13話 焼き討ち
夜になるにつれて街の人が持っている松明があたりを照らしながら私たちの家に突撃してこようとしてきた。
「ちょっとラック!?」
私はラックを呼んだ、だが夜の時間はラックが来ないのだ。
(そうだった……一体この状況どうすればいいの!?)
私は家に入り目に入った人にどうしたらいいのか聞いた。
「あれ~?瑞希どうしたの~?」
最初に目に入ったのはゆったりしているシルヴィアスだった。
「シルヴィアス!なんだか街の人が松明を持ってこっちに来てるんだけど!?」
「松明を持ちながら突撃してきてるの?」
どんどんとシルヴィアスの顔が青ざめていくとマーチャにこの事を伝えに走っていったのだった。
「ちょっとシルヴィアス!?」
横の部屋からグリュックがゆっくりと出てきた。
「あらグリュック、どうしたの?」
グリュックの動きを見てると外の様子なんて知らないようだ。
(グリュックはこの状況でも明るくふるまってるなぁ……)
そしてマーチャとシルヴィアスが走って外に出ると少しまずいことになりそうと言っていた。
「マーチャ、これはどういう事なの?」
「恐らく儂がここに居ると言う事が分かったから焼き討ちに来るかもなのじゃ……」
「焼き討ちって……!?」
「しかしどうするじゃの……気合の入った人間どもは説得か殲滅しない限り撤退しないのじゃ……」
どうやらあの松明を持った街の人たちは私たちを焼き討ちに来ているという。
「グリュックを使うのはさすがに気が引けるしどうする?」
「猿芝居を打つとするじゃの……」
そう言ってマーチャは綺麗な服を着たまま地面を転がった。
「マーチャ何してるの!?」
「みすぼらしい服装にしてるのじゃ。人間は弱い同族を助けるからの。その心理に付け込むのじゃ」
「でも多分街の人たちはあなたの事を魔王って思って人外だと思ってるけど」
「……そうだったのじゃ!!!!なら人間の慈悲の心に入り込むのはどうじゃ?」
「それで首スパーからの持ち帰りが一番駄目なのよ!?」
そんな話をしている内に松明の灯りが傍に居たのだった。
「……どうも?」
私たちが固まっていると街の人たちは私たちを捕らえろと命令していた。
「こいつらを捕らえろ!!!」
街の人たちが私たちを捕まえに追いかけに走ってきていた。
「一旦逃げるぞぉおお!!!」
私たちは大声でそう言って街の人たちから逃げ始めた。だがシルヴィアスとマーチャは人間離れした動きですぐに街の人たちの距離を放したが私は人間。当然追いかけられる運命なのだ。
(どうして私を狙ってくるの!?まぁ魔王の近くに居たから魔王の手下と思われるのも仕方ないか)
私は薄暗い森の中に入っていったが街の人たちは松明を持っていた。
「うおおお!!!私は人間なのにぃいい!!!」
私は木によじ登り街の人の追跡から一旦逃れた。
「降りてこい!!!」
「降りたら絶対私を捕まえてあんなことやこんなことをするんでしょ!!!私はただスローライフを送りたいだけなのに!!!」
街の人たちは木をゆすったり叩いたりして私を落とそうとしていた。
(誰か助けに来てぇ!!!てか転移魔法で家に戻ればいいじゃん)
私は頭を冷静に戻して家に転移したのだった。
(とりあえず危機一髪ってところだったね)
「瑞希大丈夫だったの!?」
最初に逃げたシルヴィアスとマーチャが戻ってきていたのだった。
「それであの人たちはどうするの?森の中に連れ込んだんだけど」
「恐らくチャームで一網打尽に出来ると思うけどそうしたら街全体を仕切ることになるから嫌なのじゃ」
「ですね~どうします?」
「どうするか考えてるんだよこの間抜けのじゃ!!」
(街の人をどうにかして説得して無事に街に返すのが今の目標だけど……どうしたらいいんだ?家に住んでいるのは私以外魔族、人間なのは私だけ……)
「あれ?まともに交渉できるのって私だけ?」
「そういう事になるのじゃ……」
その時私に降りかかるのは責任という二文字だった。
「ってもう帰って来たぞ!?」
「瑞希、頼んだのじゃ」
「ええっ!?」
私は慌てたが街の人に大声をかけた。
「ちょっと止まってください!どうして私たちを追いかけるんですか!?」
私は喉の震えや手の震えを抑え、勇気を出した。すると街の代表らしき人が街の人を止め、話しかけてきた。
「それは当然だろう!魔王を討伐すれば我が街の評価が高まり王国から報奨金として聖金貨100万貰えるんだ!」
(聖金貨100万枚……銅貨に換算すると何枚だ?)
「聖金貨1枚で10億……だから聖金貨100万は……1000兆!?」
私はあまりにも大金すぎて気絶しそうになっていた。だが何とか気を持たせた。
「そうだ、大金さえあれば俺たちは安泰だ!」
「あなたたちは命と引き換えに金を得るの?」
「それは……」
始めた奴らの心が揺れたような気がし、私は畳みかけた。
「生物は自らの自我に任せて動く、人間は自我に動く人もいれば他人のために動く人もいる。それに魔王がしでかした事、分かるのか?」
「いや……それは分からない」
「魔王は人間の住処に魔族が近寄らないように抑制しているんだ、そのことが分からずに魔王を捕まえようとしていたのか!?」
私はマーチャが言っていたことを街の人たちに伝えた。すると周りからざわざわと声が聞こえ始めた。どうやら私の言ったことが本当の事だという声のようだ
「もし魔王を捕まえたのなら人間の住処は魔族に滅ぼされる。だからこんなことをやってないでさっさと子供を寝かしつけに言ったら?」
「今日のところはここで退散する」
そう言って街の人たちがぞろぞろと山を下りていった。
(とりあえずはこれで危機は去ったって事かな)
もしマーチャに出会ってなければ私たちは捕まって家が焼かれていた。縁の力が私たちのスローライフの礎を救ったのだ。
「今日はとにかく疲れたのじゃ、寝るのじゃ~」
「魔王様おやすみです~」
私もドッと疲れが出ると力だ抜けていった。
「今日はとても疲れた、マーチャは寝たし私も寝るか」
「そうだね~私と一緒に?」
「拒否したい、けど今日だけは一緒に寝てもいいかも」
「やったぁ、なら一緒に寝よ~」
私はシルヴィアスに支えられながら家に入り、一緒にベッドに潜ったのだった。
「そういえばシルヴィアスはサキュバスだよね……まさか」
「襲わないよ~私は同性を襲う趣味は無いからね~」
そして私とシルヴィアスはベッドで眠ることにした。ベッドが狭くて体と体の距離が近く、お互いの肌の温度が感じられ心の距離がぐっと縮まったような気がしたのだった。
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