冬休みに入ったのでイメチェンしてみたら、クラスのギャルが僕をあだ名で呼ぶようになったんだが。どうやら僕達は幼なじみだったらしい。
「あ、あの……これ…プリント……」
「ん? あーそこのへん置いといて、てかじゃま」
これが僕の日常だ。
みんな僕を毛嫌いする。
今日だってそうだ、先生に皆に配っといてって言われたプリントを渡しただけなのにこの仕打ち。
校内いじめアンケートになぐり書きでかけるレベルだ。
だが、なんだって僕がこんな扱いをされなきゃならないんだ、第一別に見た目だって、趣味だって……
と思うとするも、心あたりが多すぎる。見た目はニキビ面だしで髪はモジャモジャ、そして声量は小さいときて、趣味はというと、メイドさんの鑑賞。
うん……確かに嫌だよねこんなやつ。
自覚はあるのだ。
僕は諦めモードで、メイド雑誌【メイちゃんz】を見ながら帰路につく。
今日は風の強い日だったらしく、僕のお宝であるメイちゃんzが風に吹き飛ばされた。
そして行き着く先は、
え、なんでよりによってあんなところに……
なんと行き着く先は、クラス1のギャル【兵頭結菜】の足元だった。
最悪だー絶対蔑んだ目で見られるんだろうな、そう言ったネガティブな思考が脳内を駆け巡る。
こういったギャルは僕達とは別の人種なのだ。
受け入れてもらえるはずがない。ましてやメイドさんだ。
言うなれば、相容れぬ関係。
なんならその場で思い切り踏まれ、破られるかもしれない。
それか胸元からタバコ用のライターで即座に燃やされるかもしれない。
僕は覚悟した。
したのだが……
「え、なにこれ! めっちゃかわいいじゃん。えーすっご! こんなのあるんだ~」
あれ、なんか思ってた反応と違うんですけど、
中身入れ替わりました?
「えっと、それ……僕の」
勿論そんなツッコミをリアルで言えるわけがない。
いつも以上に声量は小さくなってしまった。
聞き取れただろうか。
「あーごめん!! これ大切なものなんでしょ、ちゃんと飛ばされないようにしなよ」
そう言って、はいっと僕の胸元に本を押し付けてくる。
声はちゃんと聞き取れていたようだ。
「え、あーうん、ごめん、拾ってくれてありがと」
「うんじゃあね、中山」
あ、僕の名前……異性に初めて呼ばれたな。
やばい、なんかうれしい。
生まれてこの方、一度たりとも異性に苗字すらよばれたことがなかった。
呼ばれるとしたら、お前とかニキビとか、リンゴ病とか貧乏面とか、貧乏神とか、その変だ。
だからこそ僕はとても嬉しかった。
しかもそれが、あの兵頭さんだってのもあるかもしれない。
確かに兵頭さんは、メイクも濃いし露出の多い服もよく着てるし、男遊びも激しいって聞くけど、とてつもなく美人なのだ。ギャルメイクや金髪も似合っていて、あの切れ長の目はいつみても恍惚とさせられる。そんな一億年に一度の美女に名前を呼ばれたのだ。嬉しくならないわけがないのだ。
あともう一つ理由をつけるとするならば、クラスで唯一僕に嫌な顔をしない生徒なのだ。
まあ、話したの今日が初めてだけど。
そんな阿保なことに思考を巡らしていると、僕の家が見えてきた。
外見は茶色がベースの落ち着いた雰囲気の家である。
「ただいま~」
「あ、兄貴お帰り~ご飯できてるよ~」
「わかったー」
僕なんかとは違って、天真爛漫な女の子である。
しかもギャル。
どうしてこの町はギャルが多いのだろうか。
いや、たまたまか。
それはそうと、よく妹は僕のことを毛嫌いしてないな。
学校の皆は僕をゴミみたいに扱うのに。
気になった僕は食事の席で聞いてみることに。
「ねえね、姫奈」
「なあに、兄貴」
「僕、きもくない?」
自分で言ってはみるものの、かなり自己肯定感が低いやつだ。
何が実の妹に向かって僕、きもくない?だ。
そもそもこういうことを言うこと自体キモイけども。
「え?キモいけど?」
「だよね?」
「うん!」
わが妹ながら酷いやつである。
しかし姫奈は、けど…と続けた。
「兄貴、素材はいいんだからモテルよ、今はキモイけど」
「え、どゆこと」
そういうと、今度はお母さんが出しゃばってくる。
「え~あんた忘れちゃったの!? 小さい頃はよく女の子をはべらしてたじゃない」
いや初耳なんだが。
妹もそうだそうだと言っている。
「いや、なんで姫奈が」
「え、だって兄貴の幼稚園の時のアルバム超かわいかったし」
ん?
