白雪姫
虹色マカロン Part3 白雪姫
「マカロン、好きなの?」
「いや、実は一度も食べたことない。これもプレゼント用だし。あ、そうだ、せっかく会ったから、これ、先月のお返し」
「あら、ありがとう。憶えていてくれたのね」
さっき買ったばかりのクッキーを手渡すと中川さんは微笑んだ。なんというか、妖艶な感じの微笑で、ちょっとどきっとする。
「橘くん、今日はこれから何か予定ある?」
「いや、別に何も・・・」
彼女にデートを断られたことを思い出して、胸がチクリと痛んだ。
「そう・・・じゃあ・・・」
中川さんは俺の顔を覗き込むようにしながら言葉を続ける。
「これから、わたしと付き合わない?」
え・・・
さっきチクッと痛んだ胸が今度はドキドキしてきた。
あ、いや、もちろん「付き合う」は「交際する」って意味じゃなくて、単にヒマ潰しにどっか行かないか、ってことなんだろうけど。
いくらデートを断られたからって、彼女のいる身で別の女の子と二人っきりで遊びに行くのは、ちょっとマズいような気がする。
でも、無下に断るのも勿体ない、じゃなくて、失礼だし。
「うーん、じゃあカラオケとか、ファミレス?これから友達に連絡してみるよ。中川さんが来るって聞いたら、みんな何が何でも来たいって言うだろうし」
ポケットから携帯を出そうとした、その時。
「わたしは橘くんとふたりがいいなあ・・・」
中川さんの発言に一瞬息が止まりそうになった。どう解釈すりゃいいんだ。
戸惑いながら中川さんの顔を見る。
抜けるように白い肌、口紅も塗っていないようなのに血のように赤い唇、そしてオニキスを思わせる、濡れたような漆黒の瞳。まさに非の打ちどころのない美人だ。
“雪にように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い”
そんなフレーズが頭をよぎった。
何だっけ、そう、「白雪姫」だ。雪の上に落ちた自分の血を見て王妃が「欲しい」と願った娘。白と赤と黒、強烈な、だが抗いがたい魅力をもつ組み合わせ。
何だか息苦しい。周りの空気が急に薄くなってしまったような、そんな感じ。頭の芯がクラクラする。
その、魅惑的な赤い唇がさらに信じられない言葉を紡ぎだす。
「ねえ、どこに行きたい?なんならホテルでもいいわよ・・・」
これは・・・夢なんだろうか。
中川碧の漆黒の瞳の中に宿る白日夢。まるで、天国で見る悪夢のようだ。
何か、言わなきゃ。
そう思っても、何も言葉が出てこない。それどころか、全身が金縛りにあったように全く動かない。
つづく
サブタイトルは「白雪姫の誘惑」とかでいかがでしょう。いかがといわれても困りますよね。
グリム童話って基本怖い話が多かったりするので「ちょっと危険な白雪姫」の雰囲気。
オンナに免疫ゼロの蒼くんがうまくかわせるのでしょうか・・・。
碧は虹の中の色からもらいました。
そして英語の「green」には「嫉妬」という意味があるのです。
「みどり」にしたのにはもうひとつ別の理由もあるのですが、今回は内容の都合上書けませんでした。
蒼くんの彼女の名前が出ればご納得いただけると思います。




