという事だけです」
(ヴェルメ王は子供なのにウンエントリヒ王国の大人相手に食って掛かってる……凄い)
ヴェルメ王は子供と忘れるほどの凄い剣幕でウンエントリヒ王国に条約を突きつけたのだった。
「これに承諾しなかったらどうするつもりなんだ……」
「魔族と共謀してウンエントリヒ王国の王室を捕まえる、ただそれだけ」
その事を言ったヴェルメ王の周りはとても驚き、商人ギルドに居た一般人はこの空気に耐えれずに商人ギルドの端っこに移動した。
「……1から4までの条約にはサインできる、だが5は譲れない」
「我が国は1から4までの条約は締結できなくてもいいと思っている、だが5だけは締結しなくてはいけないと思っている」
ここで両国の意見が真っ二つに別れたのだった。すると両国の兵士が剣を抜き始めた。
「良いだろう。ならここでヴェルメ王、首を貰う!」
「やっぱり偏見ってのは簡単に払拭できるものではないか」
「ヴェルメ王、こちらへ」
「ああ」
こうして和平交渉は圧倒的に決裂し、商人ギルドで戦闘が行われることになった。
「まぁ儂はこんなことになるのは分かってたのじゃ」
「そうなの?」
「ああ、人間の戦争はどちらかがボロボロにならなければ降参しないのじゃ。じゃが今回のケースはどちらもピンピン、交渉は決裂するのじゃ。それに人間の性じゃろうか、親が腐っていれば子も腐る。瑞希の居た世界で言ったら蛙の子は蛙と言う事なのじゃな」
「つまり交渉決裂は必然だったのね」
「のじゃ」
マーチャはそう言うとワンドと魔導書を手に持った。
「仕方ないのじゃ、儂らも加勢するのじゃ」
「だね、交渉決裂だったらめちゃくちゃにやってもいいんだね」
私たちも戦闘に加わったがウンエントリヒ王国の交渉役はもう既に死んでいた。
(なるほど、ウンエントリヒ王国の王様や重要ポストを先に逃がし、使えない交渉役を切ったのか。とんでもないな)
「だけど問題なぁい!!!」
私はエーテルロジックスタッフで魔法を放とうとした、だがその行動を止めた人物がいた。
「やめて、そのスタッフで魔法を打つとこの建物ごと消え失せる」
「ならどうやって制圧したら」
そう言うとスーツ姿の人が指を鳴らした。
(あれ、この服って私が元居た世界のスーツだよな……もしかして……?)
私はその人の服装で何かを察知した。そう、この人は転生者なのだ。
「消えると言われていた世紀のパンチをお見せしよう」
そう言うとウンエントリヒ王国の兵士に一瞬のうちに近づくと頭の鎧ごと拳を振り抜いた。
「フンッ」
「がばぁぁぁああ!?!?」
頭を打ち抜かれた兵士の頭が地面にめり込み、気絶した。
(凄い……拳の威力が人間じゃない!!)
「まだまだァ!!!」
オルドヌング王国の兵士より目立っていたのは乱入してきた転生者だった。そして一分後、見事にウンエントリヒ王国の兵士全員が破壊されて地面や天井に埋まっていたのだった。
「ふぅ、私が営業するギルドを破壊しちゃったな……」
「もしかして……この商人ギルドを仕切ってる人なの!?」
「そうだね、和平交渉が決裂するとは思ってたけど……日本人より血気盛んだな」
(やっぱりこの人転生者だ!!)
「何その目」
転生者は私の目を見て気味が悪がっていた。
「あなた、何の神に好かれたの!?」
「は?何を言ってるの?頭がおかしくなったの?」
「あなたもしかして転生者なの!?」
「そうだけど?もしかしてあなたも?」
「そう!私は幸運の文字に宿る神に好かれた!」
どうやらこの人は私が転生者と思っておらず、冷遇していた。だが転生者とわかった後はとても温厚になった。
「幸運か、なかなかいいね。私は商売の文字に宿る神に好かれたから転生できた、つまり転生するには神に好かれることが大事なのか……」
「そうだね、私の場合は不運すぎたから幸運の文字に宿る神に好かれたんだけどね……」
「そうか~フフ」
「何だか会話に混ざってはいけないような感じがするのじゃ……」
そして私たちは一旦ウンエントリヒ王国を退け、交易ギルドの修復を手伝うのだった。だがここで同じ転生者と出会うことは本当に奇跡だと思う、これもLUCKが影響しているのだろうと思ったのだった。
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