「ほんとに?」
「ほんとに」
僕と妹、母一行は、食事を済ませると二階の押入れへと向かった。
ドアを開けると、数年は足を踏み入れてなかったのか、埃のすっぱい匂いが部屋に充満していた。
母はこれこれ~と言いながら、荷物の詰まった段ボールを押しのけながら埃のかぶったアルバムを持ってきた。
持ってきたアルバムは僕の幼稚園時代のアルバムである。
見るのは初めてだ。
そもそも自分の過去に興味すら持っていなかったため、昔がどんなかなんて気にしたことがなかった。
ましてや幼稚園の時なんて記憶にあるわけがないのだ。
「えっと、どれだったかしら。たしかこのへんに~あ、あったあった!」
母がグイっと僕に見してくる。
「あ、そうだ兄貴これだよこれ!」
妹も妹で僕にそーゆってくる。
当の本人の僕はというと、目を点にしてチラつかせている。
「え、どこ?」
「だーかーら、これ! これが兄貴なの!!」
確かにこのページには一人しか写真に写っていない。
「お母さん、ひと様のもの間違えてとったんじゃ」
「なわけないでしょ、ここに中山って名札ついてるでしょーが」
あ、ほんとだ。
いや、えーほんとに。
「ほんとに……これが僕なの?」
「「そー」」
二人の声がハモる。
確かに、中山って書いてあるし、よく見れば目元なんかは少し似ている気がしないでもない。
しかし、しかしだなあ~
「こんなに僕がカッコいいわけないじゃんか~」
「まあ、確かに今の兄貴はモジャモジャだしニキビ面だし」
「おまけに声は小さいし」
「童貞だし」
「いいところないよね~」
「そうよね~」
母と妹のダブルパンチである。
しかも姫奈に関しては、かなり酷いことを言っているような気がする。
だから僕も、少し言い返してみる。
「姫奈だって、どうせあれだよね。そのまだじゃん、多分」
そう言うと、二人して笑い出す。
「姫奈とっくに終わってるよ?」
母が言った。
「え、まじ?」
「うんまじ、だからしたことないの兄貴だけ」
僕は膝から崩れ落ちた。
まさか……妹に先を越されるとは思いもしていなかった。
いやほんとに、妹はまだだと思っていたのに。
「まあ母さんの娘だからねえ、血は争えないってやつ?」
「そうよねえ、お母さん17で裕翔を生んでるから、あ、初体験は14歳だったかしら」
なんかこの母親、とてつもないことを言い出す。
すると妹は、
「あー私は先月だから15歳だわ~」
とかゆっている。
この家やばくない?
そう思っていると、膝からくずれ落ちた僕に姫奈が寄ってきて、肩をポンポンとたたく。
「どんまい兄貴。18歳なったらソープランドに行けるから安心しな」
それを親指を立てながら言うのだ。
とんだ屈辱である。
「うるさい」
短く言うと、僕はもう一度肩をすくめた。
もうなんかほんとに、泣きそ。
僕がそんな顔をしていたからなのか、姫奈がある提案をしてきた。
「兄貴、かっこよくなろうよ」
「はい?」
この一言から、僕のイメチェン計画は施行された。
そして方法はというと、
①縮毛矯正をする&カット
②スキンケアの徹底
③服装を整える
以上の三つだそうだ。
これを行えば、僕はイケメンになれるのだとか。
母上も大賛成だった。
嬉しいことに明日から冬休み。
しかも、今回は奇跡的な連休がかなり重なって30日近くある。
これを逃す手はないと妹と母は必死になっていた。
勿論僕も、やるからには本気だと食事の面から考え直していた。
それからまずは、スキンケア用品をそろえ、その翌日には美容院に赴いた。
母と妹も心配をしたのか、中までついてきた。
いや、注文を言いたかっただけろう。
「あ、ここまで5ミリでやってツーブロにしてください」
派手な格好をした妹が言う。
続いて母も、
「息子をすっごくカッコよくしてください~」
「かしこまりましたー」
いやそれ、注文なのか。
とも思ったが、何故かスタッフの人達も大盛り上がりである。
待つこと3時間。
「はーい、終わりましたよー」
「「「おおおおお」」」
次は、服装である。
僕達一行は、母上の荒い運転で近くの服屋に来ていた。
「うーん、兄貴にはどれが似合うかなあ、あーこれかなあ」
「いや、これじゃないかしら」
「とりあえず試着させよう」
「そうね」
