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プロローグ

今日は二話投稿します。(1/2)

「きりーつ、礼」

「「「⋯⋯さよーならぁ」」」


少しやる気のない挨拶が終わると、学校から解放された生徒たちの喧騒が教室を包む。

それに構わず、いそいそとカバンに荷物を詰めていく。


「リト、帰ろうぜ」

「ごめん、今日用事があるんだ」

「あぁ、そうだったな。⋯⋯ごめん」

「いや、良いよ」


せっかくの友達からの誘いを断り、一番に教室を出た。足ばやに校門を潜り抜けた。誰とも話さず、一目散にあるところを目指す。


それは病院だ。


俺には病弱な義妹(いもうと)がいる。病弱、というよりか、少し昔からとある病気に罹っている。発達した現代医学でもわからない病気、名前のない病気だ。それで、二年間ずっと入院している。毎日見舞いをして、家に帰る。これが俺の放課後の日課だ。


義妹(いもうと)というが、特に複雑な事情はない。ただ、クズ親父が不倫をして、逃げただけだ。それで母親が再婚して、義父が連れてきたのが俺の義理の妹だ。


そして、両親は死んだ。交通事故によって。俺は義妹(いもうと)と二人きりになった。そして、後を追うように⋯⋯とは違うが、今の状態になった。


病院にたどり着いた。見舞いをする前にテナントとしてあるコンビニで、義妹(いもうと)の好きなプリンを買う。少しでも笑顔でいて欲しいからだ。


受付を済ませ、義妹(いもうと)のいる病室のドアをノックする。できるだけ静かにドアを開ける。


義妹(いもうと)の頬は痩せこけ、目は落ち窪んでいた。思わず目を細めてしまうほどの惨状だ。


「リコ、お見舞いにきたよ」

「⋯⋯⋯⋯お義兄ちゃん?」

「お前の好きなプリン買ってきたから。食べるか?」

「やったぁ⋯⋯⋯⋯食べる」


包装を開け、スプーンですくって食べさせる。


「私って、死ぬ運命なのかな」

「なわけないだろ。そんな運命、あるわけ無い」

「学校って楽しい?」

「あぁ、楽しいよ。でも。リコといる方が楽しい」

「うふふ、そうなんだ⋯⋯⋯⋯ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ!」

「リコ!? 大丈夫か!?」


呼びかけてもリコの咳は止まなかった。迷わずナースコールを押した。すぐに看護師が飛んでくる。リコの容態をみた看護師はすぐに医師を呼び、俺を病室から追い出した。ドアが完全に閉め切られ、声だけが聞こえてくる。その声は穏やかではなく、焦りや不安を孕んでいた。


斜めがけのカバンの紐を両手で握りしめて俯く。何もできないというやるせなさだけが心の中に広がっていく。しばらくそうしていると、医師が病室から出てきた。


「妹さんの余命は幾許もないかもしれません」

「⋯⋯⋯⋯そう、です、か」


急に言われて実感が湧かなかったが、心のどこかでは薄々感じていた事だった。魂が抜けたように病院を後にした。


寂れたシャッター街を歩く。


リコが死んだらどうするのか。死んだ後、俺はどうなるのか。あぁ、もう。これからどんな気持ちで生きていけば良いんだ。


俺が苦しむのも、リコの言ってた運命のせいなのか?


「クソッ!!」


気持ちを吐き出すために、近くにあった壁をグーで叩いた。不意に、一枚の紙が落ちてきた。無視して歩こうとした瞬間、でかでかと印刷されている文字が目に入った。


『あなたの願いを一つだけ、必ず叶えます。お問い合わせは下記の電話番号まで─────』


いつもは「胡散臭い」と一蹴するような謳い文句が俺の目から離れない。拾い上げた。紙がカサリと音を立てる。


すごく嘘くさいけど、リコが救われるなら──────


俺はポケットに入っていたスマートフォンを取り出し、番号をタップした。

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