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占い

「初対面の人間を信じるのはどんな時かって訊いたんですよ」


 どんな時であろうと初対面の人間など信じられるものか。


「さぁ……ちょっとわからないですね……」


「では、よく当たると評判の占い師に、あなたにとって都合の良い結果を告げられたらどうです? 信じませんか? 朝のワイドショー番組の占いでも構いません」


 バーナム効果だとわかってはいても、言われてみれば確かに、良い結果の時だけそれとなく気にかけているのはあるように思う。


「まぁ、信じるってほどではないですけど……多少気にはするかもしれませんね」


「それは取るに足らない内容の占いだった場合ですよね? その日の運勢とか、探し物が見つかるかどうかとか」


「そう……ですね」


「でもそれが自分の命や将来に関わる重大なことだったらどうです? もし、あなたの身に危険が及ぶ未来が待っていると告げられたら、根拠がなくてもその危険を回避したいと思いませんか?」


「それは」


「そう思うのは占い師の『危険な未来が待っている』という言葉を信じたからですよね? でも同時に『危険な未来など信じない、信じたくない』という矛盾した思いもそこに生じている。そんな未来は嫌だ、できるなら回避したい、というね。違いますか?」


 曲がりなりにも相手は占いで商売をしている人間。その言葉に『ひょっとすると』というバイアスがかかるのは当然だ。だが、それだって信じるというには遠く及ばず、やはり気がかり程度でしかない。


「危険なことが起こるかもしれない。そう思った時点で占い師の言葉に信憑性が生まれたわけです。ただし、これはあなたにとってだけのこと。では、その迫り来る危険な未来を回避するために、あなたならどうしますか?」


「どうって……その占い師から回避方法を聞けばいいんじゃ……」


「なぜ?」


「え?」


「なぜ占い師から聞こうと思ったんです?」


「それは……危険が待つ未来が見えるなら……それを回避した未来も見えるはずで……要するに占い師が回避する方法を知っていると思っ」


「言い換えれば『危険な未来は回避できる』と信じているわけですよね?」


 すべては可能性の話だ。占いは予言ではない。そうなるかもしれないというだけで信じるのとは違う気がする。信じるとは、言うなれば確かな土台の上に築かれるべきもので、あやふやな仮定や推測のもとに成立する言葉ではないのではないか。


「信じるというか……可能性があるだけというか……」


「占い師の言う危険な未来となる可能性を信じた。ゆえにそれを回避する方法を知っているであろうその占い師に聞こうと思った。こういうことですよね? それはもう占い師の言葉だけじゃなくて、占い師自身を信じていることになりませんか?」


 掘り下げるとそうなるのかもしれない。


「相手が不安になる情報を聞かせる。次にその不安を取り除くための解決策を提示してやる。人心を掌握するための簡単な心理術ですよ。占い師なんかはこれに長けている人が多いんです」


 映画だの法だの京言葉だの占い師だのと、一体いつになったら本題に入るのだろうか。身体が凍えそうだ。ここの寒さは外と変わらない。むしろ歩いていたぶん外のほうが暖かかったと言える。こんなことならブランデーでも頼めばよかった。


「いま占い師って限定しちゃいましたけど、これが一般人の言葉だったらどうです? もちろん、影響力のある有名人や著名人は別として」


「いや、あの、そろそろ」


「ふつう、年寄りは大切にしろって言うじゃないですか?」


 言葉を遮られて押し切られた。一般論の検証に何の意味があるというのか。すでに代金はもらっていると言っていた。ならばその代金分の仕事なり何なりを速やかに済ませ、この場からさっさと解放して欲しい。


「でももしそうすることであなたの人生が狂うとしたら?」

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