そうして僕のファッションショーは幕をあけた。
ランウェイを歩くパリコレのモデルはこんな気分なのだろうか。
そのファッションショーは約5時間続いた。
迷ったものはとりあえず全て買うことになったらしい。
どうやら僕の家は無駄にお金持ちのようだ。
そして数時間の苦闘の末やっとお家に帰ってくることができたのだった。
「あとは兄貴、スキンケアをしっかりすること! わかった?」
「はい、分かりました」
僕は妹様の言うことをしっかりときき、朝夜の洗顔をしっかりし、保湿などもちゃんと行った。
勿論食生活も野菜中心の生活を送るように心がけた。
ついでに筋トレも行ってみた。
すると、あっという間に時間はすぎ、いよいよ冬休み最終日となった。
みんなして、玄関にある大きな鏡の前に集まった。
「え、なにこれ。なんか思ってたのと違うんだけど兄貴」
「そうねえ、ちょっと違うわねえ」
「なんか僕、かわいい?」
「だね」
うーん。
これもこれで、まあありなのかとも思うには思うのだが。
なんでこーなるんだろうか。
「まあ、元々イケメンってよりは可愛い顔だったけども」
妹も母も少し呆れていた。
「ほんとねえ、実は兄貴に俺って言わせようって思ってたんだけど、これじゃあ僕の方が似合っちゃうじゃん」
それについては僕も同感である。
あと、自分で言うのもなんだが、まさか自分の顔がダイヤモンドの原石だとは思いもしなかった。
これで明日からの学校生活は大丈夫だ。
そう思っていたのだが……
クラスを前にして、とあることを忘れていた。
あ、僕コミュ症だったわ、あはは。
そう、家だからすっかり忘れていたが、僕は異常なまでのコミュ障なのだ。
あの時は勢いで兵頭さんとも会話をしていたが、普段の僕はクラスの隅でボケっとしていて、先生の頼まれごとがない限り絶対クラスメイトと一言も会話をしないレベルの、ぼっちコミュ症なのだ。
そう思うと、クラスの誰かに声をかけるなんてことは僕にはできなかった。
僕はとぼとぼと自分の席に向かった。
しかし、クラスの目は僕に向かっていて、クラス内がざわざわとしだす。
「え、あれだれ?」
「転校生?」
「しかもちょー可愛い、美男子ってやつ?」
僕の耳にも入るレベルでそんなことを言い出す。
恥ずかしくて耳が千切れそうだ。
そんな中、中山じゃん!と呼ぶ僕の名前を呼ぶ、一人の女性徒がいた。
「あ、兵頭さん」
僕が兵頭さんの名前を呼んだ瞬間、クラス内が更にざわざわとしだす。
まあ、そうなるよね。
本当に自分で言うのもあれだが、確かにブスが可愛くなったらそーゆ反応になるわ。
僕は兵頭さんにペコっとして、自分の席についた。
席に着くや否や、兵頭さんは僕の席にズカズカとやってきた。
そして、こー一言言うのだった。
「やっと……本当のゆうちゃんが帰ってきてくれた」
「はい?」
そして時間はあっという間に過ぎていき、時刻は放課後。
下校の時間である。
今日は話したこともない生徒、今まで無下にしてきた生徒達、そのた諸々から質問攻め、更には謝罪までされた。
僕はというと、確かに自分も向こうの立場で、外見もやばくて趣味もやばくて、声も小さいうざいやつがいれば同じような態度をとっていたかもしれない。
そう思ったため、まあいいかと「全然大丈夫だよ」っと言っておいた。
本当に見た目って大切なんだなとしみじみ思った一日だった。
そして今から家に帰るのだが、何故かおかしいことに。
「あ……あの、なんで兵頭さんがいるの?」
「え、今からゆうちゃんち行くんだけど」
「ん?」
「なぜ」
「まあ行けばわかるって~」
そんなノリで来られたら怖いよ。
なすすべなく僕は兵頭さんとお家に帰っていった。
「ただいま~」
「おかえりー」
母が玄関までやってきた。
そして僕は、これをどう説明しようか考えていると、
「あ、ゆうなちゃんお久しぶり~」
「おばさんお久しぶりでーす」
え?なになに、この二人知り合いだったの
「まあまあ、わざわざ来てくれてありがとね、どうぞ上がって上がって~」
「お邪魔しまーす」
えー---
ほんとになにこれ。
机にはお茶とお菓子がおかれ、軽く女子会が行われている。
二人は談笑し盛り上がっているが、僕はというと蚊帳の外。
二人はどんな関係なのか聞いてみることにした。
