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I Want 「to」

バレンタインの話「Melting Chocolate」の続きです。

これだけ読んでもわかりますが、前作も読んでくださるとうれしいです。

虹色マカロン  Part1  I want 「to」



「え、今日?ごめん、これから中学のときの友達と会うんだ。久しぶりだし」

「いや、いいよ。じゃあまた今度」


3月11日、木曜日。

いつもの帰り道、夕飯の誘いを断られ、俺は少なからず落胆していた。

久しぶりなのはこっちもなのにな、と内心思いながら。


地獄から天国、の気分を味わったバレンタインからもうすぐひとつき。

めでたく「友達」から「彼氏」に昇格できた俺だけど、実際、彼女との関係はそんなに劇的に変わったわけではなかった。


俺は親元を離れて一人暮らしをしている学生だ。家はごく普通のサラリーマン家庭で、とりたてて貧乏ではないが、かといって裕福でもない。

当然、仕送りだけでは食費と住居費、光熱費を払うだけでも結構きついから、週に3回、近所の進学塾で、チューターのバイトをしている。

そして、2月、3月といえば、受験シーズン真っ只中である。

補習だの特別授業だのがやたらにあり、起きて、学校行って、帰ってきたら塾に直行、家に戻れるのは夜の10時すぎ。その後に自分のレポートや後期試験の勉強→初めに戻る。

という日々が続いていて、せっかく両思いになれたというのに、ろくにデートも出来なかった。

その間、彼女は文句ひとつ言わず、ずっと待っていてくれた。

そして、ようやく受験シーズンも終わりに近づき、どうにか単位も予定通りに取れそうだという目途がたった。

今まで会えなかった分、毎日でも会いたい、と思っていたところなのに・・・。


「最近ずっと忙しそうにしてたから、平日、暇になるなんて思わなかったの」


うん、その通りだ。彼女は正しい、決して俺が不満を言える立場じゃない。


「だから、明日も友達と買い物行く約束してるんだけど・・・」


そうですか。

今まで放っておいた手前、何もいえないけど、正直、ここでその追い討ちはきつい。


「でも、土日はどっちも空いてるから、会えるかな」


思わず彼女の顔を見つめる。と、彼女は小首をかしげ、にこっと微笑んだ。


「それともまだ特別講習とかある?」

「いや、ない。春休みまで何も」

「じゃあ、土日、どっちか会う?どっちがいい?」

「どっちも!」


思い切り勢い込んで答えてしまった。

彼女はびっくりしたように俺の顔を見つめている。今まで放っておいたくせにあつかましいと思われたかな。


「いや、どっちか都合のいいほうで・・・」


そう言いかけると


「いいよ」


と、彼女の明るい声が返ってきた。


「じゃあ、13日と14日。時間とかはまた夜にメールするね、じゃあ」


いつの間にか駅に着いていた。

手を振りながら改札をくぐる彼女に手を振り返す。週末会えるとわかっていても、ちょっと淋しい。

片思いだったときは、見ているだけで満足だったけど、気持ちが通じるとどんどん欲張りになっていく。もっとずっと一緒にいたい、距離をゼロにして抱きしめたい。

ここがアメリカやヨーロッパだったら、改札口越しにお別れのキスとかするんだろうな。でも、ここは日本で、俺は典型的な日本人で、そんな大胆なことするのはやっぱり無理で。

彼女の姿が電車の中に消えるまで、ずっと手を振っていることしか出来なかった。


土曜日と日曜日、どっちも会えるのは嬉しい、

けれど、出来たら、土曜日「と」日曜日じゃなくて、「to」だったらもっといいのに。

Saturday to Sunday 

途切れることなく一緒に過ごせたら、と、つい思ってしまうのは贅沢すぎるんだろうか。



つづく


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