15話 王国直属聖騎士来襲。
昼間になると私とマーチャはヴァイスに頼まれた仕事をしていた。それはファイアでかまどを乾かすことだ。
「魔法ってこんな使い方するのね~」
「平和に利用できる魔法はとことん使い倒していきたいのじゃ~」
私とマーチャが並んでかまどを乾かしていると後ろから金属同士が当たる音が聞こえてきた。
(金属同士がぶつかり合う音……誰だ?)
私は振り返った、するとそこに居たのは白馬とゴテゴテの装備に身を包んだ人だった。馬の馬鎧にはとある国の紋章のゼッケンが着せられていた。
「何か用ですか?私たちは暇じゃないんですよ」
すると目の前の人は剣を抜き私に向けてきた。
「後ろに居るのは魔王だな、どうして一緒に居るんだ?」
その人の声は女の人の声で緊張していなさそうだった。
(真面目に言っても戦闘は回避できないんだろうな……時間を稼ぐか?)
「どうした!答えろ!」
目の前の人は高圧的に私に剣を向けていた。
「この魔王は私と一緒に過ごしているんだ、手を出したら容赦しないぞ」
(言っちゃった~容赦しないぞって言っちゃった~武器なんて持ってないんだよね~)
「そうか、ならお前も同罪だな」
そう言って私に向かって剣を縦に振ってきた。
「聖剣の錆にしてくれるぞ!」
「ひぃぃ!!やっぱりこうなるよね!?」
私は横に飛んでかわした、だが飛んだ先が坂になっていて私は転がっていった。
「何でこうなるの~?」
「待てっ!!」
王国の人は大きい剣を持って私を追ってきていた。
(どうして魔王より私優先で追ってくるのかな!?)
ふとかまどがある場所を見るとマーチャはすでに逃げていて家の上に退避していた。
(魔王が逃げてどうするんだよマーチャ!?!?)
私は昨日と同じく木をよじ登り逃げた。
「こんな木、斬るのも雑作もないぞ!」
王国の人はそう言って剣を一振りして木を斬り倒した。
「嘘ぉん」
木が倒れていき私は再び逃げ始めた。
(私に武器なんてのは無い、なら魔法がある!)
「ウォーター!」
私は王国の人の顔めがけてウォーターを出した、水は太い糸のようになっていて朝方の魔法とは違った。
「くっ……」
(恐らくあの人の鎧に水が入った、これで布に水がしみ込んで動きにくくなったはずだ)
案の定王国の人の動きが少しだけ遅くなり、逃げるのが簡単になった。そしてマーチャが私の隣に立った。
「瑞希大丈夫なのじゃ!?」
「最初に逃げたマーチャに言われたくないね」
「ここからは私に任せていいのじゃ。魔法で仕留めるのじゃ」
「仕留めるってまさか」
「気絶させるだけなのじゃ。無駄な心配しなくてもいいのじゃ」
するとマーチャが真正面につららを出した。
「これはアイススピアっていう魔法なのじゃ。まぁ氷魔法で水魔法の派生形なのじゃ」
マーチャは王国の人のプレートアーマーに向かってアイススピアを打ち込み、プレートアーマーに当たるとその部位が凍り付いた。
「うっ……これしき耐えれる」
「ふむ、瑞希は屋上で見ていてなのじゃ。ここは危険すぎるのじゃ」
「分かった、ありがと!」
私は家に向かって走り、王国の人は私を追って家に入ろうとしたがマーチャが再びアイススピアを打ってヘイトがマーチャに向かった。
「何してるのじゃ?儂の相手をしてくれのぉ~」
「魔王が……ここで殺す!」
私が家の屋上に着くとマーチャがアイススピアで王国の人のプレートアーマーに向かって打っていたが偶に外して地面に突き刺さっていた。
(王国の人はずっと剣でマーチャを斬ろうとしている、もしかして魔法の事なんて知らないのか?)
ずっとアイススピアを受けている王国の人のプレートアーマーはまだ傷一つついていなさそうだった。
「やるのぉ……剣技は優秀だ。だが魔法を知らなさすぎなのじゃ」
「魔法なぞ効かぬぞ」
「チャームや精神攻撃を無効化する魔道具を着けているのじゃ、それぐらい見抜いてるのじゃ」
戦いを見ていくうちに気が付くことが一つあった。マーチャがアイススピアで攻撃している部位、それは足だった。そしてアイススピアが戦いが長引くにつれて地面に突き刺さる頻度が多くなっていった。
(もしかしてマーチャ疲れ始めてるのか?)
「疲れているのか?覚悟!」
足元にアイススピアが突き刺さりまくっている中、奴は飛びかかろうとした。だが奴は空中に固定された。
「何っ!?」
「やっと凍り付いてきたのじゃ。長かったの」
「凍り付いてきた……!?」
「そうじゃ。瑞希を追っていた際にプレートアーマーに水が入ったのじゃ、布は水をよく吸う。つまりアイススピアを戦闘で選択した理由、それはお前を凍らせて戦闘不能にする事なのじゃ」
「そういう事か……完敗だ」
(そういえばアイススピアが突き刺さっている箇所を見ると周りが凍りついてる……マーチャはこれを狙ってたのか!)
私は家を出ると肌寒く、アイススピアの影響で辺りが寒くなっているのだった。
「これは瑞希がとっさの判断でウォーターを奴のプレートアーマーの中に入れてくれたおかげで勝ち取れたのじゃ」
「そうかな……?」
するとマーチャはしゃがみ、王国の人に圧をかけた。
「それでどこの王国の聖騎士団なのじゃ?」
「ウンエントリヒの王国直属聖騎士1番隊隊長だ……名はシュバルツ・ムートだ」
「そうか、腕は動くだろう。このまま凍りながら死んでいくのは苦痛だろう。辛ければこの短剣で自害するのじゃ」
そう言ってマーチャはムートの手に短剣を握らせた。
「瑞希、帰るのじゃ」
私とマーチャはムートに背を向けて家に入ろうとした。ムートは短剣を限りある視界の中見た。
(このまま死ぬのも……彼らに申し訳ない……せめてこの短剣で奴の延髄を……いや、やめておくか。国王からの命令で来てみたが……こんな風に戦って死ぬのは私の本望だ……)
そう言ってムートは短剣を地面に突き刺し静かに死を迎えるのを待った。だがマーチャが真顔でムートの方を振り向くとファイアでムートの体を一瞬包んだ。
「マーチャどうしたの?」
「さっきの行動、見ていたのじゃ。ムートはプレートアーマーの隙間から短剣を見て私たちに投げようとした、だが自身の自我だろうか、投げるのをやめ地面に突き出した。そしてそのまま死のうとした」
「投げようとしていたんですか……」
「自害をせず、かつ無防備の儂たちを傷つけようとしなかった姿勢は評価に値する。一緒にこのムートを家に連れ込んで治療をするぞ」
「ええっ!?」
私はマーチャの言ったことに驚いた。
(どうして王国の人を助けるんだ?戦っていた敵なのに!?)
「ムートを死なせたら駄目じゃぞ!」
「マーチャの考えてることが全く分からないんだけど!?」
こうしてマーチャの鶴の一声でムートというウンエントリヒの王国直属聖騎士1番隊隊長を保護し治療することにしたのだった。まさかの魔王の慈悲を見た私は意味が分からなかったのだった。
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