「え?ゆうなちゃんは裕翔の幼馴染じゃない」
「ん?」
「幼稚園の時にすっごく仲良かった女の子覚えてる?」
「いや、知らない」
「三輪車の後ろに超かわいい女の子乗せて、此奴は俺の女だーって町内を走りまわっていたのよ、そしてその超かわいい女の子がゆうなちゃんってわけ」
「すみません話についていけません」
幼稚園時代の僕なにしてるの。
しかもその記憶がないとか僕やばすぎない。
でも本当にそんなことを言った記憶は全くないわけで。
「さいてーー」
兵頭さんの冷たい眼差しが身体中にヒシヒシと刺さってくる。
「ご……ごめんなさいっ、兵頭さん」
「ねえ、ゆうちゃん」
「はい!」
急なゆうちゃん呼びに体がこわばる。
こんな呼ばれ方は男子にだってされたことがない。
いや、もしかしたら幼稚園の時の記憶がないだけで、そう呼ばれていたのかもしれない。
だけど記憶がないのだ……慣れるわけがない。
「結菜ちゃんって呼んでほしいな?」
更にこの追撃、僕のライフはゼロになりそうだ。
「さ……さすがにそれは、」
「あーあ、昔は俺の女だーって幼稚園の運動場で手つないで走り回ってくれたのになあ」
「そんなわけは……」
すると、母がビデオカメラをキッチンへと持ってくる。
この日は運動会だったのだろうか、みんな体操服に着替えて鉢巻を巻いている。
種目は手つなぎリレーらしい。
何組ががピストルの音と共に一斉にスタートした。
そんな中でも、ひと際早く走る二人の男女のペアがいた。
美男美女のペアだった。
ん?なんか見覚えが……
もうすぐゴールテープを切ろうとしている。
ま、まさかッ
「コイツは俺の女だー--!!!!!」
終了。
「どう? 思い出してくれた?」
兵頭さんがニコニコと僕に近寄ってくる。
「はい、思い出しました」
僕は完全に、結菜ちゃんのことを思い出していた。
確かに僕はいつも結菜ちゃんと一緒に遊んでいた。
たまに他の事も遊んでいた気はするが、ほとんど結菜ちゃんと一緒だった。
さっきの運動会の映像がキーになったのか、今まで忘れていたことが噴水のように湧いてきた。
なんだか不思議な感覚である。
どうして今まで忘れていたのだろうか。
「えっと、お久しぶりです」
「なんで急に敬語」
そう言って笑い出す。
ギャルってわかんねええ。
「いや意味がわかんない」
「まあまあ、いいのいいの。でも、ほんとにゆうくんが昔みたいに戻ってよかった~、おばさんありがとうございます」
「え、どうゆうこと」
僕の頭上にはクエッションマークが一つ浮いている。
「実はね、ゆうなちゃんに頼まれたのよ~ゆうちゃんを昔みたいにカッコよくしてくれって、今も素材は完璧だから絶対に良くなるって言われてたの」
「え、え、え、こわッ」
「だって話しかけるタイミングがなかったんだもん、絶対私のこと忘れてるし、どうやって話をかけたらいいかわかんなくて」
急に結菜ちゃんがしおらしくなった。
「前、その、あれ拾ってくれた時に言ってくれればよかったじゃんか」
「えーだって、ゆうちゃんその時言っても絶対信じてくれなかったし、話すなら昔みたいなカッコいいゆうちゃんの方がいいに決まってんじゃんか。あんなダサダさゆうちゃんより今みたいな時に話したいじゃんか」
まあ、確かに言われてみればそうかと納得できないこともない。
それからは三人で昔話をして盛り上がった。
気づけば時刻は夜の7時になろうとしていた。
当たりは薄暗くなり、段々と日も沈んで行った。
完全に沈みかける頃、玄関から大きな声で「ただいまー」と言う声が聞こえてきた。
我が妹、中山姫奈である。
そしてドタドタ走りでキッチンへと入ってくる。
相変わらずだ。
入ってきた妹は、僕を1回みて、結菜ちゃんを2度見する。
そして僕をまた2度見する。
「え、え、なんでこんな所に兵頭先輩がいるの!?!?」
「ども、お邪魔してまーす」
と結菜ちゃんは軽い挨拶をする。
姫奈は姫奈で、初めまして!お会いできて光栄ですとか跪いてゆっている。
「あの、なんで姫奈は結菜ちゃんに土下座してるの」
僕はトンチンカンなことを言ったのだろうか。
姫奈は突然アホと言わんばかりの勢いで僕の頭を鷲掴みにし、結菜ちゃんに頭を下げさせる。
「すみません兄貴が」
とか言っている。
