19話 裏切り
家に帰ってきた私たちは家に入っていったがマーチャだけは外にいた。
「……追ってきているのは分かったのじゃ、ムート」
「馬の足音やプレートアーマー同士が当たる音で分かるか」
「王国には戻らないのじゃ?」
「どうせ私の居場所はもう無いだろう。だからここに居候させてもらう」
「勝手にするのじゃ」
マーチャも家に入りムートは外の風に当てられていた。それは何かを予見するかのようだった。一方で私はヴァイスに呼び出されて外に出てきた。
「脱穀機と製粉機、あとかまどを作ったぞ」
「ありがと~」
着々と生活基盤が整備されていく中、ムートが私とヴァイスの様子をじっと見ていた。
(なんだかムートの視線を感じるな……それだけ珍しい事なのか?)
ヴァイスはムートに気が付き、私の後ろに隠れた。
「ついてきてたんだ、それでこれからはどうするの?」
「ここに居候する」
ムートはそう言って馬を家の隣に待機させた。
「それでこれは脱穀機と製粉機か?」
「そうだね、最近農業を始めて小麦を収穫し終えたところなんだ」
「平和だな」
ムートはそう言うと急に剣を抜いた。
「えっ!?」
「すまない、どうやら後をつけられていたようだ」
ムートが剣を向けた先に居たのは王国軍の軍団だった。
(もしかして……会合を終えた私たちを殲滅しようとついてきていたのか?)
「これって私たちを殲滅しようと来たの!?」
「いや、私を追って殺そうとしているのだろう。第二王女、もといファウルハイトは嘘の情報を外に待機してあった別分隊に伝え、私の後を追ってきていたのだろう」
ムートは王国軍に向かって走り出し、剣を振り王国軍のプレートアーマーを一刀両断した。
(すごい、あの時マーチャがこの斬撃を喰らってたら明らかに無事じゃすまない威力だぞ!?)
ムートの実力はマーチャの実力に隠れて分からなかったがさすが王国直属聖騎士1番隊隊長と言ったところか。
「私を殺そうとしているのだろう、もう王国には戻らない。これ以上私に近寄るなと線を引く」
ムートは王国軍が近寄ってきたら斬ると警告をしたのだった。だが警告を聞いたのにもかかわらず王国軍がムートを捕まえようとした。
「愚かな奴だ。喰らえ!秘儀・聖痕斬撃!!」
ムートは王国軍のプレートアーマーに傷をつけた。すると傷がどんどんと光り始め、傷の数が5つになると王国軍の兵士の体が光となって消えていったのだった。
(すごい……傷をつけるだけで人が消えた……)
すると騒ぎを聞きつけたのかマーチャが出てきた。
「そこでどんちゃん騒ぎをしてるのじゃ……私も混ぜてくれないですのじゃ?」
手にはシルヴィアスのメイスがしっかりと握られていた。
(マーチャもやる気なのか!?)
戦いの最中、第二王女のファウルハイトが現れた。
「何なの!?この弱虫すら踏みつぶせないの?」
何やら不満を垂れている様子だった。
「いいから攻めなさい!王女の命令よ!」
ファウルハイトがそう言うと無理に士気をあげようと兵士が攻めに来た。
「ムート、ここは共闘といこうなのじゃ」
「ああ、分かった」
ムートとマーチャは見事な連携を取り、どんどんと兵士を消したり気絶させたりしていたのだった。
「この化け物!裏切者!」
兵士が一人、また一人と戦闘不能になっていくとファウルハイトの顔がどんどんと醜くなっていった。そしてムートがファウルハイトの近くに飛んだ。
「チェックメイトだ、第二王女」
ムートは周りの兵士に聞こえるようにこう言った。
「第二王女を人質に取った、解放してほしければこのまま大人しく帰れ、そして二度とここに近づくな」
ムートの顔は全く見えないが声に怒気が籠っていた。そして兵士はファウルハイトが傷つけられないようにその場を去っていった。
「それで、お前はどうして魔王の命を狙う。答えろ」
「昔からの教えがそう言ってるんだ、魔王は人々を傷つけ、民を殺戮していったと」
「私もその言い伝えなら聞いたことはある、だが本人はやっていないと言っている。嘘という可能性はあるがそれよりもどうして魔王討伐に私一人だけ向かわせたのか、それが一番の問題点だ」
そう言ってファウルハイトの背中を蹴った。
「この場から立ち去れ、そしてこの地に近寄るな下賎が」
「立ち去ればいいんでしょ!!!」
ファウルハイトはそう言って王国軍の兵士に退却命令を出し、この場は一旦平和になった。
「ムート、ファウルハイトってどうしてあんなにわがままなの?」
「王様に甘やかされな、いつの間にか傲慢な正確になったんだ」
ムートは何処か悲しそうに言った。
(ムートは昔の王国がいいって思ってるのかな?)
私たちは一旦家に帰り、ムートに部屋を案内することにしたのだった。そしてこの一件を皮切りに王国との関係がますます悪くなっていくのだった。
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