1話 不運と言葉に宿る神
空は曇り、少しだけ辺りが暗くなっていく中で私はコンビニのバイトに徒歩で向かっていた。
(コンビニまであと少し、雨降らないでほしいよぉ)
目の前に黒猫が出てくると私を見てから足元を横切った。
(このあたりの野良猫かな、でもあの黒猫見た事が今までないなぁ)
すると雨が降りそうな雲が出てきているのに気が付き私の足がどんどんと速くなっていったがポツリポツリと雨が降り始めた。
「んなぁ~」
雨が強くなっていくとセットした髪型が雨によって濡れていった。それと同時に私の運がどんどんと下がっていった。最初の不運は横をトラックが傍を通ったおかげで全身に水しぶきがかかった。
「んぐぅ」
私は情けない声を出し、ビショビショな体でバイト先のコンビニに入っていった。
「こんにちはてんちょ~」
「おう、また不運に見舞われたのか?」
この人は店長の福田さん、運がよさそうな名前をしていてなんだか羨ましい。
「小鳥遊さんは今日シフトだっけ」
「えっ、今日シフト入ってる気がするんですけど……」
店長さんはパソコンを触り従業員のシフト表を見た。
「小鳥遊さんは今日シフト入ってないね」
「そんなぁ~」
店長さんは私を不憫に思ったのかお茶とおにぎりを奢ってくれた。
「ありがとうございます」
「まぁ後日厄払いをしてもらったらどうだ?」
「厄払いですか……行ってみようかな」
店長に厄払いを進めてもらい、後日神社に行くことにしたのだった。そして帰り道も不運に魅入られたのか風が強く吹き始めた。
(ううっ、来た時よりも帰る時の方が天気が酷くなるのはどうしてだろう……)
すると風で飛ばされたのだろうか、トタン屋根が後ろから私にぶつかってきた。
「ウギャー!」
すると一段と風が強まり、私の体ごとトタン屋根が吹きあがった。
「そんなことあるのぉぉお!?!?」
上空に吹き飛ばされた私の目の前には電柱が伸びていた。
「フゲッ」
私は電柱に体を打ち付け、持っていたお茶とおにぎりを落としてしまった。
「私のおにぎり~!!!」
おにぎりに手を伸ばそうとした、だがそれよりも速いスピードで上空から雷が私に直撃した。
「ギャアアア!!!」
(どういう……確率なんだよ……)
トタン屋根がぶつかり、飛ばされ電柱に当たり雷に打たれるという計算したら天文学的な確率になりそうな事故、そしてとどめの一撃は家の窓ガラスを突き破って体中にガラス片が突き刺さっていた。
(ダメだこれ……死んじゃう……店長……ごめんなさい)
部屋をよく見ると私の家の一部屋、他の人に見つかる確率はほとんど0になっていた。そして意識が遠のく中私は涙を流していた。
「御目覚めですか?」
その声が聞こえると私は起きた。
「あれ、私って死んだんだよね……と言う事はここは地獄の底なのかな」
手を動かそうとしたが全く感覚が無かった。
(手の感覚が無い、それに足の感覚もない。どうしてだろう)
「いえ、地獄の底ではないですよ。私は幸運の名に宿っている神、ラックです」
「……つまり私は死んだってことだよね、うん」
「そうですが……どうしました?」
私は生きていた記憶を思い出した、だが思い出せば思い出すほどかなりつらくなっていった。
「私生きてた時、不運がいつも起こり続けてたんだけど、どうして幸運の名に宿ってる神が今目の前に居るんだ?私とは無縁なのに」
そう、何故不運まみれの私の目の前に幸運に宿ってる神が居るのか疑問だった。
「あなたの人生を今まで見てきましたがあれほどまで不運に愛され、最後も不運に死んでしまった。私はあなたに慈悲をあげたいのです」
「……質問いい?」
「いいですよ」
「私って死んだ後、死体は何日放置されたんだ?そこを聞きたい」
「確か1年以上放置されてましたね」
その言葉を聞いて私は成仏しかけた。
「ありがとう」
「ちょっと待って逝かないで!?」
ラックは私を引き止め、こんなことを言った。
「あなたの新たな体と特殊スキルを与えるのであなたの辛い過去を貰えないですか?」
「……つまり不運を貰うって事?」
「そうです」
私は少し悩み、神にこう告げた。
「その新しい体と特殊スキル欲しいです」
「分かった、ならちょっと待っててね~」
そう言うと神は何やら呪文を唱え始めた、するとどんどんと体の神経が繋がっていくのが感じられ、視界がどんどんと見え始めた。
「……凄いよこれ」
「そうでしょう、その体はこの世界で美形とされてるんですよ」
今までになかった胸がほどほどあり、体は健康体になっていた。
「それでは異世界に転生させますね、ではいってらっしゃーい!」
「えっ、ちょっと待って今異世界って」
言い終わる前に私は異世界に転生させられたのだった。
そして次に目が覚めると私は切り株に座っていた。
「……草原だ」
私は立ち上がりあたりを散策してみた、すると道端に金貨が落ちているのを発見した。
(金貨だ……凄い)
金貨のデザインを見て改めて異世界に来たのだなと感じさせられた私は崖に向かって走り出した。
(すごい、走るたびに胸が躍る……あれ、私って一体誰だったんだっけ)
私はすでに生前の記憶が無くなっていたのだった。だが名前だけは憶えていた。
(確か私の名前は小鳥遊瑞希だっけ、でも誰が名前を付けてくれたんだ?)
すると何処からか声が聞こえ始めた。
「瑞希ちゃん、横よ横」
「横……って誰ぇ!?!?」
横に居たのはふわりふわりと飛んでいる何かだった。
「誰って失礼な。幸運に宿る神、ラックですよ」
「ラックさんですか……ここっていったいどこなんですか?」
「ここはスプリット高原ですよ、まぁ転生したてですから知らないのも当然でしょう」
私は周りを見てこう思った。
(あれ、ここってなんだか住み心地がよさそうだなぁ)
「何だかこの土地って住みやすそうですね」
「そうでしょう、木が近くにあり湧き水も一杯ありますよ」
「……一体何しようか」
私は未だ特殊スキルの正体が分からず、ラックに聞いてみることにした。
「ラックさん、一体私の特殊スキルって何ですか?」
「なら確認してみましょう、手のひらを目の前にかざしてください」
私はラックさんに言われるがまま手のひらを目の前にかざした、するとステータスが出てきた。
「凄い……」
「このステータス画面、ここに生きる人たちが全員出せるようになってて、自身は今どんな強さなのか、そしてどんなことが出来るのか調べることが出来るんですよ」
「はぁ……」
(こうしてみると平均的なステータス……いや魅力のステータスがとても高い。そういえばラックさんがこの世界で美形の姿に転生させてもらったんだ)
特殊スキルの欄にはLUCKの文字があった。
「このLUCKっていうのは特殊スキルなの?」
「はい、このLUCKって言うのが私が授けた特殊スキルです。あとですね、特性の欄を見てください」
私は特性の欄を見た、するとそこにあったのは不老不死や経験値上昇と言ったバフ効果だった。
「不老不死に経験値上昇……もしかして私ってエルフ?」
「いえ、ただの人間です。あまりにも不運な人生を送られてきたのでこれぐらいは当然かなって」
「へぇ……そうなんだ」
「では、最初にやるべきことを教えますね、まず木を切ってください」
「……え?」
ラックさんに言われた言葉、それは木を切ってと言う事だ。だが道具が無い今どうやって木を切ればいいのか分からないのだった。
最後まで見てくれてありがとうございます。
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