一体なんの茶番だ。
そして誤解を解くために事の経緯を説明する。
「そんな事があったんだ、まさか兄貴が兵頭先輩の幼なじみだったとは…」
驚愕と言わんばかりの表情をしている。
「しかもコイツは俺の女だって、今じゃ絶対言えないじゃん」
姫奈の言う通り、今じゃ絶対にそんなことは言えないのだ。
第1、俺から僕になることなんてありえるのだろうか。
まあ普通はないだろう。
「あ、そう言えばゆうちゃん」
「ん?なに」
急に何かを思い出したかのように結菜ちゃんが声をかけてくる。
一体なんだろうか。
「帰りの電車なくなっちゃった」
……
「あら〜泊まって行けばいいじゃない、ね、姫奈?」
母が妹にアイコンタクトを送る。
妹も妹で、
「え、結菜先輩泊まって行ってくれるの! めっちゃ嬉しすぎるんだけど」
とかゆっている。
当の本人である、結菜ちゃんも何だか嬉しそうだ。
何故だろうか、電車は止まってるのに。
「えっと、まあ泊まって行けばいいんじゃない」
とは言ってみるものの、結菜ちゃんが泊まりとか考えると何も想像しないわけもなく、ドキドキが止まらない。
鼓動は早まる一方だ。
母は母でニヤニヤしているし、妹もニヤニヤしているし。
凄く不気味である。
その後は結菜ちゃんがお風呂に入り、その後に僕がお風呂に入った。
これが結菜ちゃんが入った後のお風呂のお湯かと思うと、裕翔ジュニアが暴走しだした。
そのため1度だけ鎮圧しておいた。
すると今度は妹が入って、上がってきたあとに兄貴〜なんか変な匂いがする〜とか(いっている/言っている)。
匂いは消したはずだが…まさか残り香があったのだろうか。
恐らくは適当に言っただけだろう。
ちなみに、結菜ちゃんのお風呂上がりはとても艶やかだった。
ロングの綺麗な金髪に滴る水、そしてそれをワシャワシャとタオルで拭いている結菜ちゃんの組み合わせは最高としか言いようがなかった。
そしてそろそろ就寝かと思われた頃、母がとんでもないことを言い出した。
「ゆうなちゃんは裕翔と同じ部屋でいいわよね?」
「勿論です!」
潔のいい返事が部屋中に響き渡った。
妹はまたもや親指を立ててこっちを見ている。
あれは一体なんのサインだろうか。
そう思っていると、中指と人差し指の間に親指を入れだした。
あれは……
気にしないでおこう。
そして僕と結菜ちゃんは俺の部屋へと向かうのだった。
部屋へ入るや否や、結菜ちゃんが部屋の中でキョロキョロとしだした。
と、次の瞬間。勢いよく僕のベッドの下をあさりだした。
「チョッ、なにしてるの! 結菜ちゃんッ」
「いやあ、男子高校生のベッドの下には工口本が置かれていると言う迷信がありましてな、少し拝見させて頂こうと」
「そんなのあるわけないじゃんか! ばか」
え、なんか僕今めっちゃキモイ感じにならなかった。
大丈夫?
「そっかそっか~ごめんねえ、ゆうちゃん。よちよちよち」
頭を思い切りなでられまくられる。
なんか凄い馬鹿にされている気がするんだが。
「まあ、流石にあるわけがないよねえ」
と言いながら、更に奥に手を伸ばしていた。
あ、
結菜ちゃんの手には、【禁断のメイドちゃん達だZe】の第六巻が出てきた。
しかも袋とじの限定版の超エロティックなやつだ。
結菜ちゃんは更に笑みを浮かべていた。。
「えーゆうちゃん、メイドさんが大好きなのは知ってたけど、こんなのにも興味あったんだ~」
最悪だ。
恥ずかしいことこの上ない。
よし、いっそのこと開き直ろう。
「そうだよ、なにか文句ある?」
結菜ちゃんはキョトンとした顔でこう言った。
「いや、なんでもないけど……その、それワタシが着てあげよっか?」
と。
…………
これは・・・
「よろしくお願いします」
僕はクローゼットからメイド服を取り出した。
とりあえずえげつない程に可愛かった。
と言うより尊すぎて直視できなかったし、なんなら後ろに光輪が見えた気さえした。
「まじでかわゆす」
これが僕の最期の一言だった。
あまりの露出度に鼻血があふれ出しぶっ倒れてしまったのだ。
あー、ほんとに結菜ちゃん可愛い。
グッド…ラック
読んでくださりありがとうございました。
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