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百合な活動者とリスナーの私

 ゆりこの中の人と知り合ってほぼ1ヶ月経つ。ちょっとした罪悪感を覚えつつも、私はリスナーと友人の二重生活を続けていた。


 彼女は見た目の通りの人気者で、明るくて裏表がなくて華やかで、私の友達にしておくのはもったいない美人だった。でも、ゆりこの中の人というバイアスを無意識のうちにかけてしまっている気がして、なんだか申し訳ない気持ちになる。


「今日はね〜、大学の帰りに猫カフェに行ってきたんだ〜」


そんな彼女はよく私に通話をかけてくる。通話という文化に縁のなかった私だけど、話上手で声が良い友人との通話は楽しい。


「ふーん」


「あれ、興味なさげ? 」


「いや、そ、そういうわけじゃないよ! 猫とか好きなんだなって」


「あ、そうなの。あたし動物全般好きなんだ! 美咲も今度一緒に爬虫類カフェ行かない? 」


「なんで爬虫類カフェ……。私は爬虫類は得意じゃないなあ」


「じゃあ猫カフェ行こうよ! 」


「いいよ」


美人と猫……良い……とか思ってしまったこのクソオタクを誰かぶん殴ってください、お願いします。


 彼女は友人で、でも推しで、だけど素がゆりこそのまんまってわけでもなくて。だからなんだって話だけど、すごく脳みそがバグる。トキメキの脳汁が大量に分泌されて、収集がつかなくなる感じ。


「そういえばさ〜、最近あたしの配信にコメントしてくれてる人がいてね、それがすっごく面白いんだよ」


「へぇ」


「その人はね、なんかこう……あたしのことをすごく褒めてくれるの。『推せる』とか『かわいい』、『最高! 』みたいな」


「ふーん」


配信見てるからその人知ってるし、まあそのくらいなら私も言ってるけどな……。なんか面白くない。もしかして、これが…………これが噂の同担拒否?!


「それでね、すごい嬉しいんだけど、やっぱ初めて言ってもらった時の感動って違うなって。美咲、ありがとね」


声が良い〜〜〜〜。オタクが死んぢゃう〜〜〜〜。尊死。


「聞いてる? 」


「聞いてる聞いてる」


「ほんとにぃ? ……あ、そうだ、あたし美咲に聞きたいことがあったんだ」


何気ない風を装いながら、彼女の声には少しだけ緊張が滲んでいた。


「なに? 」


「美咲はさ、あたしのことどう思ってる?  」


え、ええ……!? 何この質問。いや、待て、落ち着け私。キモオタが身近にいたことないから戸惑ってるんだよ、たぶん。だから調子のんな!


「えっと……」


「あ、ごめんごめん。言いにくいよね。ごめんごめん」


そんな謝られるとこっちが申し訳なくなっちゃう。


「えっと、その……あの……すごく……可愛いと思うよ? 」


「ありがと」


「……」


「…………」


なんだ、この間は。


「ねえ、美咲」


「うん」


「猫カフェ行くのデートってことにしない? 」


……はい? 思考停止。意味がわかんない。


「い、いきなり何を言っているのかわからないんですが……」


「だからぁ、あたしと恋人にならないかってこと」


「え……ええええええ?! 」


いやいやいやいやいやいやいやいや。ちょっと待って。待って、待って! 何が待ってかわかんないけど待って!!!!!


「あはは、ごめん、びっくりさせちゃった? 」


「い、いえ……えっと……」


「ダメ……かな」


ずるい。そういう小悪魔ボイスに私が弱いこと、この人はよく知っている。本当にずるい。ずるくてあざとい、そんなとこが大好き。私は彼女に会った時から、もう運命が始まっていたのかもしれない。


「うぅ……わ、わかったよ。いいよ」


「やったー! 」


「よろしく……まゆり」


「うん! よろしく美咲」


私の大好きな声でそういう、彼女の名前は高坂まゆり。私の推し、百合坂ゆりこの中の人であり…………私の彼女になりました。






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