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匣のなかに潜むもの

色マカロン Part16 匣のなかに潜むもの




「・・・くん、・・・ばなくん、橘くん!」


彼女の声でようやく我に返る。


「コーヒーはいったよ。どうしたの、怖い顔して・・・」

「あ、いや・・・」


胸の動悸が治まらない。

どうしよう、やっぱり言わないと、でも・・・。

彼女を引き止めておきたい、その誘惑が舌先を凍らせる。


「大丈夫?」


彼女が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。


「え、なにが?」

「顔、真っ青だよ、具合でも悪いの?」


目と目が合う。

透き通った、琥珀色の瞳。

何ひとつ俺を疑っていない、曇りのない純粋な瞳だった。


綺麗だ、と思った。

だけど、それだけに、かえって胸を抉られるような気がした




俺は、今何を・・・



この瞳の前で、姑息な計算を巡らせて自分の欲望を叶えるつもりだったのか。

最低だ、恥ずかしい・・・



そう思った瞬間、一昨日の出来事が甦ってきた。




あの日、バレンタインのお返しを買いにいって、偶然、同じゼミの中川碧に会った。

中川碧は誰もが認める美人で、大抵の男は彼女に興味を持っている。

でも、俺はあまりタイプじゃないというか、プライドが高そうで取っ付き難くてちょっと苦手だった。

だから中川碧には何の興味も持っていない、そう思っていた。

俺は新入生のサークル勧誘の日に柚木美紅に一目惚れして、彼女のことばかり考えていたし。



でも、


あの時、中川碧の気まぐれでデートに誘われて、ほんのわずか、心が動いた。向こうにしてみればほんの冗談だったのだが、ホテルに行ってもいい、とまで言われて、つい、こう思ってしまった。



皆の憧れの存在である中川碧を抱けるかもしれない

いや、そこまでしなくても彼女と二人で出かけただけでゼミの連中がさぞうらやましがるだろう。


黙っていればわからない、もう子供じゃないんだし

誘いに、乗ってしまおうか


別に中川碧を愛しているわけではない、俺が好きなのは美紅だけだ。

でもやっぱり、心が揺れた。

だけど、そんな自分を認めたくなかった。


あの後に襲ってきたなんともいえないいやな気持ち

その正体は自分の中にある狡さ、卑怯さだ


黙っていればわからない


一瞬でもそう思ってしまった。

自分でも気付かなかった、姑息な考え

パンドラの匣の中身は、これだったんだ




そして、今、

あのときよりも何倍も強い誘惑につい負けそうになった。


俺は美紅を愛している。


だから、どんな卑怯な手を使ってでも引き止めたい、真剣にそう思った。

だけど、

それは決して開けてはならないパンドラの匣だ。

今この誘惑に負けてしまったら、きっと後悔する。

もう、美紅のこの透明な美しい瞳をまっすぐに見つめかえすことができなくなる。



俺は決心した。








蒼くんの決意についてはまた次話で・・・

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