マカロン
虹色マカロン Part2 マカロン
とにかく予定を入れておこう。
俺は携帯を開いた。3月13日、と14日。
ん、14日?忘れるところだった、ホワイトデーだ。
バレンタインのお返しをする日。
バレンタインデー当日の午後。
あの時、灰色の景色の中、浮かび上がったあざやかな赤色。初めて触れた唇は冷え切って氷のようだったけれど、それがだんだん温かく柔らかくなるまでずっとキスし続けていた。一生の記念にしたいくらい大事な思い出だ。
あの日もらった手作りのトリュフチョコのうち、ひとつはどうしても食べることが出来ずにまだ大切にしまってある。
あれのお返しって何を贈ればいいんだろう。
まさかこっちも手作りってわけにはいかない。料理は得意じゃないし、第一お菓子って何で出来ているのか、材料が皆目わからない。
とりあえず、デパートの地下に行けばそれらしいものがあるだろう。彼女が気に入りそうなものが見つかるといいけど。それに、一応もらった義理だか友だかのお返しは明日返さないと後が怖い気がする。
街へ向かうため、切符を買って、電車に乗り込む。
もう少し早く気付いていれば、あと少しだけ一緒にいれたのにな・・・。
平日のわりにデパートは結構込んでいた。
お菓子のおいているフロアはやっぱり女の子が多くて、少し気恥ずかしい。
クッキー、ホワイトチョコ、マシュマロとかが定番なのかな、あんまり食べたことないから、どれ買ったらいいのかわからないけど。
何気なく売り場のショーケースを覗いていると、今まで見たことのないお菓子が目に止まった。
クッキーをふたつ合わせたような形なんだけど、色が豊富で、カラーパレットみたいだ。見たところ、たぶん10色以上はあるだろう。
「いかがですか?」
しげしげと眺めていたら、売り場の女の人に声をかけられた。
「あの、これ何ですか?」
「マカロンでございます」
「マカロン?」
「フランスの焼き菓子で、今とても女性に人気があるんですよ。プレゼントにも最適です」
「へえ・・・」
形も可愛いし、これだけ色がきれいなら、確かに女の子が好みそうだ。
「ホワイトデーのプレゼントですか?」
「あ、はい」
「でしたら、こちらがおすすめです」
店員の女性はパンフレットを開いた。
六角形の容器に、真ん中にひとつ、周りに6つ、合わせて7つのマカロンが、ちょうど花のような形に並んでいて、とても可愛らしい感じだ。
彼女のはしゃぐ姿が目に浮かぶような気がする。
「じゃあ、これでお願いします」
「かしこまりました。では、マカロンをお選びください」
「はい」
とは言ったものの、何を選んだらいいのかさっぱりわからない「フレーズ」とか「シトロン」とか、一体何の味なんだろう。
「迷ったときは、色で選ぶといいですよ。詰め合わせたときにきれいなように」
なるほど。
「じゃあ、そこの赤いのとピンクと、この黄色と・・・」
どんな味なのかわからないのも楽しみでいいかな、女の子ならわかるものかもしれないけど。
「それから、このクッキーを5個お願いします」
明日のお返し用のものも一緒に買って、結構大きめの紙袋受け取る。
そのとき、
「橘くん?」
女性の声だ。振り返ると、同じゼミをとっている子だった。
「中川さん・・・」
中川 碧、長い黒髪のちょっと神秘的な感じの美人で、頭もいい。スタイルも抜群で人気があるけど、何か近寄り難い雰囲気があって、あまり話をしたことはない。
そういえば、バレンタインに何の気まぐれか俺にもチョコレートくれたっけ。
つづく




